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座談会 「ツーバイフォー大型木造建築物の今後の可能性」

【出席者】(五十音順)
●小川 浩氏/鹿島建設(株) 建築設計本部 構造設計統括グループ マネージャー <構造建築士>
●小見 康夫氏/東京都市大学 工学部建築学科 准教授 <博士(工学)>
●山口 修由氏/独立行政法人 建築研究所 材料研究グループ 主任研究員 <博士(工学)>
●吉高 久人氏/吉高綜合設計コンサルタント 代表取締役 <一級建築士>

小川 浩氏 小見 康夫氏 山口 修由氏 吉高 久人氏
小川 浩氏 小見 康夫氏 山口 修由氏 吉高 久人氏

わが国で初めて木造のオープン工法による耐火建築物の建設が可能となってから5年。ツーバイフォー工法による木造耐火構造物は、認定書写しの発行ベースで1000棟を超える建築実績を得るに至りました。近年は大型建築物が各地で建設され、また、すでに諸外国では地球温暖化防止の観点などから木質系の大型建築や中高層化が進展しており、わが国においてもその技術を活かせるよう要素技術の開発、規制緩和が望まれています。そこで当協会では、去る7月31日(金)、東京・目白の自由学園「明日館講堂」において「第1回ツーバイフォー大型建築物事例研究セミナー」を開催。ツーバイフォー工法の大型建築物について経験豊富な実務家、学識経験者を招き、その現状と今後の設計上の留意点等について講演を行い、全国各地から会員会社の皆様が参集しました。ここでは、講演終了後に開催された4人の講演者による座談会の概要をご紹介します。


座談会風景
▲座談会風景。会場は遠藤新設計による自由学園 明日館講堂(重要文化財)


ツーバイフォー大型木造建築物のメリット

環境上のメリットについて

小見 進行役を仰せつかりましたので、標題のもとにいくつか論点を挙げ、それぞれの立場からご意見を伺っていきたいと思います。
始めは、ツーバイフォー大型木造建築物のメリットについて。メリットはいろいろありますが、それらをクライアントにきちんと理解してもらうことが重要と考えます。
まず環境上のメリットですが、環境負荷、省エネ等多くの面で木造は環境に優しく、このことは理解しやすいと思います。すでに大型の木造耐火建築物をいくつか設計されている吉高さんはどういうふうにクライアントを説得されたのでしょうか。

吉高 私は社会福祉法人関係の施設を多く手がけていますが、そういう施設にとって木造およびツーバイフォーのメリットを伝えるようにしています。
こうした施設の入居者は一般的に8割が寝たきり、残りの2割が車いす利用者なので部屋にいる時間が長く、隣室からの音が懸案ととなりますが、木造耐火の仕様でほぼ問題にはなりません。また、施設内での転倒事故については、コンクリート造の場合は転倒すると骨折することもありますが、ツーバイフォーであればそこまでいかず、床の柔軟性についてはたいへんメリットがあると思います。こうしたことは、施設を運営する方々は、説明するまでもなく理解されているようです。

小見 講演の中で「空気感」という言葉を使っていらしたのが印象的だったのですが、もう少し詳しく説明していただけますか。

吉高 空気の状況を説明するのは難しいのですが、要は空気に柔らかみがあるということで、これは体感していただくのが一番だと思います。
別府の高齢者総合ケアセンター「ナーシングホームはるかぜ」は中央がコンクリート造で左右が木造耐火なので、その差を実感できます。内部の仕上げ材はどちらも同じですが、真ん中の施設にいると、少し温度や湿度が高いと感じます。実際に、計測しても違いがあり、木造部分の温度は24〜25℃くらいで一定していますが、RC部分は朝晩の変化が激しいですね。

「サマーフィールドスイートホテル」 ナーシングホーム「はるかぜ」
▲アメリカ・シアトル市に建つ「サマーフィールドスイートホテル」。
RC造4層+枠組壁工法5層からなる大規模なもの
▲別府市に建つ特別養護老人ホーム「ナーシングホームはるかぜ」。
中央の4層はRC造、 左右は耐火構造の3層+ロフト、延床面積は2000u超

設計・意匠上のメリットについて

小見 いくつかの構造の中から木造を選択するにあたり、クライアントにはどのような説明をされるかお聞かせください。

小川 私はゼネコンにいるので、かつては設計の際に木造をお薦めする状況ではありませんでしたが、最近は木造を提案することも多く、施主の側にもその良さが浸透してきていると感じています。
ただし、我々の身体にはRC、鉄骨がしみこんでいますから、地方の支店などでは、木造にしたほうがよいと思うような案件でも鉄骨にしている例が見受けられます。また、残念ながら木造と聞いたとたんに抵抗感を示すことも多いのが現状です。しかし私は、設計コンペの際には積極的に木造を提案するようにしています。

小見 山口さんは、研究者の目から見た枠組壁工法大型建築物の特質について講演されました。そこで話されたようなことは必ずしも一般には浸透していないように思うのですが。

山口 今日は集成材など大断面の部材と製材の違いを述べたいと思います。
同じ木造にもいろいろあります。高度な技術を用いた集成材構造のほうが製材を使うツーバイフォーより高級だというイメージもあります。しかし、ツーバイフォーのような単純な材料の組み合わせが、エネルギー的に一番効率的・合理的であるということが、わかってきました。
この、現在ツーバイフォーが備えている優位性は、他の工法や構造ではなかなか得がたいのではないかと思います。それは、この工法の単純さに理由があるからでしょう。ですから、この単純で規格化され、世界中がみんなで使っている材料を、どのようにしてこれからの日本の建築の中で活かしていくのかが課題であり、みなさんの知恵の使いどころだと思います。ツーバイフォー工法はどんどん進化を遂げてきていますから、これからもさらに進化を続けるのではないかと期待しています。

小見 小川さんは、木造の意匠上のメリットを活かすうえで具体的にどういうデザインを心がけておられますか。

小川 木質空間として最適なものを追求するよう心がけています。具体的には大断面集成材などを使って、なるべく木の肌を見せることを考えています。
元々がゼネコンの発想ですから、100年建築というとやはりRCだということになるのですが、軽井沢のような寒冷地では木造が一番いいと思います。RCは結露対策が難しく、特に鉄骨の庇は結露してしまうとどうしようもないわけで、そういう意味で木造を薦めたいと思います。
また、鉄骨造を木で被覆した場合の木材の感触は、実断面の木材とは全然違います。見た目も、やはり実断面でつくった木質空間には重量感や存在感があり、いいですね。


施工上のメリットについて

小見 次に施工上のメリットですが、木造はRCや鉄骨造に比べて工期が短くて済むと思います。しかし、コストの面では、木造はもっと施工を合理化しないと太刀打ちできないのではないかと思っています。
たとえば講演でも紹介したオーストリアでは、工場でパネルを組んでプレハブ化するのが当たり前という状況でした。たぶん人件費が高いからだと思うのですが、日本でも、プレハブ化していくメリットはあるのでしょうか。

吉高 「明治清流苑」や「はるかぜ」では工場でパネルをつくりパーツごとに現場に運ぶことで工期の短縮化が実現しましたので、メリットはあると思います。
それより問題は、木造は天候に左右されるということです。木造に慣れていない施工会社は現場養生の重要性を認識しておらず、雨が降ってきても養生をしないので怒鳴ったこともありました。とにかく現場の養生に関しては意識改革が必要で、きちんと教える必要があると思います。

小川 コンクリートの場合はまず型枠を立て、そこに鉄筋を建て入れ、コンクリートを打つ、そしてまた型枠をバラしていきます。ところがツーバイフォーや木造の場合は型枠で終わりという感じで、作業だけでなくコストの面でも大きな差が出ます。
費用の面では、よく鉄骨と比較して木造は高いと言われますが、鉄骨は軸組の技術であって、面をつくる技術ではないので、単純に比較することはできません。工期についても、ツーバイフォーは軸組よりかなり短く、これもメリットだと思います。


メンテナンス上のメリットについて

小見 メンテナンスについては、山口さんが講演でも十分メリットがあると説明されていましたが、実際に海外と比較して、日本の状況をどう思われますか。

山口  海外で聞いておもしろかったのは、古い建物ほど価値があるということです。よくない建物は築年数が浅いうちに壊され、建て替えられてしまい、誰もが「いい家だ」とか「私も住みたい」と思うような家だけが残されていく。だから結局、建物を長く使うためにはいい建物をつくる必要がある。みんなが住みたいと思うような建物を建てることが、その建物を長く使うことにつながるわけです。
建物の評価が定まるのは築40年くらい経ってからで、その時点でよい評価を得た建物は、不動産の価値も高まると言われています。海外の人は合理的なので、建物の価値を、中古の売買価格で評価することに抵抗がありません。そのためメンテナンスもしっかりする。自分の家に年間50万円くらいのお金をかけると言っていました。我々の感覚だと多すぎると思うのですが、彼らからすると、その費用は不動産として建物の評価を守るための費用ですから高いとは思わないのです。
こういう感覚の差は、私も日本の中にいる間にはわかりませんでした。このような話を海外で聞いて10年くらいたちましたが、いま日本でもそういう方向に向けて少し動き出していると感じています。
現在、長期優良住宅のプロジェクトが動き出しましたが、これは10年前には想像もできないことでした。しかし、この流れは一過性のものではなく、ずっと続くと思われます。これから建物を長期に使用するようになり、所有者が変わる際などに、大壁構造のツーバイフォーのメリットが活かされると思います。
また、我々はこれまで建築=新築と考えてきましたが、この考え方はそろそろ変えたほうがいいかもしれません。メンテナンスも建築であり、そこまでを含めて建築であると考えたほうが自然ではないかと思うようになりました。

小見  日本には古い木造建築がたくさん残っているのですが、最近建築したものはあまりにも寿命が短すぎるようで、この点はメンテナンス以前の課題と言えますね。
それと、大型木造、いわゆるビル物を想定したとき、RCや鉄骨造に負けないくらい長持ちするということを一般の人に理解してもらうことが非常に重要だと思います。
そのためには、まずは木造住宅が長持ちしているという状況をつくらないと、木造でビルを建てるところまでいかないと思います。


ツーバイフォー大型木造建築物の今後の課題

防耐火上の縛りについて

小見  では次にツーバイフォー大型木造の今後の課題について。まず防耐火上の縛りをどう乗り越えるかということですが、現在は1時間耐火でいろいろ認定をとっていますが、認定仕様を拡充していく必要があるのではないのか、あるいは現状の認定仕様で足りない部分があるとすれば何か、というようなことについて、吉高さんはどう思われますか。

吉高 設計をしていますと、デザイン性の限界というのがあります。たとえば、木造の良さを表現するひとつの手段として、木部をあらわしにする手法があります。しかし、そういうことも結局、現行法では構造耐火の認定仕様に照らし合わせるとできない場合があります。
講演で山口さんからいろいろな組み合わせが可能であるというお話がありましたが、そのためにも、そういう部分にある程度柔軟性をもたせてほしいですね。そうなれば、もっとデザインの可能性が広がると思います。
それから、少し具体的な話ですが、床のスパンの飛ばし方は、ツーバイフォーの場合は5・6mくらいが限度で、これを8mくらいにするとなるとエンジニアウッドなどと組み合わせたいのですがそれができない。そういう縛りがあります。逆に、仕様基準の中にはあるが実際にやってみると必要ないと思われることも部分的にあります。これからは全体を見直しながら徐々にバージョンアップをする必要があるのではないでしょうか。


混構造、ハイブリット化について

小見 次は、ツーバイフォー大型木造からいろいろな工法を組み合わせる木質複合建築へ、ということについて。現在、木耐の施工事例は1000棟を超えていますが、その中で混構造やハイブリット構造は少ないと思います。小川さん、その難しさと、それをどうやって克服すればいいかということをお聞かせください。

小川 最近の法改正で構造設計の変更が非常にやりにくくなり、さらに混構造だとそれが足かせになって構造計算がしにくく、避ける傾向があります。RCならRC、鉄骨なら鉄骨、としたほうが誰も楽なわけで、設計もそのほうが明快です。それをあえて混合構造にするがためにハードルが高くなってしまうことが問題ではないでしょうか。
ハイブリットなやり方についても、もっと自由にしなければいけないところを逆に厳しくしてしまっている観があり、今後チャレンジしようとする人たちはたいへんではないかと思います。しかし、やりにくくてもやっていかなければいけないことだと思っています。


低炭素社会に向けて

小見 最後は低炭素社会に向けての課題です。7月に自民、公明両党が温室効果ガス削減の道筋を定めた「低炭素社会づくり推進基本法案」をまとめ、国会に提出しました。解散により廃案になりましたが、政権が変わってもこの基調は変わらないと思います。この案には2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を05年比60〜80%削減すると明記されています。
いま、京都議定書の90年比6%減の実現も危ぶまれているのに6〜8割削減というのはほとんどおとぎ話のようなものですが、それでもやらざるを得ない状況にあります。となると建築はかなりCO2を出す業界ですから、今後、木造を推進していくことは必然的な流れになっていくと思われます。
そこで、ツーバイフォー大型木造は中層建築における「プリウス」のような存在になれるか、ということなんですが、その前に現実はどうなっているのかというと、居住用以外の着工建築物の延床面積を1970年から現在までの着工統計で見ると、木造は全然のびていないどころか減っています。工法別に見ると、2007年では非居住用の建物の大部分は鉄骨造で、新築着工延床面積も鉄骨造が一番です。ある意味では、日本は鉄骨造の国と言っても過言ではないわけで、量的に木造の大型建築物を増やしていくには、RCではなく、鉄骨造を相手にするべきなんですね。また、木造を階数別に見るとほとんどが2階建てです。
これら木造の現状を踏まえて、皆さんどのように思われるかを最後にお聞かせください。

山口 日本で鉄骨造がこれほど普及したひとつの理由は鉄が比較的安かったことですが、関連する協会がマニュアルを含めていろいろな制度を整えてきたことが大きいと思います。
したがって、木造もそれを見習ってバックアップ体制等を整えていけば、同じように飛躍できるかもしれない。環境重視の世の中では、それも不可能ではないと思います。

小川 昨年、北京オリンピックがあり鉄が非常に高騰しました。それで鉄の使用量を減らすため、いま大手ゼネコン各社はみな、超高層のような建物をRC化する傾向にあります。柱はRC、梁は鉄骨、というビルが増えてくるのではないかと思います。その一方で我々も、体育館やドームなどの大空間の建設に積極的に木質構造を取り入れており、今後はさらに推進していこうと考えています。

吉高 講演でも述べたように、木造建築は地球環境への負荷を少なくするものです。これからお施主さんと接する際は、「鉄(かね)は使わず、木(気)を使いましょう」と言うことにしましょう(笑)。

小見 私は講演で、諸外国の大型木造建築物を紹介しました。欧米諸国では4層程度の木造建築はすでに一般化し、防火規制の緩和等により5〜7層程度の建物も可能となり、今ではさらに高層化が進みつつあります。また、混構造やハイブリット構造も多く用いられています。日本でも国や業界を挙げてこうしたことに積極的に取り組むことが、ひいては低炭素社会実現に寄与することになるので、今後に大いに期待したいと思います。

 

(社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」のVol.181 2009年9月号から転載の記事です。

 

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