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調査研究・技術開発
東日本大震災におけるツーバイフォー耐火構造4階建つくばモデル棟の強震観測記録


平成17(2005)年12月に建築研究所(茨城県つくば市立原1)内に建設されたツーバイフォー耐火構造4階建つくばモデル棟は, 竣工の5年4ヶ月後に,東日本大震災(平成23年東北地方太平洋沖地震)により発生した震度6弱の揺れに遭遇しました。 同建物では竣工後から強震観測を実施しており,今回の震災における同建物の応答(揺れ)を観測することに成功しました。 今回は,震度6弱の強震動を受けたツーバイフォー耐火構造4階建モデル棟が,どのように揺れたかについて報告します。

 

はじめに

平成11(1999)年度から平成15(2003)年度の5カ年にわたり,独立行政法人建築研究所(以下,建研)においては「木質複合建築構造技術の開発」に関する研究を実施し,併せて日本ツーバイフォー建築協会と共同研究を実施してきました。この研究の成果により,枠組壁工法による木造耐火構造の建築が可能になりました。その後の平成17年からは「枠組壁工法による木質複合建築構造技術に関する共同研究」を実施して,平成17年12月に枠組壁工法4階建ての「つくばモデル棟」を建研内に建設して,起震機実験や交通振動測定などの種々の研究を実施し,併せて強震観測を実施してきました。


1.つくばモデル棟

観測の対象となった「つくばモデル棟」(写真1)は,各階に1つの階段室と2つの居室を有する枠組壁工法耐火構造4階建ての実験用建物で,茨城県つくば市にある建研の多目的実験場内に建設されていました。その概要を表1に示します。


写真1 つくばモデル棟 表1 つくばモデル棟の概要

場所  :独立行政法人建築研究所

構造  :枠組壁工法(1〜2階:2 x 6,3〜4階:2 x 4))

階数  :4階建て(地階なし)

竣工 :H17(2005)年

建築面積:36.95m2

延べ床面積:184.78m2

軒高さ :12.639m

最高高さ:14.8m

観測期間 :2006(H18)〜

強震計:SMAC-MD 1F(布基礎上),5F(小屋裏)

基礎  :杭(鋼管杭165.2φ,11.5m)10本,鉄筋コンクリート造ベタ基礎(厚150)

耐火仕様:外壁(窯業系サイディング t=16, ALC t=37など)
       内壁(強化石こうボードt=15+21),天井・床(強化石こうボードt=15+21)

▲写真1 つくばモデル棟  

2.地震(東日本大震災)

平成23年3月11日14:26に発生した東北地方太平洋沖地震により,つくばモデル棟の近傍では,「震度:6弱 つくば市苅間、つくば市天王台」(気象庁発表)を記録しました。


3,観測最大加速度・変位・変位値


 表2につくばモデル棟で観測された強震記録の最大加速度値,および強震(加速度)記録から計算された速度・変位の最大値を示します。観測された加速度は、1F(基礎上)のEW方向で最大514p/s2、5F(小屋裏)のEW方向(短辺方向)で最大955p/s2でした。計算された速度は、1FのEW方向で最大37p/s、5FのEW方向(短辺方向)では最大82p/sでした。計算された変位は、1FのEW方向で最大7.9p、5FのEW方向(短辺方向)で最大10.5pでした。1Fと5F間の応答倍率は、水平方向の加速度で1.9〜2.2倍、速度で1.9〜2.4倍、変位で1.3〜1.7倍でした。なお,速度および変位の計算においては,4秒のフィルターを使用しました。

▼表2 最大化速度・速度・変位の一覧
表2 最大化速度・速度・変位の一覧


4,時刻歴波形

4.1 1F(布基礎上) 加速度波形

1F(布基礎上)で記録した, EW(短辺)方向の加速度波形を図1に示します。

▲図1  1F EW方向
▲図1  1F EW方向

4.2 5F(小屋裏)加速度波形

5F(小屋裏)で記録した, NS(長辺)方向の加速度波形を図2に示します。

▲図2  5F EW方向
▲図2  5F NS方向

4.3 相対変位(計算)

4.1節に示した1Fの加速度記録と,4.2節に示した5Fの加速度記録を用いて、5Fと1F間の相対変位を計算しました。得られた最大相対変位を表3に示します。これらを,強震計の設置された5Fの軒高さ(12.639m)と1F(0m)の距離を用いて傾斜角に変換して,表4に示します。

4.4 加速度―変位関係

4.2節に示した5Fの観測加速度記録(NS,EW)と,4.3節に示した5Fと1F間の相対変位(NS,EW)を用いて,図3と図4に加速度―変位曲線を示します。なお,同図ではノイズを除去するためのフィルター処理を実施しているために,最大加速度値は4.2節の値とは,異なっています。図3と図4によると,東日本大震災時の地震動に対するつくばモデル棟の応答は,弾性的な挙動でした。


5,振動数解析(FFT解析)


▲図5 伝達関数  NS方向,EW方向

4.1と4.2節に示した観測加速度記録(1F、5F)からフーリエスペクトラム(FFT)を計算し,さらにNSおよびEW方向の伝達関数計算し,図5に示しました。
同図によると、つくばモデル棟のNS方向の卓越振動数は2.15Hz、EW方向は2.26Hzでした。


6,これまでの観測結果との比較

これまでの観測結果との比較 東日本大震災時の地震時における卓越振動数を,これまでに実施した起震機実験時の卓越振動数(竣工時)および2007年6月2日の茨城県南部の地震時における卓越振動数と並べて表5に示します。表5によると,つくばモデル棟は東日本大震災時において,従前よりも低い卓越振動数を示していました。

竣工時(2005)の起震機実験時

2007.06.02

東日本大震災

桁行き方向  NS 3.5 Hz

3.05 Hz

2.15 Hz

張間方向   EW 3.3 Hz

3.19 Hz

2.26 Hz

上下方向     UD

 

14.25 H



7,写真

以下の目視記録,および写真2〜8に示すように,東日本大震災によるつくばモデル棟の損傷は,極めて軽微でした。(撮影,2011.5)


1階

展示物が倒れていた。せっこうボードの目地部パテ処理が少しだけ剥離していた。

2階

1階と同様にせっこうボード目地部パテ処理が部分的に剥離している。一か所せっこうボードに亀裂が確認された。

3階

下階と同様にせっこうボード目地部パテ処理が部分的に剥離している。

4階

せっこうボード目地部パテ処理の剥離がほとんどなかった。1か所せっこうボード開口角部に亀裂が見られた。

 

▲写真2 北面          ▲写真3 西面  

写真4 東面基礎

▲写真5 1階居室 内部

▲写真6 1階居室 目地部パテ (亀裂等は確認できなかった)

▲写真7 外壁(クラック等見受けられなかった)

▲写真8 2階居室 建具角(ボードの亀裂が確認できた)


8.観測結果のまとめ

東日本大震災において,つくばモデル棟は震度6弱の地域にあり,水平方向に350〜500cm/s2程度の加速度が入力し,700〜950cm/s2程度の応答を示しました。観測記録の分析の結果,つくばモデル棟は東日本大震災の前と比較して,卓越振動数が多少低下したものの,1/200から1/300程度の水平(相対)変位を生じただけで,東日本大震災の6弱の揺れに対して,弾性的な挙動に留まったことが確認されました。また,目視の観察においても,極めて軽微な損傷に留まりました。これらの結果から,ツーバィフォー工法4階建建物は,構造体としての安全性が確認され,また生活に必要となる機能にも,問題が生じないレベルの応答(ゆれ)であったことが確認されました。なお,つくばモデル棟には積載物がほとんど無かったこと,また地盤等が異なる場合には異なる入力や応答(ゆれ)となる場合があることに,留意する必要があります。

 

 

 


 

(2012年3月1日掲載)



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