


カナダ木造中層建築物海外研修団 団長
住友不動産(株)ハウジング第一事業本部商品企画部 部長
和泉沢 忠晴
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ツーバイフォー工法は平成16年に耐火構造としての大臣認定を取得し、防火地域や準防火地域での建設可能な規模が大幅に拡大されました。それとともに、延床面積が3000m2を超える大規模建築物や、4階建て住宅・共同住宅、3階建て以上の商業施設・病院・ホテル、高齢者向け施設、幼稚園等の建設が可能となり、平成18年5月には大分市に延床面積約4470m2の大規模特別養護老人ホームも竣工しました。
また、同年10月末の耐火構造認定書(写)の発行状況は、4階建て以上の建物16棟を含めて累積棟数が417棟となり、ツーバイフォー工法耐火建築物は防火地域の専用住宅や共同住宅、並びに準防火地域の共同住宅を中心に、着実に増加しています。
しかしながら、わが国においては、まだツーバイフォー工法による4階建て以上の中層建築物の実績は少なく、それについての知見を得る機会や技術知識をもつ人材も乏しい状況です。
そこで当協会では、30周年記念事業の一環として今回のカナダ木造中層建築物海外研修を企画。ツーバイフォー工法の先進国であるカナダの木造中層建築物の実情視察を行うとともに、それらの設計・施工に携わった方々と直接、意見交換の機会を創出することで中層建築物に関する知見を拡げていただくなど、ツーバイフォー工法による中層建築物のさらなる普及促進を図るべく今回の研修を実施しました。
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研修に参加したのは、住友不動産株式会社商品企画部長の和泉沢忠晴氏を団長に総勢14名(当協会並びにカナダ林産業審議会〈COFI〉から事務局として2名の参加を含む)。平成18年10月1日〜8日の8日間にわたりカナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州ビクトリア、バンクーバーおよびその周辺地域の中層建築物(集合住宅並びに社会福祉関連施設)等を訪問し、それぞれ設計や施工等に携わった方々からの説明を受け、質疑等を行いながら視察を行いました。
バンクーバーやビクトリアは、2010年の冬季オリンピックを控え活況を呈しており、不動産、建設・資材等の価格が高騰。また、地価高騰のため、コンドミニアムやタウンハウスが増加傾向にあるとのことでした。
スケジュール表のとおり、数多くの建物を視察しましたが、以下、主だったところを2つご紹介します。
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最初の訪問地となったビクトリアでは、Zeidler Partnership(ゼイドラー・パートナーシップ)が企画・設計した大規模複合開発「Bear Mountain Project」(ベア・マウンテン・プロジェクト 総開発面積485ha、総事業費12億ドル)を視察しました。ここには2008年、ジャック&スティーブ・ニクラウスが設計した36ホールのゴルフコースをはじめ、ジム、プール、スパ、ショップ、ホテル等の商業施設、そして戸建住宅、タウンハウス、会員制コンドミニアム、中高層マンション、別荘など合わせて6500戸が完成する予定です。ゼイドラー・パートナーシップの設計者や現場監理者を含む関係者からは、プロジェクトの概要や、設計・施工・検査・耐火に係わる法規関連等の説明を受け、詳細図等の設計図書を見ながら活発な意見交換がなされました。ポイントは以下のとおりです。
| (1) | 同州では、外壁からの雨漏れトラブルが多発したことから「Rain Screen Walls(外壁通気工法)+Overhang(軒・庇の出確保)」の採用が進められていること |
| (2) | 広大な敷地を有するのに駐車場はなるべく地下に設けていること |
| (3) | デザインガイドラインを定め全体の調和を図っていること |
| (4) | 建設コストはRC造より木造のほうが15%程度安いこと、等々 |
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| ▲「ベア・マウンテン・プロジェクト」内、店舗併用コンドミニアム | ▲「ベア・マウンテン・プロジェクト」の関係者との打ち合わせ風景 |

▲「クロスローズ・インレット・センター」周辺のコンドミニアム
バンクーバーおよびその周辺では、社会福祉関連施設を中心に研修を行い、バンクーバーのベッドタウンとして発展中のポートムーディー市に2003年に完成した福祉住宅「Crossroads Inlet Centre(クロスローズ・インレット・センター)とHospice(ホスピス)」を視察しました。International Most Livable Community賞等、多数の賞を受賞したこの総合開発は、4階建ての高齢者用支援住宅+ホスピスやDV等による保護女性用集合住宅、2階建ての低所得者家族用タウンホームの計96戸から成り立っています。
建物視察に先だって行われた市庁舎でのミーティングには、設計者以外に市長代理、市行政管理・広報官が参加してくださり、説明を受けた後に意見交換を行いました。また、市長代理のご尽力もあり、Inlet Centre Hospiceの終末期患者用病室階の内部まで見学できるという貴重な体験をしました。
行政管理・広報官の説明では、ポートムーディー市においては、都市計画で建設可能なエリアを制限し、できる限り人口を密集させて自然環境の破壊を抑えようと努力しており、駐車場も可能な限り地下に設けるとのことです。そのため市の中心街は、高層集合住宅を中層集合住宅群が取り囲む、独特の街並みが形成されていました。
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| ▲「ベア・マウンテン・プロジェクト」内、店舗併用コンドミニアム | ▲「セント・アンドリュース・ウォーク・プロジェクト」 |
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| ▲「インレット・センター・ホスピス」 | ▲「インレット・センター・ホスピス」視察風景 |

誌面の都合上、すべてをご紹介できないのが残念ですが、このほか解体・建て替え中の4階建ての高齢者福祉施設、病院介護施設、ホテル、コンドミニアム、3階建てタウンハウス、2階建て戸建住宅など、多岐にわたる建物を視察。これらの内容については昨年10月20日に開催された木造耐火建築物研究セミナーにおいても発表しました。
わが国においてツーバイフォー工法による耐火建築物が普及しつつある現状にかんがみても、今後、ツーバイフォー工法の中層建築物への期待はますます高まってくるものと考えられます。そうしたなか、今回の研修が今後の魅力あるツーバイフォー工法中層建築物の普及に役立つことを期待する次第です。
最後に、スケジュール面でかなりハードであったにもかかわらず、参加メンバーの皆様方の誠意とご理解・ご協力により無事研修を終わらせることができたことを、事務局を代表して御礼申し上げます。また、今回の有意義な海外研修を企画・実施できましたのは、ひとえにケビン・J・ビユーズ氏、ウエイン・アイヴァーセン氏をはじめとしたCOFIスタッフ、並びに通訳のファルボ・祥子氏、そして現地で対応してくださった多勢の方々等のご支援・ご協力の賜であったことを、感謝の意を込めて申し添えさせていただきます。
| 月 日 | スケジュール | 研修内容 |
| 10月1日 | 成田出発⇒バンクーバー経由⇒ビクトリア着 | |
| 10月2日 | ■Bear Mountain Project (ベア・マウンテン・プロジェクト) |
プロジェクトマネージャー、意匠・構造設計者、現場監督、役所検査官等による説明と意見交換及び完成建物現場視察 |
| 10月3日 | ■St. Andrews Walk Project (セント・アンドリュース・ウォーク・プロジェクト) <ビクトリア発⇒バンクーバー着> |
意匠・構造設計者等からの説明と意見交換及び建設途中現場視察 |
| 10月4日 | ■Port Moody市庁舎訪問 ■Crossroads Inlet Centre Hospice (クロスローズ・インレット・センター・ホスピス) |
市職員及び市長代理市議との対談 Inlet Hospice(インレット・ホスピス)設計者による説明と意見交換及び完成建物視察 |
| ■Klahanie Driveの4階建てコンドミニアム
Tides & Boardwalk Project (タイズ・アンド・ボードウォーク・プロジェクト) |
設計者、現場管理者による説明と建設途中現場視察 | |
| ■Maple Courtの戸建住宅およびタウンハウス
Parklane’s Heritage Woods (パークレーンズ・ヘリテイジ・ウッズ) |
設計者、現場管理者による説明と戸建完成現場及びタウンハウス建設途中現場視察 | |
| 10月5日 | ■Harrison Driveの高齢者福祉施設
Icelandic Care Home Hofn Society (アイスランディック・ケア・ホーム・ホーフン・ソサエティ) |
Haebler(ハーブラー)社の設計者、現場管理者による説明と建設途中現場視察 |
| ■Government St.の4階建て
コンドミニアムおよびタウンハウス |
Polygon Development(ポリゴン開発)の設計者、現場管理者による説明と建設途中現場視察 | |
| ■Glover RoadのSimpson(シンプソン)病院介護施設 | 設計者、現場管理者による説明と建設途中現場視察 | |
| ■Langley市のホテル
Super 8 Motel(スーパー・エイト・モーテル) Days Inn and Suites(デイズ・イン・アンド・スウィーツ) |
外観視察 | |
| 10月6日 | ■Kerr St.の57戸住居アパート
Salvation Army's Southview Heights (救世軍サウスビュー・ハイツ) |
設計者、現場管理者による説明と建設途中現場視察 |
| ■Coquitlam市 Alderson Avenueの2階建住居および
4階建て114戸賃貸住宅 Belvedere Care Facility Complex (ベルヴェデア介護施設) |
施設管理者による説明と完成建物視察 | |
| ■午後:バンクーバー自由行動 ■研修メンバー及び現地協力スタッフと夕食会 |
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| 10月7〜8日 | バンクーバー発⇒成田着 |
(社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」のVol.165 2007/1月号からの転載記事です。
(2007年1月1日掲載)