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第1回「坪井記念助成」成果発表

当協会の初代会長である坪井 東氏の遺志を継ぎ制定された「坪井賞」。ツーバイフォー工法のオープン化30周年を機に「坪井記念研究助成」として趣旨を改めて創設された新制度になります。第1回坪井記念研究助成「選考委員会」が平成16年4月23日に開催され、下記の研究課題が選考されました。そして、去る5月27日(金)に第一回の成果発表会が行われました。
ここでは、成果発表当日の要旨を紹介します。

 


壁下地材を緊結する接合部の耐久性能が枠組壁工法耐力壁の耐震性能に及ぼす影響


名波 直道
▲発表者:名波 直道
(静岡大学)

枠組壁工法建築物の構造安全性にとっては、耐力壁における壁下地材(構造用面材料)と枠組材との接合部の耐力が非常に重要である。建方中の雨水だけでなく、竣工後長期間使用される住宅においては、耐力壁に台風時等における事故的な雨水浸入や結露等が発生する可能性がある。耐力壁の面材接合部に対し、劣化外力としての水分が繰り返し作用した場合、建築物の耐震性能に影響を及ぼす可能性が考えられる。本研究では、枠組壁工法耐力壁に使用される主要な面材料と接合具の組み合わせに注目し、水分が作用する促進劣化条件下における耐力壁およびその面材接合部の耐力・変形特性を検討し、枠組壁工法建築物の耐久設計に資する資料を得ることを目的とした。

本研究では、(1)水分が作用した後に乾燥するという処理の繰り返しが、接合具に対する面材料の側面抵抗に及ぼす影響、(2)数種の屋内外環境条件下における夏期・冬期3カ月間の暴露が、耐力壁の耐力・変形性能に及ぼす影響について検討した。面材料は構造用合板JAS特類2級(ラーチ)9mm厚、防水石膏ボード(GB-S)12.5mm厚を用いた(普通石膏ボード一部使用)。接合具として合板にはCN50釘を、石膏ボードには木下地用ビスを使用した(GN40釘一部使用)。

側面抵抗試験の結果より、合板は水分が作用しても乾燥すれば十分な強度を保持することがわかった。石膏ボードにおいては少数回の水分作用であれば乾燥後は十分な強度を維持したが、多数回にわたる水分作用は強度の低下を招いた。耐力壁の水平せん断試験の結果より、合板およびGB-Sとも3カ月程度の短期間暴露においては季節によらず耐力の低下は見られず、十分な耐力を維持することがわかった。しかし、初期剛性には多少の低下が見られた。本研究をさらに推進することにより、枠組壁工法建築物の耐久性能をより詳細に評価することが可能となろう。

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枠組壁工法耐力壁構造の柱頭・柱脚引抜き力の設計に関する研究

宮本 俊輔
▲発表者:宮本 俊輔
(工学院大学)

枠組壁工法住宅の設計では明確な耐震性能を確保する事が重要であり、耐力壁の縦枠上下の接合部耐力を高めたせん断降伏先行型の設計法が考えられる。そのため本研究では、枠組壁工法の柱頭・柱脚接合部の応力性状を明確にし、接合部を簡易的な仕様規定化にする事が目的であり、壁構面のせん断降伏先行時での縦枠上下の接合部応力の簡易算定式を提案する。その中で直交壁の効果を剛性として評価することで、直交壁を考慮した接合部応力の簡易算定式を提案し、解析や実験によって提案式の妥当性を検討する。

直交壁の有無による耐震性能の影響や直交壁効果の理論的検証を確認するため、1層枠組壁工法建物の水平加力実験を行った。その結果、建物全体の剛性や耐力で1割以上の差が見られ、直交壁側の面材と釘及び、根太が脚部の引張応力を負担し浮上がりを抑え、加力方向の剛性を向上させることが確認できた。また、直交壁効果を考慮した縦枠上下端接合部応力算定式は、実験値および解析値の7〜8割程度を捉える事が可能であり、安全側に働くことから設計式として妥当である事が分かった。

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ツーバイフォー構法による京町家改修手法の研究―セルフビルドによる技術的可能性の考究を中心として―

山田 協太
▲発表者:山田 協太
(京都大学)

京都では京町家と呼ばれる木造家屋が多数現存し、その有効利用が重要な問題となっている。本研究では、そうした町家を居住者によるセルフビルド(自力建設)により改修する技術を考察する。ツーバイフォー材はホームセンター等で容易に入手可能でセルフビルドに適した材と考えられる。研究では、まず町家の居住実態を調査して現状を把握し、改修に対する要求を明らかにした。次に、2軒の町家を対象に改修要求に基づき設計を行い、セルフビルドによる施工を行った。

対象とする町家は、セルフビルドは施工精度に限界があることから、歴史的価値の高いものは除外し、大正期〜昭初期に数多く建設され現在最もよく見られる仕舞屋と呼ばれる型式の住居を中心とした。平面は基本的に片側に通り庭と呼ばれる土間が走り、土間に沿って2、3室が並ぶ構成である。

調査では、通常建物の維持、管理は所有者がしていたが、居住者による改修を認める場合も多く見られた。部屋の利用形態は居住者個々の要求に従い多様であった。改修の方針は以下を措定した。1.改修は個々の要求から出発し、構造体を傷付けない限りで自由に行なう。2.構造補強をし、3.以下の4項目から数項目を選択する。(1)壁、床の張り直し、(2)根裏利用、(3)収納・棚、(4)吹抜(大空間、採光)。4.町家の持つ意匠的な要素を重視する。

上記に従い1.吹抜+新たな床架構、2.屋根裏利用+収納のそれぞれをテーマとする改修を行なった。
改修により、一定の成果を得ることができた。ツーバイフォー材の利用により材の加工をホームセンターに依頼できた点、配送サービス等を利用できた点はセルフビルドに有利であった。 反面、町家の基本寸法が1間(1920mm)、1間半(2880mm)、2間(3840mm)であるのに対し、ツーバイフォー材の規格は6(1800mm)、8(2400mm)、12(3600mm)フィート等であり端材が多く発生した。また長尺材は入手が困難であることが判明した。
今後は6フィート、8フィートなどの短い材を連結して町家の寸法に適合させる手法の考察が必要と考えられる。

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枠組壁工法による米国近代住宅の意匠に関する研究

玉田 浩之
▲発表者:玉田 浩之
(京都工芸繊維大学)

本研究は20世紀前半期のアメリカの住宅におけるモダニズム建築の意匠と枠組壁工法との関係を考察したものである。モダニズム建築の意匠は20世紀前半期のアメリカの住宅において注目を集めた意匠のひとつである。一方、バルーン構法及びプラットフォーム構法は20世紀前半期のアメリカで普及した構法である。これらはアメリカの工業化を背景に普及したという点で共通している。本研究はこの共通点に着目する。ここではとくに工業化の重要な要素である合理化に注目している。

モダニズムの建築家の意匠的特質は彼らの共有していた合理主義の理念にもとづいている。モダニズムの建築家たちは良質で機能的な住宅を多くの人々に提供するべく設計や建築生産における合理化を追求していた。そうしたなか、彼らにとって合理的な構法を選択することは、重要な課題のひとつだったのである。すなわち、モダニズム建築家たちの合理的であることの希求は構法の選択と密接に関わっている。バルーン構法及びプラットフォーム構法に本来備わっている技術上の合理的特質に注目するとき、モダニズム建築の理念とこれらの構法の特質は合致していたことが明らかとなる。また、合理主義的思想の建築において、構法と意匠が無関係ではあり得なかったことを想起するならば、モダニズムの建築家たちがバルーン構法及びプラットフォーム構法においてシンプルな意匠を採用した理由は、それらの構法が持つ特質にあったのではないかと思われる。

20世紀初頭のアメリカの目覚しい工業化は、多くのモダニズムの建築家を魅了したことで知られる。バルーン構法及びプラットフォーム構法が、アメリカの工業化及び合理化の所産であったことを思い合わせるとき、モダニズムの住宅意匠とこれらの構法は無関係ではあり得なかったと考えられるのである。

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日本の住宅建築に見られる大壁造及び近代和洋折衷住宅における真壁造との融合に関する調査研究

兼弘 彰
▲発表者:兼弘 彰
(有限会社ユー・エス・シー
街・空間研究所)

ツーバイフォー工法をはじめとする現代の木造住宅では、構造耐力確保、断熱・気密性の確保、施工性の向上、意匠性の多様化等様々な需要から大壁造による建築工法が多く採用されている。本研究では、真壁と大壁つまり和風と洋風の融合がどのような経緯で推移してきたのか、わが国の住宅様式と社会背景を歴史的に分析することで、機能と装飾の両面において「真壁」と「大壁」の役割を解明した。

まず洋風建築が普及し始めた江戸末期から明治期とそれ以降に分け分析した。次に日本の伝統的建築と西洋建築、とりわけ近代和洋折衷住宅における和洋の関係性を歴史的経緯及び社会的背景を含めて確認した。さらに、特徴的な実例数件の調査を行い、詳細な実測による分析を加え、文化的側面と技術的側面の相互作用の検証を試みた。

日本にも古来より大壁造の歴史があり、城郭建築や土蔵建築が代表する。江戸末期の開国から始まった建築文化の西洋化の過程において世界一流の木造建築の技術と文化を有していた日本人は、その独自の技術と文化を失わず西洋建築との融合と協調的発展を果した。

まず伝統的技術を基本とした和風建築の表層あるいは一部分を大壁等洋風の仕上げで覆う擬洋風様式「和館の部分的洋風化」に始まり、明治20年頃から昭和初期には、生活の中心を和館に置きながら接客を主目的とした洋館を併設した「和館+洋館→和館の洋館化」が見られる。その後、全体は大壁の洋館で生活空間と接客空間は洋式にまとめる一方で、多様な機能を有する伝統的和室を取り込んだ和洋折衷様式「洋館の和風化」が見られる。この流れはその後の現代住宅空間へと続き、枠組壁工法等大壁を基本とした現代住宅に、構造から切り離された装飾的な真壁の和室が存在する逆転の現象までもが見られる。床座と椅子座空間の機能および和洋の内外観の組合せによって決定される和洋折衷住宅の性格は、大壁と真壁がそれぞれ持つ機能とその融合形態に顕著に現れてきたといえる。

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角材(2×4)架構の建築表現現代日本の木造小規模建築における架構と表層のズレに関する研究

御前 光司
▲発表者:御前 光司
(筑波大学)

架構とは「骨組みとなる部材を結合して組み立てた構造物」とされている。木造構法はその材質的特長から、架構材、仕上げ材の両方で使用でき、大工などの単一の専門技術者の手によって幅広い加工が可能なため、架構と仕上げの水準において様々な表現が豊かに見られる。日本の伝統的な木造建築においては、この架構を表わす真壁、隠す大壁が、ツーバイフォー構法など新たな木造建築表現においても、連続的に並ぶ架構の表現がみられる。

このように木造建築には、架構とそれを覆う仕上げ材といった架構/表層の空間構成があると考えられ、本研究ではこれらの水準のズレがみられる建築の空間表現に着目し、現代木造建築作品を対象に、架構形状とその外壁面、内壁面の仕上げの構成を分析することで、木造の架構表現の類型を見出し、それらの比較を通して水準内のズレによる構成的修辞を明らかにすることを目的とする。

1950年から2004年までの現代木造建築のうち建築面積が250m2以下の建築作品を分析対象とする。架構と表層の定義(軸組の線材である角材を〈架構〉、仕上げ材である面材を〈表層〉とする)を行い、架構の形状と架構材の構成を分類し、外部への表出と内部への表出を分析する。架構の外部と内部の両水準の重なりのまとまりから特徴を見出す。

内部と外部における架構の表出から分析資料は大きく10に分類された。その中で類似するものをまとめ、6つの構成的修辞〈「檻状の表現」「架構をみせ屋根を葺く表現」「部分的表出」「柱・壁の強弱」「表層への吸収」「抽象」〉を導いた。

内、ツーバイフォー材を用いた資料は4つの類型に分布し、比較的広範囲の建築表現に見られた。また、長方形断面をした架構材の建築の分布をみると「柱・壁の強弱」「表層への吸収」に集中してみられ、この領域にもツーバイフォー材の架構と表層の表現の可能性を示した。

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講評


今回の発表は、この制度の水準を高く設定してくれました。

今回がはじめての試みであり、はたしてどのような成果を見せていただけるものやら、予想もできず期待と不安がありました。1年間という、この類の研究レポートをまとめるにしては非常に短い期間で、また、限られた研究費のなかでどれだけできるのか、実はいささかの心配もありました。

しかし、実際に提出されたレポートはいずれも内容の濃い、充実した研究成果ばかりで、期待以上のものでした。発表者におかれましては、分かりやすく伝えようとする気遣いと工夫が随所に見られて、ありがたいことだ思います。

この1回目の発表で、この制度の水準を高いところに設定してくれました。2回目はさらに期待をしたいと思います。

また、17年度は連続受賞が1件ありますが、制度として連続または隔年の研究助成という考え方があっても良いと思いました。

今回の研究発表は、異種分野の研究発表が一堂に会するという、私としては興味深い試みです。同分野の専門家の交流の場は多々ありますが、様々な分野の専門家が交わり「ものを考える」という点でお互いに刺激を受け合えるという意味で、このような機会は貴重な場だと思います。

坪井記念研究助成 選考委員 松村 秀一氏


 

第1回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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