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協会活動報告

第2回成果発表

2006年5月30日(火)、第30回通常総会に先立ち第2回坪井記念研究助成事業の成果発表会が開かれました。
枠組壁工法に関連する研究と若手研究者等の育成に寄与することを目的に、平成16年度に創設された「坪井記念研究助成」。今回は、昨年助成対象者に選ばれた5グループが1年にわたる研究の成果を発表しました。
ここにその要旨をご紹介します。


耐火加熱炉の熱収支の解明と木質系耐火構造試験における火災減衰期の再現法の提案


代理発表:稲葉さとみ
▲発表者:上川大輔
(早稲田大学)
(代理発表:稲葉さとみ

研究背景・目的
2000年の建築基準法の性能規定化により、「火災終了後も消防活動に依らず自立し続ける建築物」という耐火建築物の定義を満足すれば、木造での耐火建築物の実現が可能となった。可燃性材料の耐火構造試験では、この定義を満足することを確認するため、火災盛期を再現する加熱のあと、火災減衰期を再現する放置を行っている。

本研究班では、2003年から、唐松集成材を用いたカーテンウォール(外壁・非耐力壁)耐火構造仕様の開発研究を行ってきた。この結果、実火災で生じがたい現象が耐火炉内で見られたり、使用する耐火炉によって試験結果が異なる等、炉の仕様や放置中の条件が試験結果に大きな影響を及ぼす事が分かった。また、外壁の耐火加熱試験については、屋内側・屋外側両面加熱に対する耐火性能が要求され、各々に対する火災後の加熱環境は大きく異なると考えられるが、現状の試験方法では、両者は全く同じ加熱・放置が行われている。

本研究では、想定される火災環境の再現可能性という視点から、木質系耐火加熱試験での放置方法の提案と検討を行った。

実験内容
外壁外部側について、火災減衰期を再現する最も単純な方法として、炉外放置を提案した。この時の熱収支を実験により把握し、実火災減衰期との比較によりその妥当性を検証した。外壁内部側について、給気量等の条件を変えた場合の炉内熱収支特性を実験により把握した。さらに、構築した熱収支モデルを用い、諸条件が放置中炉内熱収支に与える影響について検証した。

総括
炉外放置の妥当性を確認し、試験体による熱収支特性の違いを把握した。諸条件の違いによる耐火炉内の熱収支特性を把握した。また、熱収支モデルを用い、区画火災において、換気回数や開口率等が火災終了後及び放置中熱収支に与える影響を確認した。

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[59.6MB]

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枠組壁工法の天井懐に着目した上下階間遮音性能に関する研究

廣田 誠一
▲発表者:廣田 誠一
(北海道立北方建築総合研究所)

木造床の遮音性能向上方法は主に、床の高剛性化、面密度の増加、独立天井化、天井懐への吸音材の挿入などがある。高剛性化や面密度の増加は、施工の手間や必要資材が増え、コスト増に直結するため一般技術としてはまだ普及しているとは言えない。これに対し独立天井化や吸音材の挿入は、安価であり普及率は高い。ただ、吸音材の挿入方法と遮音性能の関係、床仕上げ材と天井構成、吸音材の関係は明確な設計資料がなく施工されている現状がある。このため、吸音材の適切な使用方法を明らかにし、床構成と遮音性能との関係を整理して実用的な設計資料を作成することを目的に研究を実施した。

この結果、吸音材の厚さについては、根太間に全充填した時が最も低減量は大きいことがわかった。しかし、低減量の増加量は吸音材の厚さが150mm程度までは多いが、それ以上では少なくなる傾向があり、実用的には100mm程度が判断の分岐点と思われる。吸音材の密度については、16Kと32Kを比較すると32Kのほうが若干低減量は大きかった。
吸音材の位置については、厚さ100mmの吸音材を天井懐の上、中、下部分に設置した場合の遮音性能を測定した結果、位置による違いはなかった。
床仕上げ材の種類と天井構成の違いによる低減量は、木質防音フローリングなどを使用した場合の、天井懐の吸音材の有無、天井構成の違いによる測定を行い、天井構成の違いによらず低減量は同じ傾向を示すこと、RCスラブの場合の低減量と500Hz以下の周波数帯域でほぼ一致すること、それより上の周波数帯域では差が生じ低減量が一定の値に近づくことなどがわかった。

以上の結果より、これまで不確定な部分を明らかにし、一般的な床構成に対する軽量床衝撃音レベルの低減を効果的に行うための設計資料を示した。

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[2.44MB]

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ツーバイフォー住宅の地域性に関する研究―北米とアジアを中心に

安 国鎮
▲発表者:安 国鎮
(東京大学大学院)

ツーバイフォー住宅は規格化された資材と画一化された技術を用い、地域的な特徴のない同一な構法で建てられているといわれている。「地域」という最初の単位は敷地である。敷地は「村・町」→「区・市」→「都道府県」→「国家」という行政単位の中に存在している。画一化されたツーバイフォー住宅の構法は、敷地上に建てられて敷地が属している地域に定着しながらも一方で地域性によって変化している。
本研究は、地域性の決定要素(1)行政規制(法規と制度)、(2)生産条件(モノ供給、地域建築技術、人材育成教育)、(3)風土条件(気候条件、住居習慣)によって変化するツーバイフォー住宅の建築構法を地域別に整理するのが目的である。

(1)行政規制について
アメリカを除いたすべての国は、政府が規制を定めている。アメリカは3つの地域に分けて地域的条件によって規制を適用したが、2003年にIBCコードに統合した。ツーバイフォー工法は日本をはじめ、韓国、中国に普及した。近年、COFIは台湾へもツーバイフォー住宅市場を拡大した。各国は北米のコードを基本として新しくツーバイフォー住宅の建築基準法を制定した。この法規は建築技術と資材性能の側面から基準を定めた。アジアで日本は1974年、韓国では1990年頃、中国は2002年頃からツーバイフォー住宅が普及した。ツーバイフォー住宅は枠組壁工法(日本)、軽量木造(韓国)、軽型木結構(中国)などのさまざまな名称で呼ばれている。

(2)生産条件について
アジア各国の住宅産業に新しく登場したツーバイフォー住宅は、新しいツーバイフォー資材を供給する専門資材供給業者とホームセンターという新流通システムを構築させた。このようなツーバイフォー住宅システムの位置付けは、資材流通産業構造と既存の在来軸組構法の建築技術へも影響を及ぼしている。ツーバイフォー住宅の技術普及のために北米のAP&PAとCOFIは、人材育成教育を行ってきた。最初、北米の機関が行った人材育成教育は徐々に各国の協会や企業が代わって行うようになる。ある程度、技術者が確保されると、ツーバイフォー住宅の技術者育成の専門教育機関はなくなる。

(3)風土条件からの特徴的な構法
ツーバイフォー住宅の構法に各国・地域別の気候・居住習慣を適用させた場合は、ツーバイフォー住宅を採用した時点からの期間に比例する。北米ではさまざまな人種と気候条件によって非常に多くの構法が各地域で存在している。しかし、アジアでは日本と韓国のみ地域性が存在しているが、4〜5年前からツーバイフォー住宅を新しく採用した中国ではまだ地域性が存在しない。
ツーバイフォー住宅の地域性というのは普及の歴史と比例している。ツーバイフォー住宅は、北米からアジアへ輸入され日本の畳文化、韓国のオンドル文化、中国の土足文化と融合している。

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[7.53MB]

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歴史都市における木造規格化住宅の展望とツーバイフォー住宅の可能性に関する日本・フィンランド比較研究

澤田 和華子
▲発表者:澤田 和華子
(慶應義塾大学)

鎌倉市には大正期、昭和期に建てられた良質な木造住宅が分布し、路地空間や庭先の緑と共に風情のある街並みをつくっている。これらの建築物は住民の高い意識や建築法規に対する現実的な対策の結果として奇跡的に残されているが、敷地の細分化と庭空間を駐車場やマンションにすることで街並みは急速に崩れている。一方で、鎌倉は中世の都市構造を基盤としているが、歴史的な土地利用が幾重にも重なり、複雑に絡み合っている。そのため、都市の歴史性を住空間の中で認識することは難しく、密集した住宅群がさらに都市の骨格をわかりにくくしている。本研究では、歴史的に重層する土地利用と近代住宅資産の実態について文献、フィールド調査を行い、現代の地域計画にも活用される共通の空間情報基盤にまとめた。また、同じく中世に土地基盤をもつフィンランドのポルヴォー市との比較研究を通して、鎌倉の市街地における土地の履歴と在来構法住宅との関係性について考察を試みた。

両者で共通して見られたのは、公道から奥に分け入る敷地の構成である。ポルヴォー市の場合は、旧来の敷地規模を維持しながら、住宅用途に転用しても「付属建築物」としての旧来の様式を保全している。特に色彩や屋根形状で視覚的に主要建築物との違いを認識できる。雪ノ下地区の場合、門前地区以外は中世の有機的な敷地割りを残しており、中世的な空間を市街地に温存している。細分化が個々の敷地の枠内で行われているために動線の上で旧来の敷地割りが継承されているが、共有スペースが少なく植栽と建造物の密度が高い。また、奥に行くほど新しい建造物が多い。明治期の敷地規模をひとつのまとまりと捉え、主要建築物と付属建築物に分類して個々に計画をたてることがこの地域の空間特性を活かす上で有効に働く可能性がある。

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[150MB]

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「枠組壁工法による米国近代住宅の意匠に関する研究」「ニューヨーク・ファイブ」の住宅作品の分析

玉田 浩之
▲発表者:玉田 浩之
(京都工芸繊維大学)

本研究はアメリカ建築の一潮流を形成した「ニューヨーク・ファイブ」の作品に注目し、ツーバイフォー工法との関連からアメリカの住宅意匠を考察するものである。「ニューヨーク・ファイブ」とは1960年代から70年代にかけてニューヨークを拠点に活躍した建築家たち、P.アイゼンマン、M.グレイブス、C.グワスミィ&R.シーゲル、J.ヘイダック、R.マイヤーらのことである。ここではニューヨーク近代美術館の「ファイヴ・アーキテクツ」展で展示された彼らの実作品を対象として、空間を構成する材料と構法の分析を行った。

彼らの作品には、自由な平面、ファサード、ピロティなど、形態におけるル・コルビュジェへの傾倒が認められるものの、多くはル・コルビュジェ流の材料や構法を採用することなしにつくられている。大きな開口部をとるためにH型鋼や鋼管柱が採用されるなどの特異点はあるが、基本はプラットフォーム構法である。また仕上げの下地材や構造材では、木材が多用されており、一見白いコンクリート造にみえる作品も、実のところ杉板に白色塗装を施したり、スタッコを吹き付けたりしたものに過ぎない。今回の分析結果からみるならば、意匠においてはル・コルビュジェの参照が認められるが、構成材と構法についてはル・コルビュジェ作品に対する追随よりも、扱いやすい在来のプラットフォーム構法が選択されていたことがわかる。

アヴァンギャルドの建築家たちが、鉄骨やコンクリートのラーメン構法に固執せずに、プラットフォーム構法を採用した事実は、この構法によるデザインの可能性をうかがい知るうえで注目される。プラットフォーム構法は戦後アメリカ住宅の意匠を支える構法として欠かすことのできないものであったといえるが、住宅意匠に直接的な関わりを持つ構法上の実験的な試みについては、今後さらに検証していく必要がある。

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[1.29MB]

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講評

松村 秀一氏
▲坪井記念研究助成
選考委員 松村 秀一氏
東京大学大学院
工学系研究科建築学専攻
助教授

ツーバイフォーを核とする多方面からの研究は貴重であり、必ずや将来の糧になると確信
そもそも「坪井記念研究助成」は、ツーバイフォーに関わるいろいろな分野の研究を対象とするものです。建築や住宅の分野で、ツーバイフォーを専門に研究する人は稀で、そうした研究自体少ないなか、これは新たな研究分野を切り拓く事業として評価できるものだと思います。多様な分野の若者が一堂に会し、ツーバイフォーという共通のよりどころから成果を発表する場は他になく、その意味でも貴重な機会であるといえます。

今回は、5グループがハード・ソフトの両面から独自のテーマを定め、研究を行いました。提出されたレポートの内容は、いずれも充実したものでした。研究の成果を出すには、1年という期間は決して十分なものとはいえませんが、それぞれが一定の成果を得られたことは喜ばしいかぎりです。発表者の方々には、これをツーバイフォー工法を改めて考える機会とし、さらに研究を進め、その成果を広く外部にも発信していっていただきたいと思います。

研究成果発表も2回目を迎え、軌道に乗りつつあります。こうした事業を5年10年と積み重ねていくことが、日本におけるツーバイフォー工法のさらなる発展に結びつくのではないかと期待しています。

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第2回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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