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協会活動報告

第3回成果発表

枠組壁工法に関する研究と若手研究者の育成に寄与することを目的に、当協会により創設された坪井記念研究助成事業。
本年も第31回通常総会に先立ち、昨年、助成対象に選ばれた6グループによる1年間の研究の成果が発表されました。
ここに、その要旨をご紹介します。


枠組壁工法を用いた構造の大空間の可能性・多様性



▲発表者:
中村 由美子
<Techno-design>
城戸崎 和佐
<城戸崎和佐建築設計事務所>

本研究は、意匠事務所と構造事務所との共同研究という体制で、住宅用の工法として据えられがちな枠組壁工法を活用し、大空間への可能性を追求する事で、集会施設、商業施設、事務所、幼稚園や学校などの新たなビルディングタイプへの展開を提案する事を目的としている。汎用性のある構造システムを提案する事で、特別な構造的検討をせずに、スパンや面積に対応した屋根架構、壁の配置を採用すれば、大空間が可能となる事を目標としている。屋根も特別な金物を極力使用しない方法を検討し、枠組壁工法と同じ様に、上枠(上弦材)、下枠(下弦材)、たて枠(束)などで構成し、合板を釘で留めることで一体化する方法とする。接合部の検討としては、ガセット方式とCマークの金物のように汎用性があるものを提案する。

現在、施行されている法規で規制される、ツーバイフォーにおけるスパンの限界は、
(1)耐力壁で囲まれた面積60m2(※)超 (2)耐力壁線間距離12m超 (3)開口部4m超とされている。よって、本研究では、耐力壁で囲まれた面積60m2を超える場合、耐力壁線間距離12mを超える場合を、大スパンと設定する。

意匠設計のアプローチとして、面積60m2以上、スパン12m以上のそれぞれについて平面計画を考えた。木質系材料の910モデュールに配慮して、(1)8.19m×8.19m(60m2以上)(2)8.19m×16.38m(12m以上)(3)16.38m×16.38m(60m2以上かつ12m以上)の3タイプの平面形において、非居住系の用途の計画を行い、さらに(1)〜(3)の組合せでできる空間について検討した。

大スパン木造が、特殊な金物を使用せず、ツーバイフォー材で可能になれば、かなりニーズの高い工法となる。大スパン用の壁量計算の式を制定し、合板ガセットトラスのようにスパンに応じた架構を選択し、梁せいや接合部を設定する事で、汎用性を持たす事が可能である。
※枠組壁工法技術基準告示(平13国交告等1540号)の平成19年の改正で72m2まで拡大された。

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スギ材を用いた枠組壁工法建築物の生産システムの実現の可能性

発表者:相馬智明
▲発表者:相馬 智明
<東京大学大学院>

近年、日本の森林では伐期を迎えたスギが増加しており、その利用が推進されている。1974年に枠組壁工法がオープン化してから枠組壁工法建築は着実に着工戸数を伸ばしており、現在では年間10万戸を超える大きな市場である。このような枠組壁工法建築においてスギを利用できれば、大きな需要拡大となる。そこでスギを枠組壁工法用材として利用することを想定し、スギ204材を用いた枠組壁工法建築の生産システムを考える場合に、材料生産や商流においてどのような問題点があるのかをヒアリング調査によって抽出した。

材料供給者に対して、最近の市場動向およびスギ204材の生産・流通の可能性について調査したところ、各社の可能生産量についての具体的な数値、製品の安定的な受注が必要であること、既にラミナ生産を行っている工場ではスギ204材の生産は即時対応可能であること等のデータや意見が得られた。また流通・需要者からは、スギ材が価格競争力を持ち始めたこと、製品の安定供給が必要であること、新商品開発としてスギを用いた枠組壁工法住宅の生産を考えている等の意見が得られた。各社の意見は総じて、品質、安定供給、価格の3点がスギ204材の生産・流通させる上での要件であるということであった。

調査において、スギ204材の性能について疑問があるという意見が幾つかあった。そこでスギ204材を主要構造部材、ここでは、たて枠として使用した場合の面内せん断試験を行って壁倍率を算出した。試験の結果、SPF材だけを使用した面材壁と比較して、スギをスタッドに用いた面材壁は同等もしくは大きい値を示した。調査と実験から、スギ204材をたて枠に限って使用する場合には、現状の生産者によって可能であること、構造安全性は確保されることが明らかとなり、スギ材を用いた枠組壁工法建築物の生産は実現可能であるといえる。

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敷地特性に則したツーバイフォー住宅の形態デザインに関する考察

発表者:野口修
▲発表者:野口 修
<DAT/(株)都市環境研究室>

ツーバイフォー工法は、耐火建築が可能となり、どこでも建設できる“汎用性”を獲得した。しかし一方で、現代日本社会の人口減少は、将来に渡る“減築”を予測させ、住宅には、新しい価値の創出が求められる。

こうした社会状況のなか、本研究では、ツーバイフォー住宅が取り組む方向性として、「敷地特性に則したツーバイフォー住宅の形態デザイン考察」を提示、考察した。“形態デザイン”を問題としたのは、本来、敷地固有の特性や居住者固有の生活スタイルを最も顕著に反映すべき設計要素でありながら、現状は、住宅地における景観の均質化など、生産性を優先したツーバイフォー住宅の仕様や間取りの規格化が引き起こす問題を集約していることによる。

本研究は、3段階の方法に沿った検証・考察を行った。
第一段階では、「ツーバイシェルの家」と名付けた建物の設計・監理を通し、規格外の形態に取り組む際の問題点や工夫点を探った。そして、この結果、施工体制と人的技量の問題があると考えた。ここでの施工体制とは、ツーバイ材を用いたパーツ製作の少量多品種化を、人的技量とは、ツーバイフォー、在来工法の双方に高い技量を持つ職人の育成を示唆している。

第二段階では、ツーバイ材利用や他工法との組み合わせ例にも間口を拡げて現況調査を行い、純粋なツーバイフォー工法で形態にトライアルすると言うより、ツーバイ材を用いた新しい構造スタイルの提案事例を多く見出した。

第三段階では、これまでの過程を踏まえ、ツーバイフォー住宅の形態デザインについて、幾つかのパターンを提示した。
本研究を通して、技術の境界が曖昧になってきていること、独創的なツーバイ材利用を提案し、これに係る法的手続きや、施工監理までクリアできる設計事務所が、増えつつあることを強く認識した。そして、こうした変化に対して、柔軟に対応できる施工体制や職人の育成が進めば、この流れはより鮮明に現れてくるとも考えた。

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ツーバイフォー住宅構法の地域性に関する研究−環太平洋地帯を中心に−

発表者:安 国鎮
▲発表者:安 国鎮
<東京大学大学院>

住宅は気候・風土などの外力に対する抵抗力を持っている。同一な構法だと認識されているツーバイフォー住宅は、気候条件が異なる各地域で、地震・強風などの外力に抵抗するため、構法が変化したと考えられる。

本研究は住宅性能別に構法を比較・分析して、構法の相違点を明らかにすることを目的とした。 研究対象は年間1,000棟以上の枠組壁工法住宅を新築している環太平洋に位置する6カ国(カナダ、アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)とする。比較対象の都市として6カ国の中に9つの都市(モントリオール、オーランド、ソウル、東京、札幌、那覇、パース、メルボルン、オークランド)を選定して現地調査を行った。

この結果、耐震性を一つの例として、基礎は布基礎(札幌、東京)、べた基礎(那覇)、床スラブ基礎(Auckland、Orlando)であり、他の地域は、杭基礎(Perth)、地階面基礎(Montreal、Seoul)を採用している。基礎は主に鉄筋コンクリート構造であるが、地震がない地域では無筋コンクリート(Orlando)、コンクリートブロック(Perth)構造もある。

耐力壁は主に構造用合板であるが、L型ブレースアルミニウム(Auckland、Melbourne)も使っている。構造用合板の厚さは9mm、12mmを使っている。一方、地震国であるAucklandでは外壁をツーバイフォー枠組と煉瓦で組み立てる。

接合部の緊結においては、全ての地域でアンカーボルトを使っているが、帯金物は日本とOrlandoで採用している。

この結果、耐震性は基礎が鉄筋コンクリート構造であることが分かった。また、接合部の緊結は日本とOrlandoで帯金物を使っている。Orlandoで帯金物を使っているのは地震ではなく、ハリケーンに対応して採用したことである。

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枠組壁工法の天井懐に着目した上下階間遮音性能に関する研究

発表者:廣田 誠一
▲発表者:廣田 誠一
<北海道立北方建築総合研究所>

木造床の重量床衝撃音レベルの低減は「床の高剛性化」、「面密度の増加」、「独立天井化による振動絶縁」などが効果的であるが、高剛性化や面密度を増加させることは施工の手間および必要資材が増える。このため、結果的にコスト増につながり一般技術として普及しにくい要因になっていると思われる。

本研究では、これらの低減方法を含めて、枠組壁工法の床衝撃音レベルを低減する実用的な工法の提案を目的に、平成17年度の本研究にて天井懐内への吸音材の挿入や、床表面仕上げ材の違いと吸音材の関係などについて実験を行い、特に軽量床衝撃音レベルの低減方法について整理しまとめた。本年度は、主に重量床衝撃音レベルの低減について、いくつかの方法に対する効果を実測により把握し、効果的かつ実用的な対策を整理しまとめた。

重量床衝撃音レベル低減要素として検討した項目は、床根太の剛性向上や床組みの接着、重量物を付加し面密度を増加するなどの「床構造の高インピーダンス(※)化」、数種類の市販の防振吊木を比較した「防振吊木などによる振動減衰効果」、天井面からの下室への音の放射を小さくするため、音響放射係数の違い、天井材のインピーダンス向上、シート化といった「天井面材の選択」、天井懐内の空気バネによる振動伝達を小さくするための「床開放工法の検討」などについてそれぞれ測定を行い、対策と効果の関係を設計資料としてまとめた。

この結果、床面の面密度を向上させ、高インピーダンスな天井を防振吊木もしくは天井根太で吊る方法が、現場における実用的な方法といえる。
※床の加振などの衝撃力と振動速度の比。大きくなると振動しにくくなる。

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日本の中層集合住宅における木造多層建築の適合性についての研究

発表者:加々美 ツォフィット
▲発表者:加々美 ツォフィット
<東京大学大学院>

木造多層建築とは木材で建設された建物で、4層以上のものをいう。 木造多層住宅の重要性は、(1)4層以上の建物を建設する際の新たな選択肢となり得ること。(2)木材の使用の増加が期待できることにある。木材の持つ特性は、安定性、耐火性、遮音性、防湿性、構法などの点に特別な配慮を要求する。

いくつかのヨーロッパの国は、木造多層建築を発展させていく背景および歴史において日本と類似点を持っている。(1)森林資源保有国である。(2)木造建築の強い伝統が存在し、高い建設技術を保有している。(3)戸建住宅の大半が木造である一方、4・5階建ての木造建築の建設事例はわずかである。(4)過去に多くの被害を伴う火災の歴史を持っている。

ヨーロッパにおける木造多層建築は、北米の軽量枠組壁工法をそのまま適用する事から始まったが、消費者の要求や建設産業の構造の相違から、新しい構法を発展させるべく研究が行われた。現在では、重量壁工法、混合構法などの構法が開発され、試験的な計画が次々と実現されている。

日本の建設敷地の環境は、敷地が小さく、隣棟間隔が狭いという点で、他国とは違う配慮が要求される。これまで国内で建設された木造多層集合住宅の事例は多いものではないが、その特性に共通点を観ることができる。(1)比較的小規模な建設会社により施工されている。(2)小さい間取りの賃貸住宅である。(3)低所得層をターゲットにしている。(4)小さく、軟弱な地耐力の敷地にある。

軽量木造枠組壁工法がもつ技術的、経済的な利点によって、日本における木造多層建築は、ある限定された条件の計画に導かれているようである。ヨーロッパの経験から学べることは、木造多層建築の市場を拡大し、持ち家世帯やファミリー層など、様々な人にアピールするには、構法の更なる発展が必要ではないか。それにより 木造多層建築は日本の中層住宅分野における本当の意味での新しい選択肢となり得るだろう。

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講評


松村 秀一氏
▲坪井記念研究助成
選考委員 松村 秀一氏
東京大学大学院
工学系研究科建築学専攻 教授

新しいフィールド、新たな発想の萌芽を感じ本研究助成事業の意義を再確認
大学の工学系を履修する学生のなかで、建築学科は過去20〜30年にわたり、安定した人気を得ています。そのため、よい人材も集まってきますが、そうした有望な人材のやる気や能力を活かすには、業界がその受け皿として広く受け入れる体制を整えていただかなければなりません。そういう意味で、この研究助成事業は意義深いことだと思います。

今回の研究発表者をみてもわかるように、いろいろなタイプ・分野の人たちが熱心に建築の研究に取り組んでいます。特に今回は、これまでにない、新しい発想の芽のようなものを各人の発表内容から感じ取ることができ、たいへんうれしく思っています。1年という歳月は、研究には短い期間ですから、さらに研究を進めていただきたいし、その成果を他の場所で公表することも考えてほしいと思います。また、新たなテーマを見つけてこの研究助成に再チャレンジするのもよいでしょう。いずれにしても、こうした機会を通じて、将来を担う若者たちのネットワークができていくことになれば、それも大いに意義あることではないかと、改めて感じました。

集合写真
▲成果発表者の方々と、小川会長(左端)、松村選考委員(左から2人目)、 平倉選考委員(右から3人目)、池田専務理事(右から2人目)

 

 

第3回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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