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第4回成果発表

平成20年5月27日(火)、第32回通常総会に先立ち、第4回坪井記念研究助成事業の成果発表会が開催されました。枠組壁工法に関する研究と若手研究者の育成に寄与することを目的に、当協会により創設されたこの事業も、回を重ねること4回。本年は、昨年助成対象者に選ばれた5グループが、1年にわたる研究の成果を発表しました。ここに、その概要をご紹介します。


枠組壁工法建築物 性能明示型耐震設計法の開発

五十田 博 氏
▲研究・発表者:五十田 博
<信州大学工学部社会開発工学科 准教授>

本研究は、地震時の被災状況を把握可能な耐震設計法開発のための基礎資料を収集し、最終的には枠組壁工法に適した性能設計法を開発することを目的とする。

現行の耐震設計法は構造要素の許容応力度や保有耐力に基づくものであり、この設計法に基づいて設計すれば大地震時に倒壊に至るような被害が生じないことは、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震などで証明済みである。しかし、大地震時にどのような被害が生じるか、を明示できる設計法は構築されていない。この設計法はいわゆる“性能設計法”である。現在の性能設計法を分類すれば、限界耐力計算は鉄筋コンクリート造用であり、エネルギーの釣り合いに基づく方法は鉄骨造用である。本研究では“枠組壁工法を対象”とした性能設計法の開発を目指す。

まず、限界指標に関する検討として、枠組壁工法の代表的な構造用合板の繰り返し実験を実施し、累積エネルギーと限界変形の関係を関連付けた。その結果、構造用合板壁はどちらかといえば鉄骨造の特性に近く、工学的には累積エネルギーが限界値にふさわしいという結果となった。

次いで、入力に関する検討として、時刻歴応答解析を実施した。その結果、性能が低い建物では限界変形に至る以前に、本震や余震によってエネルギー限界に達するような事例があることが明らかになった。

これまで木質構造は、地震動の繰り返し回数には余り影響されず、限界変形を設計の指標とすべきと考えていたが、枠組壁構造の構造用合板壁に関しては反する結果となった。なお、軸組構法で用いられているすじかい耐力壁は、本結果と異なるものであった。このように構造用合板以外の耐力壁に対して本検討結果が適用できるとは限らない。よって、今後、様々な耐力壁に対して限界曲線の蓄積を図り、建築物としての限界性能について検討を深める必要がある。

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枠組壁工法の床と壁構造に着目した上下階間の遮音性能向上に関する研究

廣田 誠一 氏
▲研究:廣田 誠一 他3名
発表者:廣田 誠一
<北海道立北方建築総合研究所>

本研究は、枠組壁工法の実用的な遮音性能向上手法を提案するために、枠組壁工法の音の「特性」を把握し、遮音性能向上手法の検討を行った。

「特性」の把握は、枠組壁工法と在来工法の同形状の実大モデルを作成し、床衝撃音や振動の伝わり方などの実測を行い比較する方法とした。

振動の伝わり方については、在来工法は低音域において壁のインピーダンス(壁などを加振した時の振動のしにくさ)が大きい傾向があるのに対し、枠組壁工法は低音域において壁、床のインピーダンスが小さい傾向であった。

床衝撃音レベルについては、在来工法も枠組壁工法も遮音等級でみると大差は無いが、より細かく周波数を分析すると、ボール加振の場合に枠組壁工法は250Hzの床衝撃音レベルが大きく、500Hz以上が小さい傾向などの特性がみられた。

これらの特性から、枠組壁工法の遮音対策の方向性は、「根太せいやスパンの調整による低音域の床の高インピーダンス化」「壁の低音域での高インピーダンス化」ということになり、具体的には、(1)根太の中央部に梁を入れるなどして固有周波数を高くする、(2)根太の中央部にウエイトをいれるなどして固有周波数を変化させる、(3)床構造の面密度を上げる、(4)スパンと根太せいの適正化、(5)壁の厚さを厚くする、面密度を上げる、といった対策が有効といえる。

枠組壁工法の床構造は根太のみで構成されているため、低い周波数で揺れやすいという弱点があるが、在来工法と比較した場合は床の剛性が高いことから、床衝撃音レベルについては不利であるとはいえない。

上記の手法を具体的に行うことで、枠組壁工法のより良い音環境を実現できるといえる。今後、これまでの研究成果とともに実建物において施工、測定し、設計資料としてまとめていきたい。

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枠組壁工法におけるビス接合耐力壁のモデル化と検証

小林 研治 氏
▲研究者:小林 研治他3名
発表者:小林 研治
<東京大学大学院農学生命科学研究科>

枠組壁工法では1棟あたりおよそ5万本もの釘が用いられている。中でも耐力壁などの構造用途に多く用いられているが、自動釘打ち機による施工では過大な圧力を用いると釘頭のめり込みが生じ、耐力低下を招く危険性がある。また、釘接合は解体時に手間がかかるため、木造住宅の分別解体を困難にしている側面もある。ビスは釘と比較して打ち込み量の調節が容易であり、安定した接合性能を確保できる。また、施工だけでなく解体も容易に行うことができることなどから、住宅の解体簡易化および建築部材のリサイクルの推進においても優れた接合具であるといえる。

本研究では、面材の留め付けにビスを用いた枠組壁工法耐力壁について、材料物性や寸法のみから水平せん断性能を推定することを目的とした。

筆者らはこれまでに枠材、面材、木ねじ呼び径と長さを変化させて一面せん断試験を行った。その結果、木ねじ接合部の一面せん断性能は木ねじの引き抜き抵抗が大きく影響することがわかった。そこで木ねじの引き抜き抵抗を考慮した一面せん断剛性・耐力推定式を提案した。この提案式は実験結果を精度よく推定できた。

一面せん断性能推定式では引き抜き抵抗を計算に用いているが、現在ビスはさまざまな形状のものが用いられており、個別に試験を行うことは困難である。そこでさまざまな形状のビスを用いて引き抜き試験を行い、ビス形状が引き抜き抵抗に及ぼす影響について検討した。その結果、引き抜き抵抗についてはビス形状による違いがほとんど見られないこと、さまざまな形状のビスについて木質構造設計規準の計算式が適用可能であることが確認された。

最後に、一面せん断性能推定式を既往の研究と組み合わせることにより、材料物性、寸法、ビス配置から耐力壁の水平せん断性能を予測し、ビス耐力壁の水平せん断試験により検証した。予測結果は実験結果をおおむね推定することができ、その妥当性が示された。

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中古住宅ストックの評価手法に関する研究―ツーバイフォー住宅を対象として―


村上 心  氏
▲研究者:村上 心 他6名
発表者:村上 心
<椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科>

本研究では、様々な住宅問題に対応し良質な中古住宅ストックを形成するためには、住宅の質の評価手法を確立することが必要であるという前提の下に、以下の手順によりツーバイーフォー住宅を含む中古住宅ストックの評価基準項目の提案を行った。

1) 日本市場における不動産価値評価の根拠となる項目の抽出・整理

現在の不動産価値評価の方法を整理することにより、評価基準間の項目のばらつきを調整した上で、建物評価項目を充実させることが市場評価の安定のために必要であることが明らかとなった。

日本住宅性能表示基準のキーワードを参考にして、建物評価項目を「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境」「光・視環境」「音環境」等の10種に分類した。さらに、本研究の視点である空間性能や居住性能の項目である「住戸の所在階」「間取り」「収納の量が多い」「建物の外観・内観のデザイン」「駐車場の台数」「窓からの眺めがよい」等の10項目を「その他」の1種として追加し、計11種の分類を提示した。

2) 主体・業種・形態等の違いに着目した、評価項目に対する重視度の分析

アンケート調査及びインタビュー調査により、主体(住宅関連6業種・居住者)、住宅の建て方(一戸建・共同住宅)、住宅の築年数(新築・中古)の違いによる比較を行った。全体的な傾向として、「光・視環境」「劣化の軽減」「音環境」の項目を重視していることが確認された。また、主体間の重視度の違いを明らかにした。

3) 1)2)を踏まえた中古住宅ストックの評価基準項目の提案

今後の課題としては、建物評価項目の重要度や傾向の重みづけ・得点化が必要である。建物評価項目の内容と得点を居住者に開示することで、個々のニーズに合った中古住宅を供給することが可能になる。今後の研究の発展により、良質な中古住宅ストックの有効活用に寄与することが期待される。

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日本の木造多層集合住宅 ヨーロッパにおける木造多層建築の研究

加々美 ツォーフィット 氏
▲研究者:加々美 ツォーフィット
<東京大学大学院工学系研究科建築学専攻>
代表発表者:杉田貴之
<代表発表者:杉田貴之>

この分野における先進国であるオーストリア、スイス、スウェーデン、フィンランドといったヨーロッパの国々で、木造多層建築について2つの研究調査を行った。さらに、短い期間ではあるがイギリスとドイツでも調査を行った。この研究調査のねらいは、ヨーロッパの国々の建設分野において、本当の意味での代替手段となる木造建築の重要な進歩を構成する要素を学ぶことにある。また、日本の建築環境への木造多層建築の発展のための適用方法を確認するための、日本の木造多層建築に関するより大きな研究テーマの一部である。

近年の木造多層建築は、ヨーロッパにおいて勢いをつけている。建設されたプロジェクトの数、規模、品質および重要性などすべてが、新しい建設分野へ参入する木材メーカーや建設会社の増加数のように、その勢いを示している。オーストリア、スイス、スウェーデン、それにフィンランドにおいて、木造多層建築の重要な進歩の3つの理由がみてとれる。1つ目は、森林国の林業は政治的な、もしくは経済的な強い影響の下にあることである。そのため新しい木造建築の確かな進歩を保証するために集中的に活動している。2つ目は、少数の木材メーカーは木造多層建築の進歩に長年関わっていることである。後10年もすれば、建築の品質の発展や競争力のある建物への投資がヨーロッパで実を結んでいるだろう。3つ目は、木造多層建築が恩恵の連鎖を確立させたことである。多くの会社や組織が新しい建設により経済的利益を受けている。そして新しい建設の成功に貢献する意志がある。

様々な環境的な要因は木造多層建築に味方している。これらは重要であり、またしばしば木造建築の普及促進が環境のための旗印となるのである。環境的な要因は付加価値を生み、建築の成功への追い風となる。広くつながりのある国内企業の経済的な動機付けは、ヨーロッパにおける木造多層建築の意味のある成功の根拠である。

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講評

ツーバイフォー工法に特定した本研究助成は年々質が向上し、高いレベルで定着

松村 秀一氏
▲坪井記念研究助成
選考委員 松村 秀一氏
東京大学大学院
工学系研究科建築学専攻 教授

本研究助成成果発表は今年で4回目となり、内容も例年のごとく質が高く、まずは研究された方々に敬意を表したいと思います。また、この助成事業はツーバイフォーという工法に特定した研究に対して助成を行うというもので、それ自体、希有なものであり、主催される日本ツーバイフォー建築協会に対して、同じ研究者の立場から改めて感謝を述べたいと思います。

さて、“釈迦に説法”ではありますが、ツーバイフォー工法はたいへん安定した工法であり、もはや研究の余地はない、という人もいますが、まだまだ解明すべきことがあり、展開の可能性もあると私は思っています。具体例を挙げますと、そもそもツーバイフォーがいつできたのか、についても明確にはされていません。発表者の方々は今回、一応の成果を得たわけではありますが、同じテーマをさらに深く追求するのもよし、こうした原点の解明など新たな課題に取り組むもよし、今後も研究を続けていただきたいと思います。同時に、この助成事業の存在を広めることでより多くの方々がチャレンジされ、ツーバイフォー工法のさらなる発展につながるような成果に結びつくことを期待しています。

集合写真
▲成果発表者の方々と、小川会長(右から2人目)、松村選考委員(右から3人目)、池田専務理事(右端)、平倉選考委員(左端)

 

詳細レポートは協会技術部にあります。
希望者は、希望するテーマと送付先を申込書PDFに明記して、FAXでお申し込みください。

 

第4回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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