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協会活動報告
第5回成果発表
写真:第5回坪井記念研究助成事業の成果発表会の様子

さる5月29日(金)、第33回通常総会に先立ち、第5回坪井記念研究助成事業の成果発表会が開催されました。今回、助成の対象となったのは4研究課題でしたが、当日、1グループがやむを得ぬ事情により欠席。発表は3グループとなりましたが、ここではすべての研究課題についてその概要を掲載し、併せて、当日、選考委員を代表して挨拶に立たれた平倉氏の講評をご紹介します。

 

講評

平倉 直子氏
▲坪井記念研究助成
選考委員 平倉 直子氏
(有)平倉直子建築設計事務所 主宰

本研究助成成果発表は本年で第5回目となりますが、私は第1回目から選考委員を務めさせていただき、毎回、成果発表を楽しみにしています。なぜなら、研究者の言葉から報告書だけでは読み取れない意気込みとか、テーマを選ぶに至った経緯なども感じ取ることができるからです。今回、発表された3つのテーマはいずれも興味深く、研究のための研究ではなく、建築に携わる者の実務につながる内容であったと思います。発表後、多くの方々から質問があったこともその証しでしょう。

この助成制度の目的は、ツーバイフォー工法に関する研究を通じて住宅の質の向上に寄与するとともに、人材を育成し次世代へとつないでいくことにもあります。発表者は研究を継続し、本日参加された方をはじめ多くの方々が周囲の優秀な研究者などに働きかけ、新たな研究へとつなげ、裾野を広げていただきたいと思います。なお、今年の審査の際、研究の対象となる情報を協会から供出し、みんなで共有できるような研究につなげていくことも検討しようという話が出ました。これからの研究テーマの有り様も変わってくるのではないかと期待しています。

集合写真
▲左より、小川会長、五十田博氏、宋昌錫氏、柚本玲氏、平倉選考委員、池田専務理事

 

詳細レポートは協会技術部にあります。
希望者は、希望するテーマと送付先を申込書PDFに明記して、FAXでお申し込みください。


日本の気象条件下における枠組壁工法建築物の壁内湿気性状

柚本 玲氏
▲研究者:柚本 玲氏 他1名
発表者:柚本 玲氏
<お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター>

木質建材では特に、腐敗の危険性、微生物の発育といった湿気による害に配慮する必要がある。わが国は南北に長く、山も 多いため地域による気象の差が大きい。したがって、寒冷地における冬季結露、蒸暑地における夏の湿気の害等、地域により生じる問題が異なる。さらにそれらの中間的な気象条件の地域では、その両方の問題に配慮しなければならない。

本研究では気候の異なる7都市(旭川市、弘前市、長野市、東京、熊本市、宮崎市、那覇市)において枠組壁工法建築の壁内湿気性状を把握し、地域ごとの湿気に対する問題点、対策を提示することを目的とした。そのために、非定常解析を実施し、一般的な無機繊維系断熱材と木毛繊維断熱材、また防湿層の有無について比較した。解析には1次元非定常熱湿気同時移動解析プログラムWUFI Pro 4.2 for Japan(フラウンホーファー建築物理研究所)を用いた。解析の結果、寒冷地旭川市では、どちらの断熱材においても、防湿層を設置すると壁内の高湿度が解消された。逆に蒸暑地那覇市では、防湿層を設置すると壁全体が高湿度になることが確認された。弘前市、長野市、東京、熊本市、宮崎市の中間的な気候の都市では防湿層を設置し、さらに断熱材を木毛繊維にすることにより壁内が高湿にならなかった。

木造の建築物は、壁や屋根構造で多種の建材を複雑に組み合わせるため、その熱湿気特性も複雑でわかりにくくなる。したがって、本研究のように、物件ごと、地域ごとに非定常解析により湿気の害を予測することが必要不可欠であると筆者は考える。そのためには、実務者が簡易に解析を実施できる環境の整備が必要である。解析に先駆け、関連する規格やガイドラインの情報を収集した。その結果、我が国には建物の湿気問題に関する明確な基準、規格がほとんどないことが確認された。今後、さらに解析事例を増やし、指針や規格の整備に寄与することを今後の課題としたい。

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[1.85MB]

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枠組壁工法建築物 性能明示型耐震設計法の開発

五十田 博氏
▲研究・発表者:五十田 博氏
<信州大学工学部建築学科 准教授>

本研究は、地震時の被災状況を把握可能な耐震設計法を開発するための基礎資料を収集し、最終的には枠組壁工法に適した 性能設計法を開発することを目的とする。

現行の耐震設計法は構造要素の許容応力度や層の保有水平耐力に基づくものであり、この設計法に基づいて設計すれば大地震時に倒壊に至るような被害が生じないことは、阪神大震災、新潟県中越地震などで、証明済みである。しかし、大地震時にどのような被害が生じるか、を明示できる設計法は構築されていない。この設計法はいわゆる“性能設計法”である。そして、現在の性能設計法を分類すれば、限界耐力計算は鉄筋コンクリート造用であり、エネルギーの釣り合いに基づく方法は鉄骨造用である。本研究では“枠組壁工法を対象”とした性能設計法の開発を目指す。

本研究では、まず、限界指標に関する検討として、枠組壁工法の代表的な構造用合板とせっこうボードの繰り返し実験を実施し、累積エネルギーと限界変形の関係を関連付けた。その結果、構造用合板壁は、どちらかといえば鉄骨造の特性に近く、工学的には累積エネルギーが限界値に、せっこうボードは累積エネルギーが限界値になるという結果となった。

次いで、入力に関する検討として、時刻歴応答解析を実施した。その結果、性能が低い建物では限界変形に至る以前に、本震や余震によって、エネルギー限界に達するような事例があることが明らかになった。

最後に、実大振動台実験の結果と限界曲線を関係付けた。せっこうボードの耐震性の寄与は小さく、余震を考慮した場合、無視したほうがよい耐力要素ということが明らかになった。

これまで木質構造は、地震動の繰り返し回数には余り影響されず、限界変形を設計の指標とすべきと考えていたが、枠組壁工法においてはエネルギー量も考慮すべきという結果となった。

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[2.58MB]

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ポリカーボネイトを面材としたツーバイフォー工法耐力壁の開発

宋 昌錫氏
▲研究者:宋 昌錫氏 他3名
発表者:宋 昌錫氏
<東京大学大学院>

木造住宅の主な構造要素として耐力壁が幅広く用いられている。枠組壁工法でも耐力壁が建物を支えている主な構造体であることは変わらない。この耐力壁は工法によってさまざまな形式が存在している。しかし多くの耐力壁は、構造要素としての役割を担うものの、建築物の室内空間を表現するための機能は空間の仕切りや内装材を壁に張るなどの壁自体の役割のみである。しかし別の材料を用いることで耐力壁に新しい機能を持たせることも可能であると考えた。この研究では一般的に不透明な壁を透明にすることによって建物を支えながらもインテリア的な機能を併せ持ち、耐力壁でありながら向こう側が透けて見える透明な耐力壁の提案を試みた。

透明な材料は現在さまざまな分野で使われており、主としてガラスやアクリル、ポリカーボネイトなどの樹脂系の材料などが挙げられる。各材料はそれぞれ異なる物性を示す。ガラスは面外方向の変形は弱く割れやすいが、面内方向での圧縮力には強い性質を持っており、その物性を生かした耐力壁やその他の構造要素が研究開発されている。

一方、ポリカーボネイトは透明性、耐衝撃性、難燃性等において高い物性を示すエンジニアリングプラスチックでありながら、建築用としても様々な用途に利用されている。この材料は他の木質系面材に比べてやわらかく割れにくいため、衝撃に対して高い安全性を有している。そのため一般の枠組壁工法における、釘と合板で構成された面材張り耐力壁の施工の仕様をそのまま、合板をポリカーボネイトシートに替えて施工することが可能であると考え、耐力壁の試験体を製作し面内せん断試験を行った。

枠組壁工法で一般的に使われる接合具であるクギを用いて既存の施工方法での施工ができた。そして、木ねじを用いることでクギより高い耐力を確保できることがわかった。最終的にはポリカーボネイトシートを合板の代わりに用いることで耐力壁として活用できる十分な性能を出せることが確認できた。

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[2.34MB]

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中古住宅ストックの評価手法に関する研究


橋本 雅好氏
▲研究者:橋本 雅好氏 他6名
<椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科>

現在我が国の建築業界は、新築と再生が共存する市場へ生産システムの転換を図る必要がある。こうした背景を踏まえ、2007年度は、良質な中古住宅ストックを形成するためには住宅の質の評価手法を確立することが必要であるという前提の下、住宅ストックの評価基準項目の提案を行った。2008年度は、天井高や眺望等の空間性能や、住宅の快適さ等の居住性能に関連する項目について重点的に再整理した。

次に、これらの建物価値評価項目(15分類68項目)について、企業10社へのインタビュー調査、居住者へのアンケート調査(回収266票)を行った。居住者は、構造の安定、劣化の軽減の重視度が高かった。専門を除く一般居住者では、他にも温熱環境や、空間性能・居住性能に関する分類の設備・意匠・周辺環境・手続きの値が他の分類より高かった。これら重視度は、評価における項目間の重みづけを行う際に利用できる。また、住宅性能表示、及びCASBEEでの定量化の状況を整理した。

さらに、住宅メーカー(6社)が建物価値評価項目の各分類に対してどのような取り組み等を行っているか、コメントを抽出・整理した。住宅性能表示の基準が設けられている項目に対しては、各社とも最高ランクを満たしていることが標準であるという回答であった。

また、一般居住者の項目重視度とツーバイフォー工法メーカーの取り組みについて考察した。居住者重視項目の、構造の安定は工法上の特色により満たされ、劣化の軽減は湿気対策や構造躯体の耐久性により対応している。一方、空間性能・居住性能に関する意匠・設備等は重視度が高いものの、メーカーの回答は「顧客のニーズによる」「臨機応変」に止まり、具体的な提案システム等の構築はなされていなかった。

以上のように本研究成果は、住宅価値評価研究のベースとなるものである。今後の研究の発展により、良質な中古住宅ストックの活用に寄与することが期待される。

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[0.35MB]

 

第5回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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