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協会活動報告
第6回成果発表
写真:第6回坪井記念研究助成事業の成果発表会の様子

5月26日(水)、第34回通常総会に先立ち、第6回坪井記念研究助成事業の成果発表会が開催されました。助成の対象となった5グループの代表者が順次、研究の成果を発表し、発表後は活発な質疑応答が行われました。ここではそれぞれの研究課題の概要と、選考委員を代表して挨拶された松村教授の講評を紹介します。

 

講評


坪井記念研究助成 選考委員
松村 秀一氏
(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授)

研究成果発表会は今回で6回目を迎えましたが、年を重ねるごとに充実していることを実感しています。選ばれたテーマはみな、実務に結びつきやすいものであり、なかには単なる研究に終わらず問題を提起するものもあり、非常に刺激を受けるとともに、選考委員の一人として喜ばしく思いました。5人の発表者には拍手を送りたい気持ちです。

この助成制度は、いろいろな分野に取り組める、他に類のない制度です。より多くの人が積極的に応募するよう、発表者をはじめ参加された方々にも広く周囲に働きかけていただきたいと思います。また、今後は住宅に限らず、ツーバイフォーによる建築すべてに関して、その可能性を切り拓くような研究内容が出てくることを期待しています。

 

集合写真
▲発表者の方々と、選考委員(松村教授〈左から4番目〉・平倉氏〈右から4番目〉)、小川会長(右端)、池田専務理事(左端)

 

研究課題の詳細レポートをご希望の方は、テーマと送付先を明記して
協会技術部へFAXでお申し込みください(会員:有料)。<FAX:03-5157-0832>


交通による振動がツーバイフォー住宅の居住性能に及ぼす影響評価に関する研究

野田 千津子氏
▲発表者・研究者:野田 千津子氏
(日本女子大学)
研究者:他1名

ツーバイフォー工法をはじめとする戸建住宅では、車両や鉄道などによる交通振動が居住環境の快適性に支障をきたす事例が報告されている。特に居住環境では、静穏な環境である夜間に発生する振動による睡眠への影響が問題視されることが多い。そこで本研究では、戸建住宅で実際に発生した交通振動の記録波形を用いて振動実験を行い、臥位姿勢の被験者が交通振動をどのように感じるのかを明らかにする。

実験では、戸建住宅で記録された道路車両あるいは鉄道車両通過時の波形パターン5種類を基にし、卓越振動数を5段階、加速度最大値を6段階に変化させた実振動を用いた。居住環境で実際に発生するこれらの振動は、広範囲の振動数成分を含み、加速度の増減の仕方もそれぞれ異なり、複雑である。これらの波形パターンと振動数を組み合わせた全25種類の実振動を、加振テーブル上の居室内で仰向けになった被験者の左右方向に入力し、感じたか否かを手に握ったボタンの反応から評価した。

その結果、卓越振動数と加速度最大値を用いて知覚確率を評価することで、波形パターンが異なる場合も、それらの評価曲線は同じような傾向を示すことを明らかにした。従来の評価は、単一の振動数と加速度を繰り返す正弦振動に対する知覚に基づいている。実振動の知覚と比較した場合、両者は同じく4Hz付近でもっとも感じやすい傾向を示すが、実振動の方が全体的に知覚確率で60%程度感じにくいことがわかった。

実振動のなかでも特に卓越振動数が明確な場合、波形パターンによる違いを考慮せず正弦振動との差分から実振動の知覚を評価することが可能であり、設計において有用な指標となる。また、臥位姿勢の場合、戸建住宅で発生しやすい振動数付近を特に感じやすいため、睡眠時に着目した場合などには配慮が必要であることもわかった。

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外壁仕上げ材付き面材釘打ち耐力壁のせん断挙動に関する研究

佐川 嘉郎氏
▲発表者・研究者:佐川 嘉郎氏
(明治大学)
研究者:他3名

建物が地震などの外力に対して抵抗するための要素の一つとして耐力壁があり、多くの木質系住宅に壁量計算を適用して建てていることを考えれば、建物の安全に耐力壁が大きく影響しているといえる。

耐力壁については、構造体に外装仕上げをするため、それらが実験で把握されている耐力壁のせん断挙動に少なからず影響を及ぼしている。一般的に木質系住宅の設計において、外装仕上げ材は仕様規定となっており、各種仕様における外装仕上げ材の耐力壁における構造性能を把握できていない。建物の設計が性能設計に移行している以上、外装仕上げ材の構造性能を考慮した設計ができることが望ましい。

しかし、外装仕上げ材の仕様と耐力壁のせん断挙動の関係について研究が見られるようになってきているものの、あまり検討されていないのが現状である。

そこで本研究では、モルタルに比べて仕上げ材として主流になりつつある窯業系サイディング(以下、サイディング)を釘固定した面材釘打ち耐力壁を対象とし、面内せん断実験、釘接合部の一面せん断実験を行う。それらの実験から得られた結果を基にデータの検証を行うことで、サイディング付き面材釘打ち耐力壁のせん断挙動を明らかにすることを目的とする。以下に本研究の成果を示す。

サイディングを留め付けることで合板の見かけの面内せん断剛性が上昇し、耐力壁の真のせん断変形において面材のせん断変形が生じ難くなるため、真の荷重変形関係において剛性が上昇する一方で変形能力が小さくなる。釘接合部については打ち込み深さの異なる釘を併用した場合、最大耐力までは概ね釘本数の足し合わせが成り立つが、最大耐力後は足し合わせに比べ変形性能が低下した。ただし、単調加力ではその傾向が見られたが、繰返し加力では足し合わせが成り立った。

また、釘接合部及び面材の荷重変形関係をバネモデル化することで、耐力壁の終局変形までのせん断挙動が予測できることを示した。

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日本の気象条件下における枠組壁工法建築物の壁内湿気性状-高気密高断熱住宅の非定常解析-

柚本 玲氏
▲発表者・研究者:柚本 玲氏
(お茶の水女子大学)

欧州では、住宅をエネルギー消費量によりレベル分けし、売買時等に明示するエネルギー証明書というシステムが導入され始めた。最近、日本でもこれらのレベルを示すパッシブハウス等を謳う住宅の例が見られる。本研究では、非常に高いレベルに断熱化した場合の枠組壁工法住宅の非定常解析を地域ごとに実施し、湿気に関する問題点、対策例を示すことを目的とした。

ドイツでの例を示すと、エネルギー証明書は、改正「省エネルギーに関する通達(2007年10月1日施行)」により発行を規定されている。原則として建物の1次エネルギー需要量、最終エネルギー需要量、透過熱損失量がグラフで示される(kWh/ua)。パッシブハウスの基準を満たす住宅で(120 kWh/ua以下〈うち暖房が15 kWh/ua以下〉、U値:0.15 W/uK以下)、無機繊維系及び木毛繊維断熱材、防湿層の有無を比較し解析した。1次元非定常熱湿気同時移動解析プログラムWUFI Pro. 4.2、拡張アメダス気象データを用いた。解析条件と評価基準は省エネルギー基準の解説、断熱・気密・防露に関する性能評価方法に従った。

旭川市、盛岡市、長野市、金沢市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、宮崎市、那覇市の10都市を対象とした。すべての条件で評価基準(外装表面を除き、容積基準含水率期間平均値が0.15 m3/m3以下、最寒期1月〜2月の木質系材料質量含水率が0.28 kg/kg以下)を下回った。断面の温湿度、含水率分布では、防湿層がある場合、那覇市を除く都市の壁内の湿度は85%RH以下で保たれた。那覇市では、防湿層屋外側の相対湿度が80〜90%RHを示した。防湿層がない場合、無機繊維系断熱材では、旭川市、盛岡市、長野市で冬季に90%RHを超えた。他の都市、条件では、85%RH以下に保たれた。寒冷地での結露対策例として防湿層設置の他に、木毛繊維断熱材の有効性を示した。

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枠組壁工法住宅に使用された構造用合板の再利用に関する研究


古田 直之氏
▲発表者・研究者:古田 直之氏
(北海道立林産試験場)
研究者:他2名

枠組壁工法が導入されてから36年が経過し、初期に建設された住宅の解体が徐々に進んできており、解体により排出される廃材は今後増加していくものと予想される。住宅の解体により排出される構造用合板は、接着剤が使用されていることやチップ化しても品質が悪いことなどから再利用用途が少なく、現状ではその多くが燃料利用されているに過ぎない。木材が持っている炭素固定機能を十分に発揮させるためには、リユースやマテリアルリサイクルを優先したカスケード型の利用を進めるのが理想であり、再利用用途の拡大が重要である。

本研究では、構造用合板の面材料としての再利用の可能性を検討するため、住宅の解体や改修によって廃棄される構造用合板(解体合板)について、接着性能や曲げ性能の劣化の程度を調査した。調査物件は枠組壁工法のほか在来軸組構法等を含む12件であり、採取した解体合板は構造耐力部材として使用された9mm、12mm、15mm厚の合板である。

解体合板の接着性能は、特類合板よりも1類合板の方が性能低下の程度は大きく、接着剤の耐久性の違いが明確になった。特類合板では新品合板と同様の傾向を示したことから、接着層の劣化はほとんど認められないものと考えられたが、1類合板では長期間の使用による接着層の劣化が進行していたものと推察された。解体合板の曲げヤング係数は、表板繊維とスパンの方向が0度方向の試験体において性能低下が確認されたが、90度方向では新品合板と大差はなかった。したがって、解体合板の多くは表裏単板のヤング係数の低下が認められるが、内層部の単板は初期の性能を維持しているものと推察された。また、大半の解体合板でJAS基準値を満たす曲げ性能を維持していた。

本研究成果は、合板の再利用の可能性についての判断指標となるだけではなく、構造耐力部材として使用された合板の接着耐久性や強度耐久性を示す資料としての活用が期待できる。今後は、各種の性能劣化に及ぼす使用環境の影響や性能劣化の要因を明確化するなどの詳細な検討が必要である。

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[5.85MB]

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ツーバイフォー住宅のストック量の時間的及び空間的発展過程の分析


川本 聖一氏
▲発表者・研究者:川本 聖一氏
(三菱地所ホーム株式会社)

「ツーバイフォーは年間10万戸程度建設されるまで普及してきた」というように、ツーバイフォー住宅の発展過程に関する漠然とした知識はあるが、どの地域でどのような普及過程をもって発展してきたかについてはあまり資料として整理されていない。本研究では、地域間比較を踏まえた、ツーバイフォー住宅の発展過程を分析して整理し、今後のツーバイフォー住宅のストック量の予測を行った。

日本の住宅着工は、1970年代以降、2度のオイルショックによって減少するが、その後150万戸/年を超えるまで持ち直し、1990年代初頭のバブル崩壊で減少し、90年代後半に多少持ち直すものの、現在まで減少傾向にある。この中で、ツーバイフォー住宅は1973年のオープン化以来順調に着工フローを増加させ、全住宅着工数の10%を超えるまでになっている。

2007年の着工フロー分析の結果として、ツーバイフォー住宅の割合が高い地域は岩手、富山、山口、香川、岐阜であり、低い地域は、沖縄、島根、京都、大阪、東京であった。90年代半ばまで、一戸建てに牽引されて、ツーバイフォー住宅は成長した。ところが、近年の増加は長屋建ての増加によるものである。これは、大都市部ではなく、郊外住宅地が多く存在するエリアで顕著である。共同住宅の着工は低く推移し、戸建て住宅は90年代後半から増加していない。ツーバイフォー住宅のストック数は150万程度である。住宅ストックに占める割合は、3%に満たない。オープン化以来、当初は、北海道、宮城、首都圏、近畿圏、香川、山口において高い比率でストック量を蓄積した。現在、岩手、中部圏、富山でストック量の比率が高まり、近畿圏はストック量の増加の割合が減少する。北海道、香川、山口は、初期からツーバイフォー住宅が盛んな地域である。京都、大阪は初期から比率が低い。今後、東京、近畿圏の増加は低く、首都圏、中部圏は高い増加比率が続くと思われる。などの知見を得た。

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[0.25MB]

(掲載は発表順)

第6回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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