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第7回成果発表
写真:第7回坪井記念研究助成事業の成果発表会の様子

5月25日(水)、第35回通常総会に先立ち、第7回坪井記念研究助成事業成果発表会が開催され、平成22年度に助成の対象となった4研究課題について発表が行われました。また、その後、廣田誠一氏(地方独立行政法人北海道立総合研究機構北方建築総合研究所)による特別講演「枠組壁工法住宅の床衝撃音対策について」も行われました。4研究課題の概要と、松村選考委員による講評、および次回の研究対象課題についてご紹介します。

 

講評

松村 秀一氏
坪井記念研究助成 選考委員
松村 秀一氏
(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授)

まずは本日、研究発表をされた方々に、短期間ながら期待以上の成果を上げていただいたことに対し敬意を表したいと思います。

さて、日本の近代建築を振り返ってみますと、昭和30年代後半から40年代初頭の頃までは研究者による研究・実験がなければ建築自体が不可能な状況でした。しかし、先人の努力によって技術が確立し、生産供給の体制も整った現在、私を含め建築に関する研究者に求められていることは、かつてとは大きく異なり、その研究が将来どのような価値に結びついていくかということだと考えます。

ツーバイフォー工法は累積着工戸数が200万戸に迫り、シェアも伸ばしているとはいえ、今後、住宅市場そのものが拡大していくことは期待できません。しかし、ツーバイフォー工法は決して住宅だけのためにあるわけではなく、実際に他の用途へと適用範囲を広げています。そうした流れの中で、本日、発表された研究の内容は、ツーバイフォー工法の新たな価値の創造につながる可能性を秘めている、と予感させられるものでした。今後も、研究者と日本ツーバイフォー建築協会のメンバーが意見を戦わせながら、研究の成果をさらに発展させていくことを願ってやみません。

 

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交通による振動がツーバイフォー住宅の居住性能に及ぼす影響評価に関する研究

野田 千津子氏
▲研究者:野田 千津子氏
(日本女子大学)
研究者:他1名

ツーバイフォー工法をはじめとする戸建て住宅では、近接した道路の車輌や鉄道の電車などによって生じる交通振動が居住環境の快適性に支障をきたす事例が近年多く報告されるようになっている。本研究では昨年度に続き、実験による交通振動に対する知覚の結果を、戸建て住宅における実際の環境評価に近づけるべく、居住者に対する調査に基づいて交通による水平振動への性能評価に関する意識に着目した。

昨年度の被験者実験の結果、実務上では、実振動を卓越振動数と加速度最大値を用いて評価できることを見出した。さらに臥位姿勢における実振動の知覚確率を、交通や風による住宅骨組みの水平振動の性能グレードと結びつけて評価した。その結果、居住者がもつ環境振動の性能に対する判断基準と実振動の物理量との関係を明らかにし、多くの居住者が「標準」ととらえる振動範囲や「とてもよい」と評価する振動範囲などを提示した。

さらに意識調査を通して、性能グレードの判断基準に関する居住者のとらえ方を探った。その結果、自宅での日常的な振動の経験などを背景として、ツーバイフォー住宅をはじめとする木造戸建て住宅と集合住宅の居住者では、「標準」のとらえ方が異なることなどがわかった。一方、要求性能として自宅に望む性能グレードを質問した結果では、7割程度の居住者が「標準」より一段階上の「よい」性能グレードを望んでいることなどもわかった。

実験および調査の実施条件には改善の余地もあり、実環境における評価との整合性に関しては今後、検討すべき課題が残されている。また、より総合的な判断基準に基づいた性能グレードの評価には個人差が大きく、実際には個々の住宅と居住者に応じた個別的な評価が不可欠である。実務に用いる場合には、このような点への留意が求められるが、本研究で提示した資料が評価の目安を与えるものとして活用されることを期待する。

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耐力性状の異なる耐力壁が混在する枠組壁工法建築物の構造特性係数の検討

中尾 方人氏
▲発表者・研究者:中尾 方人氏
(横浜国立大学大学院)

木質構造のなかでも枠組壁工法の建築物は比較的構造性能が高く、様々な規模、用途の建築物に適用されることが期待されている。構造性能を損なわず、より設計の自由度を高めるため、標準とは多少異なる仕様の耐力壁を用いた枠組壁工法建築物の構造特性係数(以下Ds)について、耐力壁の静的せん断加力試験の結果をもとに、枠組壁工法建築物構造計算指針(以下2×4指針)の方法および地震応答解析による検討を行った。

まず、構造用合板試験体2体(いずれもCN50釘を使用し、留め付け間隔が100oピッチと50oピッチ)と普通石こうボード試験体2体(それぞれGNF40釘とネジを使用し、いずれの留め付け間隔も100oピッチ)の静的せん断加力試験を行った。試験結果から求めたDsを比較すると、CN50釘50oピッチの構造用合板の試験体のDsは100oピッチに比べて1.6倍であり、ネジ留めの石こうボードの試験体のDsは、GNF40釘留めの場合に比べて62%であり、接合具の間隔や種類を変更することで靭性能に大きな違いがみられた。

次に、上記の構造用合板耐力壁と石こうボード耐力壁が併用された枠組壁工法建築物のDsを評価するため、1質点系の地震応答解析を行った。各耐力壁の復元力特性は、4折線NCLモデルで作成し、解析モデルにおける重量は、存在壁量と必要壁量とが同じになるように設定した。入力地震波は、JMA Kobe NSとBCJL2であり、入力を徐々に大きくしながら、応答変形角が各耐力壁の包絡線を加算した包絡線(加算包絡線)の終局変形角に達するときの入力倍率を求めた。そして、その倍率の入力が弾性系に作用したときの最大層せん断力に対する加算包絡線の終局耐力の比をDsとした。その結果、地震応答解析によって評価したDsは、加算包絡線のDsや2×4指針の方法で評価したDsと同等であり、本研究の範囲においては、やや標準と異なる仕様の耐力壁を併用した枠組壁工法建築物であっても、2×4指針の方法によってDsを適切に評価できることが分かった。

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「うるささ」感覚評価に基づいた床衝撃音遮断性能の計測及び評価方法の開発

佐藤 洋氏
▲発表者・研究者:佐藤 洋氏
(独立行政法人 産業技術総合研究所)

住宅における音環境に対するクレームの1つとして床衝撃音に対する不満がある。不満とは人間が感じる感覚である。そこでこれまで木造枠組壁工法の住宅における床衝撃音について人が感じる「うるささ」に基づいて評価する方法を研究してきた。音環境に対する人の感覚については様々な研究がなされており、床衝撃音についても研究例はあるが、床構造および衝撃源により人の反応が異なるなど、一元的な評価が行えるには至らなかった。

そこで、本研究では、木造枠組壁工法住宅に対象を限定し、居間および寝室における重量床衝撃音に対する「うるささ」を聴感実験に基づき計測した。その結果、居間および寝室における重量床衝撃音に対する「うるささ」とラウドネス(dB)とが良く対応することがわかった。半数の人が「うるささ」を感じる値はA特性音圧レベルに換算すると、寝室47dB、居間54dB、特に居間で不満が起こるレベルは61dBであった。

次に、この結果を実務的に応用する方法として、JIS A1418-2に定められたゴムボールを用いた標準的な測定の際に同時にラウドネスを計測することにより、様々な状況における「うるささ」を推定する方法を提案した。さらに、ラウドネスとA特性最大音圧レベルは対応が良いことから,最大A特性音圧レベルを用いることにより、簡易的に評価が行えること、およびその誤差の程度を明らかにした。誤差の程度はラウドネス(dB)で0.5 [dB re 1 sone]程度であり、「うるささ」が有意水準95%で変化が認められるかどうかの値であった。本研究の成果により、「うるささ」に基づいた重量床衝撃音の評価が可能となり、より合理的な床構造の設計がすすむことを期待している。

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階段コアを耐震要素に取り入れた工法の開発


森 拓郎氏
▲発表者・研究者:森 拓郎氏
(京都大学生存圏研究所)
研究者:他2名

本研究では、階段をコアとした新しい工法の提案を目指して、枠組壁工法で一般に用いられている階段単体の耐震性能を明らかにすることを目的とした階段の性能実験を行った。

直線階段試験体は幅2.73mで高さ約2.70mの2構面を0.91mの間隔で並列配置した間に直線階段を配したもので、廻り階段試験体は幅2.73mで高さ2.80mの折返し階段とした。また、階段試験体の製造は一般的な枠組壁工法の施工と同じとした。なお、加力方法はタイロッド式で正負交番静的3回繰り返しとし、最終的に引ききりとした。

試験結果は、どちらの階段も大きく耐力を下げる原因となったのは、石膏ボードのせん断破壊であった。また、両試験体でスタッドの抜けなどが見られた。また、直線階段、廻り階段試験体では、それぞれ最大荷重が48.6kN、53.7kNと高い耐力を示した。直線階段試験体では、最大耐力に達した後、石膏ボード外周部の損傷により荷重が低下し、1/30radで最大耐力の約半分の荷重となった。一方、廻り階段試験体では、変形角1/30radを越えても、荷重が大きく低下する事なく50kN前後の耐力を保ち、高い変形性能を示した。また、廻り階段試験体では、石膏ボード10枚分の包絡線と比べ初期剛性にほとんど違いがみられず、最大荷重は10kN程度しか上昇しない結果となった。一方、直線階段試験体では、初期剛性および最大耐力共に石膏ボードの性能を大きく上回る結果となった。このことから、直線階段の方が、側板や踏み板などの階段要素による石膏ボードの拘束効果が大きいことがわかった。

これらの結果により、枠組壁工法の階段単体の性能は、面材の性能と階段の部材による面外への押さえ込み効果と面材のせん断性能で発現されており、面材の止め付け方や面材と階段要素の止め付け方及び面材のせん断性能によって、その強度特性を向上させることが可能であることがわかった。今後、階段をコアとした新しい工法の提案を目指して、階段コアの耐力性能向上と水平構面との取り合いなどの検討を進めたい。

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(掲載は発表順)

第7回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら

 

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