ホーム事業者向け情報協会活動報告坪井記念研究助成>第8回成果発表

協会活動報告
第8回成果発表
写真:第8回坪井記念研究助成事業の成果発表会の様子

5月29日、通常総会に先立ち、第8回坪井記念研究助成事業成果発表会が開催され、平成23年度に助成の対象となった4研究課題について発表が行われました。また、五十田博氏(信州大学工学部建築学科教授)による特別講演「中層・大規模建築物に必要な耐震性能とは」も行われました。それらの紹介と、松村選考委員による講評、及び次回の研究対象課題についてご紹介します。

 

講評

今回は、環境工学も歴史も計画も、実践的な活動もあり、大変幅広で、坪井記念研究助成にふさわしい研究成果でした。

山口さんは、日本のツーバイフォー工法が、今後、非住宅への展開を進める中で、小学校における光や熱の環境面での評価を行い、光ダクトの提案は、大変有意義なことだと思います。

村松さんは、主に若い方への啓発、あるいは教育にかかわるもので、普通の研究とは違った、苦労とエネルギーのかかる試みをされました。素材に触れながら、ものづくりを行った体験は、学生にとって大きな意味があったと感じます。

木下さんは、日本の歴史をひも解き、100年前のツーバイフォーで建てられた旧木下邸に、当時米国で主流ではなかったプラットフォーム工法が採用されていたことを考証されました。これには少々驚き、また大変興味深く感じました。

安枝さんの報告は、30年経過したツーバイフォーのタウンハウスにおける大規模修繕に関するもの。複雑な所有形態に対応し、どう再生していくかという重要な問題に取り組まれました。

いずれも、今後のハウジングに貴重な示唆を与える研究成果で、改めてこの助成事業は意義深いと思いました。

松村 秀一氏   平倉  直子氏

坪井記念研究助成 選考委員
松村 秀一氏

  

坪井記念研究助成 選考委員
平倉 直子氏
(平倉直子建築設計事務所 主宰)

 


ツーバイフォー工法を用いた小学校建築における環境調整技術の有効性に関する研究

山口 温氏
▲発表者・研究者:山口 温氏
(関東学院大学建築・環境学部
建築・環境学科 専任講師)

現在、住宅を含む全建築物の木造化率が40%を超えているのに対し、学校教育施設では約2%と低いのが現状である。しかし、2010年に公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行され、2012年には国土交通省、文部科学省による「学校ゼロエネルギー化」の推進方策の検討が始まっている。また、小学校ではエコスクール事業として、環境に配慮した学校施設づくりが推進されている。このような背景から、今後、環境に配慮した木造の学校教育施設の建設が進むと考えられる。

本研究は木造の構法の中でも耐震性、耐火性が優れているツーバイフォー工法に環境調整技術を組込んだ小学校建築の規格化を目的としている。小学校建築のエネルギー消費量は、照明用エネルギーの割合が最も多い。これは教室内の照度分布が不均一なために人工照明を使用することが原因の一つである。そこで、教室内の光環境の現状把握のため、南側採光、北側採光、両面採光の3つの教室について机上面照度を実測した。また、床トラス間を利用した光ダクトの模型実験を行った。光ダクトは低照度個所への導入の効果があるが、昼光利用による照明用エネルギーの削減効果は、北側採光が教室内の均斉度が高く有効であることがわかった。次に、南側に緩衝空間をもつツーバイフォー工法2階建の幼稚園において熱および光環境を実測した。緩衝空間と教室内の日中の温度差は、夏季は2〜3℃、冬期は5℃であった。さらに効果的な熱の授受によって、教室内の熱負荷が減少する。

以上の結果から、規格化に向けた設計への反映点は、北側の窓面積を大きく、南面の窓面積を小さくすること、南側の外壁を二重に配置し、その間を緩衝空間として、教室内への直射光の入射を防ぐことで熱環境、光環境の両方に有効である。今後は、モデルプランの詳細設計および検証、従来型との比較によって、ツーバイフォー工法の優位性を実証していきたい。

報告書はこちらへPDF
[3.39MB]

ページの先頭へ


ツーバイフォー工法を用いた仮設建築の実現化を目的としたワークショップにおける研究

村松 雄寛氏
▲発表者・研究者:村松 雄寛氏
(特定非営利活動法人〈NPO法人〉
アートアンドアーキテクトフェスタ)

全国の大学で建築やデザインを学ぶ大学生・院生が参加した「建築学生ワークショップ」において、仮設建築をツーバイフォー材を用いて実現化し、新しい工法の可能性を模索する活動を行った。

今回のワークショップでは、湖上の島という開催地の特殊な場所性から発想したユニークな視点から「人が入ることのできる、特定の機能をもたない小さな建築」の提案を募り、国内の大学で教鞭をとる構造家、建築家の先生方の指導のもと8つの仮設建築を制作した。現時点では、あくまでも実験的ではあるが、これまでの固定概念を刷新できる可能性を持った、新たな建築手法が試みられた。

開催地である竹生島は、自家発電による電力のみで、急斜面に造成されたわずかな空地を制作・設置場所としていたため、多量の電力や大型の機械を運び込むことが不可能な土地であった。そのため、人力による簡易な加工が可能であった点、また5日間という短期間での施工もツーバイフォーの利点に見合っていたと捉えている。一般的には住宅に用いられるツーバイフォー材を、特殊な環境のもつ魅力に触発されたアイデアにより、通常では発想されない実験的な提案・試作を行うことができたのではないかと考えると同時に、新しい工法への可能性を見つける方法を得たと感じている。

通常、製図や模型、CG等といった提案レベルでの設計を行う学生にとっては、今回のように原寸スケールでのツーバイフォー材を用いた制作および実験を行ったことは、通常の授業では体験できない貴重な経験となったように見受けられる。今後も継続的なワークショップ形式による活動を行っていくことで、新しいツーバイフォー工法の提案につなげていきたいと考えている。また、若い世代の自由な発想から、実際の制作体験を通して、ツーバイフォー工法による建築設計への興味や関心を高め、今後の建築界におけるツーバイフォー工法のさらなる普及推進につとめたいと考える。

報告書はこちらへPDF
[16.2MB]

ページの先頭へ


わが国の明治・大正期におけるツーバイフォー住宅の変遷に関する研究

木下 和也氏
▲発表者・研究者:木下 和也氏
(神奈川大学大学院)

わが国の近代における住宅の変遷のなかでツーバイフォー工法の導入は、明治初期の開拓使事業における第1期、明治末期に都市中間層用の住宅のモデルとして再び注目された第2期に分類することができる。こうしたツーバイフォー住宅は現存事例も散見される。本研究は、戦前期に刊行された建築関係雑誌に掲載されたツーバイフォー工法に関する記事の動向を明らかにし、わが国の住宅史上における現存するツーバイフォー住宅の位置付けを行うことを目的とする。

ツーバイフォー工法に関する記事は、1910年から1929年にかけて合計29件を抽出した。1920年と1921年に13件の記事が集中しており、この時期に特に注目されていたことが伺える。しかし、昭和以降は減少し定着するには至らなかったといえる。記事の内容は、廉価、軽便、堅牢などが特徴として挙げられ、合理性が注目されていたことが分かる。

現存事例である旧木下健平別邸の実測調査を行った。調査の結果、(1)軸組みに50×105、75×105のスタッド材を使用、(2)通し柱とせず1階と2階が構造的に分けられていることを明らかにした。以上から旧木下邸はプラットフォーム工法を採用していると推察できる。設計者はアメリカ帰りの建築家・小笹三郎が示唆されており、小笹のアメリカでの活動を調査した。小笹はオレゴン州立大学で鉱山学を専攻し、機械製図、枠組構造などで建築を学んでいたと推察できる。小笹がシアトルで手掛けた住宅は6件で3棟が現存している。小笹はアメリカで建築を学び、帰国後はその建築技術を用いて住宅設計を行っていたことが分かった。

以上、明治末期から大正期にかけてツーバイフォー住宅はその合理性から、在来住宅に替わる新しい住宅として注目された。旧木下邸はそうした当時の動きを反映した極めて貴重な遺構といえる。

報告書はこちらへPDF
[4.05MB]

ページの先頭へ

ツーバイフォー工法により建設された高経年のタウンハウスにおける「住み継ぎ」の実現に関する研究


安枝 英俊氏
▲発表者・研究者:安枝 英俊氏
(兵庫県立大学・環境人間学部
准教授)

京都市・西竹の里タウンハウス(1982年入居開始・113戸)は、ツーバイフォー工法で建設されたタウンハウスである。タウンハウス全体が外観の変更を伴う増改築を一切認めない建築協定区域となっていることに加えて、管理規約を改正し、全戸一斉での屋根・外壁の大規模修繕工事を実施することで建設当初の建物の姿を維持している。一方で、専有部分について、リフォームを実施した住戸の大部分は、住戸内の耐力壁の位置変更を伴わないリフォームを実施しているが、中には、構造上撤去すべきでない耐力壁を撤去してしまった住戸も少数存在し、管理組合が現状復帰を求めた例がある等、住戸内部のリフォームの実施にあたっては、この工法独自の制約条件による課題が発生している。

本研究では、西竹の里タウンハウスの30年間の住環境運営について、管理組合や中長期修繕委員会に対するヒアリング調査、総会議事録の分析を実施した。その結果、全戸一斉の屋根・外壁の大規模修繕工事が実現に至った合意形成のプロセスを明らかにした。また、全戸一斉の屋根・壁の大規模修繕工事が、建築協定違反となる増改築工事を実施した住戸や耐力壁を大幅に撤去した住戸に対する原状復帰を実現する契機となったことや、管理組合が専有部分のリフォームに関して何らかのマネジメントを検討する契機となったことがわかった。

さらに、専有部分のリフォームについては、全世帯を対象としたアンケート調査を通じて、設備機器の更新ニーズが高いこと、建築協定があるので思い通りにできそうにないとリフォームを諦めている住戸が多く存在することがわかった。これらの知見を管理組合と共有した上で、専有部分のマネジメントについては、リフォームに対する制約をより強化するのではなく、ツーバイフォーという工法・耐力壁の位置の正確な理解、実施可能なリフォーム例の提示、居住者による定期的な住まい診断等、住戸に対する主体的な働きかけを促す仕組みを構築するための条件整備について検討を行った。

報告書はこちらへPDF
[2.15MB]

(掲載は発表順)

第8回「坪井記念研究助成」選考結果はこちら
第9回「坪井記念研究助成」交付式はこちら

 

前のページへ

ページの先頭へ