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第9回「坪井記念研究助成」成果発表
写真:第9回坪井記念研究助成事業の成果発表会の様子

5月31日、定時社員総会に先立ち、「第9回坪井記念研究助成事業成果発表会」が開催され、平成24年度に助成の対象となった6研究課題について発表が行われました。それらの紹介と、松村選考委員による講評、及び次回の研究対象課題についてご紹介します。

 

講評

坪井記念研究助成事業は9年前、できるだけ若手に研究を奨励したいという願いから始まりました。今回もその期待に応えていただき、研究の傾向は、ツーバイフォー工法の適用範囲を広げようとする発展的な内容でした。

平野さんや毛利さんの研究は、高齢者対応というなかで、ツーバイフォー工法の性能はどうかというもの。その意味では、ツーバイフォー住宅の仕様と評価された実態との関係について、いま少しお聞きできればと思いました。

相馬さんの、釘でなくビスでどの程度性能が増すかという研究は、大規模建築で求められる基礎的な問題で、大変有益だったと思います。そもそも非住宅では接合部にどの程度の性能が必要か、このビスで性能が高まり、どんなことが建物側でできるのか、といったことを示していただければもっと参考になると思います。

平沢さんの知識表現の研究は、ツーバイフォー住宅をきちっとモデル化してコンピュータを使って三次元で表現するといった意欲的な研究で、利用価値はいろいろあると想像できます。今後、さまざまな分野の方と議論しながら研究を進めていただきたいと思います。

山口さんの研究は小学校建築が対象。緩衝空間を用いた手法は、オフィスなどのダブルスキンでも研究されていると思いますが、低層の場合の寸法や材質などの特徴を生かしたらこんなによいところがある、という点まで言及していただけたら、もっと参考になると思います。

田淵さんの、構造実験まで行ったドームの研究は大変貴重です。1960年代アメリカのバックミンスター・フラーが開発したドームハウスが現存しているので、比較されると、さらに興味深いものになると思います。

皆さんが限られた時間と予算のなかで、すばらしい成果を出していただいたことを嬉しく思っています。

松村 秀一氏   平倉  直子氏

坪井記念研究助成 選考委員
松村 秀一氏
(東京大学大学院
工学系研究科建築学専攻 教授)

  

坪井記念研究助成 選考委員
平倉 直子氏
(平倉直子建築設計事務所 主宰)

 


木質系高齢者施設内の快適性に関する調査・研究

平野 勝久氏
▲発表者・研究者:平野 勝久氏
(東京大学大学院
農学生命科学研究科)

本研究では、ツーバイフォー工法により建築された木質系高齢者施設の室内温熱環境の特徴と、それが快適性に及ぼす影響について評価をした。5つの異なる高齢者施設を対象に室内温熱環境(室温、相対湿度、放射温度、上下方向温度差、外気温に加え、温熱快適性指標(PMV)を夏と冬2回測定し、それに付随して行った居住者へのアンケート調査をもとに室内温熱環境の快適性を評価した。これと並行して、ポータブル摩擦計により各施設における居室内床面の静摩擦係数を測定し床面の滑りにくさの評価を行った。

室内の温熱環境としては、省エネ設定温度をもとに、夏の場合に居室内のエアコンを冷房28℃設定、冬の場合に暖房18℃設定とし、居室内の換気は連続運転、照明はOFF、カーテンは閉め、居住者不在の状態として各種測定を行った。結果としてPMVは、夏はおおむね快適範囲内であったが、若干暑い状態側であった。冬は若干寒いという結果が得られた。上下方向温度差は、夏は比較的小さな値であったのに対し、冬は夏よりも温度差が大きく快適性が損なわれやすい環境にあったことがわかった。

床面の滑りにくさについては、複数の異なる種類の材料に対して静摩擦係数を計測するとともに、複数の被験者に滑りにくさの評価をしてもらい、それら材料の静摩擦係数と滑りやすさの主観評価の関係を考察するという実験を行った。この実験から、測定した床の静摩擦係数が大きいほど滑りにくいということが確認されたので、静摩擦係数を測定することで床の滑りが評価可能であると考え、実際に高齢者施設の居室床面の静摩擦係数を測定した。結果として、滑りにくい床環境であるためには今回使用したポータブル摩擦計において0.6以上の静摩擦係数が必要であることがわかった。このような持ち運びできる簡易な計器で床の滑りが評価できる可能性を提案した。

共同研究者/守屋翔一氏・信田聡氏

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[1.96MB]

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ツーバイフォー工法の知識表現に関する研究

平沢 岳人氏
▲発表者・研究者:平沢 岳人氏
(千葉大学大学院
工学研究科 准教授)

ツーバイフォー工法は、我が国の木質系構造において在来軸組構法に次ぐシェアを占めているが、構法技術そのものの文書化は大きく立ち後れている。このことは、教科書等で流通する文章図版の質・量ともに、在来軸組構法のそれらに比較して僅少であることから明らかである。

本研究では、ツーバイフォー工法に関して三次元モデルを併用した知識表現を試み、具体的には、この構法による住宅建築を部品単位で精緻にモデル化することを目指した。

手順としては、ツーバイフォー工法による住宅の建築現場に継続的に赴き、基礎から構造躯体の完成まで詳細に調査したのち、ここで得た知見を数少ない既存のツーバイフォー工法の文献調査とすりあわせ、構法を体系化した。次に、ツーバイフォー工法専用プレカット企業へのインタビューと同工場の見学による知見を交え、この構法の我が国独自の変化を確認した上で、構法知識をさらに現実に即したものへと改良を試みた。さらに、得られた知識表現を関係データベースと三次元CADを連携するシステムに実装し、ツーバイフォー工法の構法知識を形式化している。これにより、ツーバイフォー工法の構法知識の形式化が達成されたといえるが、その精度の確からしさの証として、このシステムから直接的に3Dプリンタにデータを受け渡し、非常に精巧なスケール模型の出力が得られることを示した。

また、副次的な成果として、本研究の過程で得られた図版のいくつかを建築構法の教科書向けに提供した。現代のツーバイフォー工法に関する技術情報を教育の場に提供することができた。

ツーバイフォー工法は戸建住宅の他にも適用範囲を広げており、また、プレカットによる生産方式の合理化も進んでいる。これらの傾向を汲み取ったうえで、本研究で構築した知識ベースを拡張・拡充する方向で研究を継続中である。

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ツーバイフォー地域密着型特別養護老人ホームにおける入居者の心身への影響および木材利用の継続性に関する調査研究

毛利 志保氏
▲発表者・研究者:毛利 志保氏
(三重大学大学院
工学研究科建築学専攻 助教)

近年の高齢者施設は、生活の場としての質の向上が求められるとともに、国産材の利用が推奨されていることから、構造や内装の木質化が提案されている。木材の機能的側面は既に効果が示されているところであるが、導入時の費用や継続使用時の管理状況は未だ明らかにされておらず、入居者や介護職員の行動に与える影響についても実証されていない。

そこで本研究では、構造、内装材、規模の異なる高齢者施設を対象とし、木質系内装材の適切な維持管理のあり方およびそれらが入居者に与える影響について、総合的に検討した。

経年変化から木質系内装材の維持管理状況をみると、塗装による差異が見られた。ウレタン塗装は非木質である塩ビシートと似た傾向を示し、色差の拡大や光沢度の低下とともに傷みが大きくなる傾向がみられた。一方、オイル塗装では、色差は拡大するも艶感が増し、総体的に傷みによる欠点を補完していた。また、履物や日常的なメンテナンスが劣化を抑制することがわかったが、維持管理費用については、築年数の浅い施設が多いため、今後更なる検討が必要である。

入居者の姿勢や職員の動きの把握から木質系内装材の有無が与える影響を見ると、入居者の姿勢は床材が規定するであろう履物の影響を受けていた。また、木質系床材を使用した施設間においても、畳との併用施設では、仰向けや靴下での歩行など、単独使用施設に比べ、より家庭に近い姿勢がとられていた。

介護職員の動きは床材が規定する履物に加え、職員の意識に起因することが推察された。移動速度はRC造木質床材の施設で最も遅く、木造施設で最速であった。運営者によれば教育的側面が大きいとのことだが、木質の床材を傷つけまいと職員が丁寧に振舞った結果であると推察されその結果、穏やかな施設環境が形成されることにより、入居者の心身にも影響を与えることが示唆された。

共同研究者/藤平眞紀子氏・村田順子氏

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ビスを用いた木材のめり込み補剛に関する研究


相馬 智明氏
▲発表者・研究者:相馬 智明氏
(東京大学大学院
農学生命科学研究科 助教)

枠組壁工法により、設計荷重の大きな建物や階高が高い建物の場合に高倍率耐力壁が必要であり、そのせん断剛性を有効に発揮させるために壁端の柱脚柱頭で生ずる大きな軸力に耐える仕様設計が必要である。本研究では枠組壁工法で用いられる下枠の面圧剛性および降伏耐力に注目し、それらを機械的に向上させる方法を検討した。試験体は、土台(ベイマツ)、床厚物合板(ヒノキ、t=24mm)、下枠の順に重ねて置き、その上に長さ150mmの縦枠を立てて作製した。下枠と縦枠の材料には、SPFとスギを用いた。一般に下枠と縦枠を止めつけるために2-CN90が使われるが、これをビスに代替して下枠の下面から2本打ち込み接合した。用いたビスは既存の3種類と開発中の2種類で、頭径、ねじ長さ、円筒部長さ、胴径、呼び径、ピッチの異なるものとした。これらの試験体の縦枠上部にクロスヘッドをあて、圧縮試験を行った。

荷重変位曲線から剛性および降伏耐力を算定したところ、以下の結果が得られた。

(1)SPF、スギともに、CN90の2本で止めた場合、剛性と降伏耐力は接合具を用いないコントロールと比較してわずかに上昇した。これは縦枠が下枠を圧縮するのと同時に、CN90の胴部に生じた摩擦力により、CN90の釘頭が厚物合板の上面を圧縮していたためである。

(2)ビスについては同様の摩擦力とともに、ビスの引掛かりによって幾何学的に生じた圧縮軸力によって釘頭が押され、結果的に面圧面積が増加し剛性と降伏耐力が向上した。

(3)杭状に斜めビスを打った試験体では、降伏耐力および剛性の向上が認められたが、CN90と併用した割には大きな効果が認められなかった。結果として、CN90に代替してそれと同程度の長さのビスを打つ方法が簡便であり、開発中の試作ビスでは同方法によってCN90と比較して剛性で1.15倍、降伏耐力で1.55倍程度向上し、また試験体間のばらつきが小さくなる傾向が認められた。

共同研究者/稲山正弘氏・安藤直人氏

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ツーバイフォー工法を用いた小学校建築における環境調整技術の有効性に関する研究

山口 温氏
▲発表者・研究者:山口 温氏
(関東学院大学建築・環境学部
建築・環境学科 専任講師)

本研究は、小学校建築を対象にツーバイフォー工法に環境調整技術を組込むことによる環境負荷低減の有効性について検証し、エコスクールの理念を具現化する環境デザインの標準システムを提案することを目的としている。これまでの研究結果をふまえ、木造3階建て校舎の規制緩和を想定して標準システムのモデルプランでは、木造3階建て校舎に必要な構造強度を保つために外壁側に並列する二重構造壁を設けた。本助成では、この緩衝空間設置による環境性能検証のため、実大実験棟を使って冬期の実験室内の熱環境および光環境について実測した。

実験棟建物は、通常1階は事務室、2階は会議室として使われており、2階部分に普通教室と同等の実験室を設けた。緩衝空間の外壁は構造上壁が必要な部分以外は開閉可能なガラス面とした。内部は1階、2階部分を吹抜けにして、高窓の位置下面に空気の上昇を妨げないように開口率25%のアルミパンチングメタルによるライトシェルフを水平に配置した。実験室は15cmの二重床で床下に給気ファンを設置して、冬期は緩衝空間最上部の空気をダクトから床下に送り、教室内の窓面以外3面周縁部から吹出す方式とした。

晴天日日中の実験室床面の表面温度は、二重床上面は18℃、通常の床面は11℃程度、床吹出し口付近は23℃を超える。床下への送風によって周壁温度にも影響を与えている。また、室内窓近傍のPMV(Predicted Mean Vote)をみると、ファンを終日運転しない場合もPMVが高く、コールドドラフトの抑制効果がみられた。小学校の利用時間帯が概ね8〜15時であるので、給気ファンは下校後に停止すると夜間の温度低下が抑えられる。

以上の結果から、緩衝空間設置による環境性能の向上が確認できた。また、本モデルプランは、新築だけでなく既存校舎の耐震改修にも有効に対応できると考えられる。

共同研究者/村越正明氏・木村信之氏

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現しを考慮した新たな枠組壁工法の開発


田淵 敦士氏
▲発表者・研究者:田淵 敦士氏
(京都府立大学大学院
生命環境科学研究科
環境科学専攻 准教授)

枠組壁工法の起源は19世紀の初め頃、開拓者たちの住居の建設だとされている。その後、技術革新を繰り返しながら、断面寸法が規格化された木材を組み合わせて、合理的な建築手法として発展してきた。その基本的な構造ユニットは大壁形式の枠組を組み合わせることであるのだが、一方で木造建築の魅力の一つに軸材が見えるということがある。

本研究では、東日本大震災で被災したコミュニティ復興の一助として枠組壁工法を用いた集会施設を設計することを通じて、軸材の現しを考慮した枠組壁工法の開発を目指した研究を行った。

外観は切頂二十面体をドーム形状にした建物とし、六角形と五角形の組み合わせで成り立っている。ここで、六角形を構造要素としてパネル化し、五角形を開口とする設計を検討した。今回の建物はセルフビルドを目指し、施工の簡便性も検討の対象とした。そのため、一般的に用いられるCN釘ではなく、ビスを用いたパネルを作製し、パネルのせん断強度に関する実験を行った。実験装置の制約で、一辺を2150mmのパネルを縮小し、520mmのものを用いた。実験の変数としたのは、枠材の固定方法(CN釘またはビス)と構造用合板固定ピッチ(100mmと150mm)である。なお、枠材をCN釘で固定したものは、構造用合板もCN釘で留めつけ、枠材をビスで固定したものは、構造用合板もビスを用いて留め付けた。この4種類の試験体を各3体ずつ正負交番繰り返し載荷試験に供した。各仕様の性能は、壁倍率の算定方法に準拠し、短期基準せん断耐力Poを用いて評価した。その結果、CN釘の合板留め付けピッチ100mmのものが最も強く、次いでビス留めタイプ、CN釘の合板留め付けピッチ150mmのものとなった。

今後の課題は、温熱環境への対応と、パネルを構造モデルとして設計することである。

共同研究者/宗本晋作氏・萬田隆氏

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(掲載は発表順)

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