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協会活動報告
第10回「坪井記念研究助成」成果発表
写真:第10回坪井記念研究助成事業の成果発表会の様子

6月20日、定時社員総会に先立ち、今回で最後となる「第10回坪井記念研究助成成果発表会」が開催され、選考委員でもある松村秀一氏の特別講演と、平成25年度の助成の対象となった4研究課題についての発表が行われました。成果発表の講評と合わせてご紹介します。

 

講評

● 最後にあたって、10年間の総評を

今回は、坪井記念研究助成の最後の講評となりますので、全10回を通した総評的なお話をしたいと思います。まず、今日の4人の発表者の方々は、まさに今の時代をとらえたテーマを研究され、選考委員が期待していた以上の成果を上げられたと評価いたします。

長い間、研究助成事業を継続された日本ツーバイフォー建築協会さんへの敬意を表して申し上げたいのは、建築関係の研究者にとって、業界団体から100万円の研究費をいただけるのは大変ありがたいということ。もちろん分野や内容により異なりますが、多くの場合は年間に100万円あれば新しいテーマを立ち上げて実行していける、そういう額なのです。研究助成の対象者に選ばれた方々も同じような気持ちではないかと思います。

● 研究者育成にも貢献

総数48に上る研究課題の対象者は、全国の大学、研究機関に所属される方などさまざまで、歴史を研究された方も何人かいましたし、純粋にデザインをされる立場の方が提案的な研究をされるケースもありました。今回の発表にもあった建物の構造に関わる研究や、部材・材料・接合部など構造的な知見を得ようとするもの、環境工学に関わるもの、最近のIT技術と生産を結びつける研究、あるいは市場、ツーバイフォー住宅の企業の業態に関わる研究などもあり、多岐にわたる課題に取り組むことができたのも、坪井記念研究助成事業があったからこそだと思います。そして、それにより多くの研究者が育ったということに対してもお礼を申し上げたいと思います。

● 助成に代わる新たな仕組みづくりを

現在、ツーバイフォー住宅の着工戸数は伸び続けているとのこと。右肩上がりの工法というのは非常に少ないのですが、ツーバイフォー工法の汎用性の高さ、さらに、この40年間、協会さん中心で日本独自の仕様をつくりあげ、しかもそれは誰でも使えるオープンな技術として存在しているというバックグラウンドをもっているからだと理解しています。そういう意味からも、まだまだ発展していく工法ですから、今後は、助成とは違うかたちで、ツーバイフォーに関連する磨かれた技術をより多くの人に効果的に利用される仕組みを、新たにつくっていただければありがたいです。

松村 秀一氏

前列は左より、平倉直子選考委員(平倉直子建築設計事務所主宰)、発表者4名、松村秀一選考委員
後列は協会会長、副会長、専務理事

 

第10回 坪井記念研究助成成果発表会 特別講演

 

縮小する住宅市場における技術変化に関する研究 ─軸組工法からツーバイフォー工法への転向について─


佐藤 考一氏
▲発表者・研究者:佐藤 考一氏
(建築環境ワークス協同組合)

本研究の目的は、ツーバイフォー住宅への新規参入実態を分析し、縮小する住宅市場におけるツーバイフォー住宅の可能性を考察することにある。過去7年間(2007年度〜2013年度)の日本ツーバイフォー建築協会新入会員に対するアンケート調査などに基づき、近年のツーバイフォー住宅の供給傾向について次の4つの知見を得た。

①近年のツーバイフォー戸建住宅に注目すると、会員供給と会員外供給が同程度になっている。
②日本ツーバイフォー建築協会への入会はビルダー規模(年間供給数20〜300戸)が減少している。
③2000年以降のツーバイフォー住宅への参入に不動産等兼業はほとんど見られない。
④1990年代までは業務領域の拡大・転換を目指す新規事業としてツーバイフォー住宅が始められていたが、2000年以降はツーバイフォーの業務経験者による起業・独立が中心になっている。

今回の調査結果によれば、軸組工法や非木造からの転向は2000年代に目立つ現象とはいえない。むしろ既存の建設業者によるツーバイフォー住宅への新規参入の盛期は1980年代から1990年代にかけてであり、1990年代中頃の輸入住宅促進策がその掉尾を飾ったと考えられる。

回答者のなかのツーバイフォー住宅新規参入者に着目すると、その4割ほどはツーバイフォー住宅供給が「増加傾向」にある。これらの回答を「横ばい・減少傾向」の回答と比較することによって、次のような傾向が確認された。

①ツーバイフォー住宅が増加傾向の新規参入者には注文住宅を重視する姿勢は見られない。
②増加傾向の会社の設立時期は1960年代以前が目立つ。一方、横ばい・減少傾向の会社の設立時期は1990年代が目立ち、会社所在地は中部地方が目立つ。

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枠組壁工法を用いた平面混構造の構造設計法に関する研究


山崎 義弘氏
▲発表者・研究者:山崎 義弘氏
(東京工業大学建築学専攻)

2010年に制定された公共建築物等木材利用促進法により、将来的に大規模木質構造の建設が活発になることが予想される。低層で平面的に大きな構造物を木造で実現しようとすると、建築計画上の理由や防火の面から、建物の一部にRC造のコアを設けた平面混構造の採用が考えられる。本研究では、木造の中で比較的大きな構造の実績が多い枠組壁工法を対象に、平面混構造の構造設計を難しくしている課題に対する解決策を提案した。

平面混構造は、木造とRC造のように重量や剛性が異なる構造が平面的に共存した特殊な構造であるため、まずは平面混構造のプロトタイプを対象に、その振動解析モデルを作成し、固有値解析を実施した。その結果、木造部分の応答が卓越する振動モードと、RC造部分の応答が卓越する振動モードが明確に分離でき、それぞれのモードがベースシア、部材応力におよぼす寄与率が大きく異なることを明らかにした。すなわち、従来の構造では、最も卓越する振動モード(通常は1次モード)のみを考慮して、ベースシアおよび部材応力を算定していたが、平面混構造では、ベースシア計算時は両モードを、部材応力計算時は該当部分(木造部分あるいはRC造部分)の卓越モードのみ考慮すればよく、従来の構造設計とは異なる考え方が必要となる。

また、手計算レベルの設計を可能にすることを目的に、平面混構造を簡易解析モデルに置換する方法を提案した。枠組壁工法における耐力壁配置を勘案し、構造全体を連続体モデルで表すことにし、それにより、①設計用1次固有周期、②木造部分に作用させる地震力、③木造部分とコア部分の接合部におけるモーメントの評価、が合理的に行えるようになった。

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五軸加工機によるプレカット生産を前提としたツーバイフォー工法のBIMシステムに関する研究


平沢 岳人氏
▲発表者・研究者:平沢 岳人氏
(千葉大学大学院工学研究科)

現代のツーバイフォー工法は積極的にCAD/CAMシステムを取り入れ、このシステムへの入力データを整える生産設計プロセスが重要になっている。このプロセスでは図面によって部材レベルでの情報伝達がおこなわれており、プレカット工場においても図面から作成したデータを入力として、五軸加工機などの数値制御工作機を操作して規格材から部材を切り出している。これらのシステムでは二次元図面での情報伝達が主となっており、三次元表現やそれらによる視覚的なシミュレーションといった機能を持たないという点でBIMの理想を満たしていない。

本研究では、現在のツーバイフォー工法の生産方式を踏まえ、部品の加工法や部位の構成法を汎用言語であるC/C++により記述し、部品データを関係データベースで運用することで、BIMを実現するシステムを検討した。また、本システムの活用例として仮想の五軸加工機を用いた規格材の加工シミュレーションもおこなった。ここでは、紙面の制約により梗概では詳述できなかった五軸の加工機に関係して検証した部分について補足する。

最終的な部材の形状の生成についてふたつのルートを用意した。ひとつは、製材のカット位置などの部材の加工情報を計算機内部で幾何学的な演算によりすべて処理して形状を生成する方法であり、もう一方は五軸加工機の5つのモーターのパラメーターをいったん生成し、このパラメーターで五軸加工機シミュレーターを動作させ、出力として形状を生成する方法である。結論としては、どちらのルートを経ても等しい形状が得られた。

昨年度の報告で三次元プリンターよる精緻なスケール模型により前者の方法によるデータの正しさを証明した。今回のシミュレーターによる方法でも同等の出力が得られたことから、五軸加工機のオペレーションまで含めた統合BIMシステムの構築可能性を示せた。

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ツーバイ材を用いたルーバー状耐力要素の開発研究


相馬 智明氏
▲発表者・研究者:相馬 智明氏
(東京大学大学院
農学生命科学研究科)

軸組構法では真壁にすることにより構造躯体を意匠的デザインに含むことが可能であるが、枠組壁工法では枠組材に面材を張ることで耐力要素が構成される大壁式であるため、その仕組み上、躯体を現しにすることができず、採光や通風も期待できない。そこで本研究では、ツーバイ材を用いたルーバー状耐力要素を開発し躯体そのものを構造デザインとすることができ、耐力要素でありながら採光、通風機能を有するような技術を提案することを目的とした。間仕切壁や欄間のような壁として利用すれば、空間を広く見せることができ、部分的に家具としても利用可能である。

ルーバー状耐力要素は、枠組材を直交する横架材のあらかじめ設けておいた切り欠きに埋込み、その埋込まれた部分のモーメント抵抗によって要素全体にかかるせん断力に抵抗する仕組みであり、並列にならぶ枠組材の数に比例して、要素全体の剛性と降伏耐力が向上するものである。本研究では接合部試験と要素全体のせん断試験を行い、接合部試験によって得られた剛性、降伏耐力等の特性値から要素全体のせん断性能を推定することを試みた。

接合部実験では横架材に120X150mm角のヒノキを用い、枠組材としてヒノキ、SPF、スギの206断面の材料を85mmほど埋め込んでモーメント試験を行った。回転剛性Kθはヒノキ、SPF、スギでそれぞれ57.0、27.2、34.4kN/radであった。これらは掘立柱モデルによる計算値よりも小さい結果であったが、これには切欠き加工の精度が影響しており、初期ガタやすべりが顕著に反映されてしまったためと考えられる。接合部実験から得られた特性値を使い要素全体のせん断性能を予測したところ、実際のせん断試験から得られた結果によく一致した。

共同研究者/稲山 正弘氏

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(掲載は発表順)

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