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防犯住宅最前線
防犯住宅が必要とされる理由

グラフ
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警察庁の統計によれば、2001年における一般住宅を対象とした侵入盗は16万1833件を数える。これは前年度比およそ5%の増加である。一方、検挙率はわずか28・3%。70年代以降初めて検挙率が50%を切った2000年をさらに下回り、7割を超える侵入盗犯罪が未解決ということになる。

犯罪件数の増加に反比例して検挙率は低下しているというのが近年の傾向である。急増化する犯罪に対応しきれないというのが実情なのだろう。 侵入盗のなかで、最近になってとりわけ目立っているのが、ピッキングを用いた手口である。周知の通り、ピッキングは、簡単な道具を用いて、ほんの数秒から数十秒で鍵を開ける方法だ。警視庁管内の2000年のピッキング犯罪の件数は1万1089件。1996年にかけての件数が110件だから、ほんの5年の間に、実に100倍に増えている計算になる。

このような侵入盗の増加傾向は、当然ながら、防犯に対する市民の意識を高めることになる。(財)住宅金融普及協会が2001年末に発表した「住宅需要動向調査」によれば、戸建て持ち家世帯の71・9%が現在の住居に満足していると答えているにもかかわらず、自宅の防犯設備に関しては、56・1%と、半数を超える世帯が不満を抱いているという結果になっている。

防犯住宅の指針と商品化の動き

日々増加している侵入盗への対策として、国土交通省は、2001年3月、「共同住宅の防犯上の留意事項」および「防犯に配慮した共同住宅の設計指針」を発表した。これらは、「ピッキング用具を使用した共同住宅への侵入盗の急増等の最近の状況を踏まえ、国土交通省住宅局と警察庁との間で犯罪防止に配慮した構造、設備を有する共同住宅の在り方等について継続的に検討」し、策定されたもの。

「共同住宅の防犯上の留意事項」では、共用エリア10項目(出入口、管理人室、郵便受け、エレベーターホール、エレベーター、廊下・階段、自転車・オートバイ置場、駐車場、歩道や車道などの通路、児童遊園や緑地)と、専用エリア4項目(玄関扉、インターホン、窓、バルコニー)について、設計や構造、照度などの防犯上の注意点を指摘している。

一方、「防犯に配慮した共同住宅の設計指針」においては、「防犯性は、住宅の安全性を確保する上で重要な要素である。特に最近は、犯罪の増加や居住者の関心の高まり等から、その重要性が高まっており、共同住宅の企画・計画・設計に当たっては防犯性の向上に十分配慮する必要がある」、あるいは「防犯性の向上に当たっては、居住者の防犯意識の向上とともに、住宅に必要な他の性能や経済性等とのバランスに配慮しながら、建築上の対応や設備の活用等により、効率的で効果的な対策となるように企画・計画・設計を行うことが必要である」と、さらに踏み込んで、住宅防犯の方向性を示しながら、新築住宅、既存住宅の両者における防犯対策を詳細に記している。

いずれも、法的な拘束力をもつものではないが、このようなかたちで国が防犯住宅に関するガイドラインを定めたのは初めてのことであり、今後、集合住宅の防犯対策の一つの指標となるのは間違いないだろう。また、このような防犯指針の発表は、それだけ侵入盗の被害が深刻化していることの表れとも言える。

一方、住宅メーカーも、ユーザーの防犯意識の高まりに対応して、防犯住宅、防犯設備の商品化を進めている。

積水化学工業は、ペアガラスやディンプルキーなど、8種類の防犯設備を「S&Sパッケージ」として提供。大和ハウスは、玄関錠の遠隔操作が可能な「電気錠システム」や、テレビドアホンを備えた鉄骨住宅「ソフィスリー」を2月から発売した。ナショナル住宅産業がセコムと提携して開発した「セキュリオ」も高い防犯性を備えた住宅である。

防犯性の高い住宅とは

国交省が発表した指針は、集合住宅に限ったものであり、戸建住宅の防犯に関しては、未だ公の指針といったものは存在しない。しかしそれについては、多くの専門家が指南しているところである。大要をまとめると、ほぼ以下のようになる。

(1) 塀と庭
  一般住宅では、塀によって侵入を完全に遮断することは難しい。したがって、侵入された際のことを考えて、周囲からの視界をよくしておくほうが、むしろ防犯効果が高い。それほど高くなく、途中から格子状になっている塀であれば、外部からの死角が生じにくくなる。また同じ理由で、庭も見通しがよく死角の少ない構造が防犯上好ましい。鬱蒼とした木立や、一階の窓を完全に外部から封鎖してしまうような植木は、侵入犯に格好の作業場を与えることになる。
(2) 窓とベランダ
  窓の周囲に足場となるものを置いていないこと。もし置いている場合は、窓に面格子が設置してあること。ただし、ネジで外付けをするタイプの格子は簡単に外されてしまうので、ネジの頭をつぶすなどの工夫が必要になる。ベランダについても、考え方は塀と同じ。腰壁は格子状のもののほうが好ましいと言える。
(3) 門と玄関
  錠前付きの門扉を設置してあること。ただし、それで物理的に侵入を防ぐことができるわけではなく、犯罪者に侵入を諦めさせる心理的効果を狙うための一つの方法と捉えるべきである。同様に、門および玄関に外灯や防犯カメラが設置されていることも、防犯上効果がある。  以上はすべて、犯罪者から狙われにくい住居の条件だが、一度狙われた場合には、犯罪者が侵入を諦めるような設備を備えている必要がある。最も重要なのは、玄関の鍵である。近年、防犯性の高さが評価されているのが、ロータリーディスクシリンダーやピンシリンダーといった鍵だ。いずれも、現在のところはピッキングによる開錠が極めて難しいとされているものである。
また、人通りの多い道に接している、夜間でも周囲が比較的明るい、交番に近い、といった環境的な要因も犯罪防止には重要である。

今後は、耐震性、耐久性、意匠性といった要素と同じレベルで、「防犯性」が住宅評価の一つの基準となりそうだ。

(2002年3月)


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