
独立行政法人建築研究所 建築生産グループ 上席研究員 中島 史郎
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2009年2月1日から2月6日にかけてカナダのバンクーバー市、ニューウェストミンスター市、リッチモンド市に建つ築約100年の枠組壁工法建物について、「なぜ長く使われているのか」「なぜ長く使えるのか」という疑問に対する答えを求めて調査を行った。
調査では、建物の外観や内部を目視観察するとともに、建物の所有者や管理者に、建物の利用履歴、改修工事の履歴などについてヒヤリングした。以下、本調査により得られた知見について概説する。
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調査した建物は前述の3市内に建つ1900年前後に建てられた枠組壁工法住宅約12棟であった。以下に調査を行った建物をいくつか抜粋して示す(写真A〜I)。
調査の制約上、外観観察のみの建物と内部まで調査した建物があった。写真キャプションの括弧内が各々の調査の方法である。
調査を行った建物の建築年は、不明のものもあったが、1865年(写真A)から1908年(写真G)の範囲にあり、いずれも築100年以上の建物であった。建物の用途は、博物館、半公共的な施設、ペンション、住宅などさまざまであった。建築当初の用途はいずれの建物も住宅であったはずであるので、時代の流れの中で需要にあった用途変更が行われていることになる。
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A. Irving House 建築年:1865年 |
建築年:1890年 |
![]() C. The Diamond Centre for Living 建築年:1886年 |
建築年:1904年 |
建築年:1906年 |
F. London Farm House 建築年:1888年 |
G. 734-742 Jackson Ave. 建築年:1908年 |
H. 改装中の建物 建築年:不明 |
I. 改装中の建物 建築年:不明 |
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以下、内部調査までを行った建物を2棟抜粋し、その概況について記述する。


1890年に住宅として建てられた建物であるが、現在は高齢者のための福祉施設として利用されている。外部、内部ともに定期的に補修が行われており、最近の補修履歴は、映画撮影のための室内リフォーム(2004年)、外壁ペンキの塗り替え(2005年)、屋内のペンキ塗り替え(2008年)である。本年(2009年)はオリンピック関連の予算が幾分あり、建物の改修に使えるとのことで、バルコニー階段部分と屋根葺き材の改修を行う予定と聞く。
同建物は、施設を運営する団体とバンクーバー市と市の公園局とが共同で管理している。建物の保守のための費用は、主として市からの補助金と寄付金から賄っている。
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|---|---|---|
▲建物内部 |
▲バルコニー |
▲1階廊下 |


この建物は1906年に建てられた住宅であり1964年まで同じ家族により居住された。1964年から1984年まで新しいオーナーが住宅として住み、その後、現在のオーナーが建物を買い取り、ベッド&ブレイクファストに改修した。彼らはビクトリア調の建物に魅了され、バンクーバーを訪れる観光客にこの歴史的な建物を体験してもらおうと、ベッド&ブレイクファストを始めたということである。
外壁は2008年に塗り直しをしている。一般に外壁のペンキは10年おきに塗り替えている。2009年には、現在1階にある洗濯室を地下に移動し、地下にある事務所と浴室を1階に移動する計画がある。このようにルーチン的に改修工事が行われている。
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|---|---|---|
▲建物内部 |
▲窓(最新ものに更新されている) |
▲バスルーム |
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調査により感じられたことをまとめると以下のようになる。
(1)カナダに建つ木造住宅のほとんどが枠組壁工法である。枠組壁工法は百数十年前から北米の標準的な工法であり、部材の断面寸法、使用材料などが昔と今では多少変化してきているものの、基本的なコンセプトは現在も100年前も同じである。このことは、一般的な技術をもった現代の大工でも、100年前に建った躯体の改修工事が行えることを意味する。本調査の結果から、木造住宅を長く使うためには、万が一、躯体が劣化した場合でも、劣化した部分の交換が誰にでも行える標準的な工法を用いていることが重要との印象を得た。
(2)カナダの木造住宅の外壁材には今でも木製サイディングが使われており、ペンキ塗装仕上げとなっている。また、屋根材はウッドシングルが主流である。この2つの材料は、100年前から使い続けられている材料である。近年、メンテナンスや交換の間隔をできるだけ長くするために、耐久性のより高い材料を選ぶ傾向があるが、むしろ素性がわかっている汎用性のある材料を選択するほうが結果的には建物は長く使えるのではないかという印象を受けた。どこにでもある、誰でも使える材料を使い、経験的に知られている材料の使用限界がきた時点で遅滞なく交換するほうが、長い目で見ると建物の長寿命化につながるのでないかという印象を得た。
(3)調査したペンションや老人福祉施設などの建物については、建物内部が徹底的に現代風に改修されていた。また、居住性を高めるために必要な改修工事が多く施されていた。このため建物の内部は、新築の住宅の内部とほとんど変わらない状態にあった。建物の内部については、汚さ、古さ、居心地の悪さを感じさせないように徹底的に改修を行うことが重要であるという印象を得た。
(4)築100年以上の住宅を購入し、居住している理由のほとんどは、@街並みが気に入ったA街並みを壊したくないので、古い家を壊さずに使い続けている、というものであった。住宅の長寿命化は建物単体に対する対策だけでは実現できないという印象を得た。住み続けたい「まち」があるからこそ、住み続けたい家が生まれる。バンクーバーは世界で最も住みたい都市の一つに選ばれている。街の中心部にも美しい古い住宅街が残されており、高層ビルの谷間で心地良い空間をつくっている。
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枠組壁工法住宅を200年使い続けることは必ずしも不可能なことではないと思われる。次の4つのルールを守れば、あるいは実現できるのではないであろうか。
ルール1:汎用性のある材料を使って、汎用性のある工法で建物を建てる。
ルール2:建物の外装は定期的にメンテナンスし、交換する。
ルール3:建物の内部は時代時代の変化に応じて、最新のものに更新する。
ルール4:長く住み続けたいと思えるまちづくりをする。
最後に、本調査により得られた情報が、我が国における枠組壁工法住宅のみならず、木造住宅の長期使用を検討する際に資料として役立てば幸甚である。
(社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」のVol.179 2009年5月号からの転載記事です。
(2009年5月1日掲載)







