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住まいのコラム
住宅供給者として、あらためて防災意識を問う

「国民の生命、健康、財産の保護を図る」業務

総合的な地震防災力は、「被害抑止力」「被害軽減・災害対応力」「最適復旧・復興」の3つをバランスよく講ずることで実現しますが、このなかで一番大切なのは、「被害抑止力」です。わが国の現在の状況を対象にすれば、これは、既存不適格建物の耐震補強であり、またそれを推進するための、われわれ国民一人ひとりの『災害イマジネーション能力』です。

国民全体の意識はもとより、私には、行政や住宅供給者でさえ、耐震改修に積極的でないように見えます。また高い災害イマジネーション能力をもった人間が、住宅供給はもちろん、地域や住宅行政にかかわることで、おのずと市民の防災意識の高まりに寄与するのではないでしょうか。新築住宅を手がけるビルダーにおいても、災害イマジネーション能力を高め、業務に反映させてもらいたいと強く期待します。建築基準法第一条、法の目的(*)を繙いてください。あらためて立ち返るべき使命ではないでしょうか。

災害をイマジネーションする訓練を

私が提唱する「災害状況イマジネーション支援システム」(=目黒メソッド)は、「災害発生時からの時間経過のなかで、自分の周辺で何が起きるかを具体的にイメージできる人をいかに増やすか」に主眼があります。地震被害をイメージするため、表(表1)を利用し、縦軸には典型的な1日(24時間)の時間帯別の詳細な行動パターンを記載する。横軸には地震発後からの経過時間をとります。家族構成、時間帯別の家族の居場所、自分の家や職場、学校の建物の耐震性や周辺の状況、通勤手段や交通機関が使えなくなった場合の徒歩での所要時間などをまず考えてもらいます。
  災害状況をイメージするための表


目黒メソッドの作業内容

そしていよいよ季節、曜日、天候、そのときにいる場所に応じて、自らのおかれるであろう状況をイメージしてもらいます。すなわち、各行動パターンの時間帯に、兵庫県南部地震のような揺れを伴う地震が襲ったと仮定して、自分の周辺で起こると考えられる事柄を一つひとつ書き出してもらうのです(表2)。ほとんどの人たちは、全くといっていいほど、具体的な災害状況をイメージできません。この災害イマジネーション能力の低さが、地震が発生するまでの時間を有効利用した対策の実現を、はばんでいるのです。

一人ひとり異なる生活環境のなか、それぞれの災害状況イメージから具体策の構築を行うことを常に繰り返すこと(図1)が、個人の、そして地域や組織の防災能力を高めることにつながるのではないでしょうか。もちろん、こういった意識ある、志の高いビルダーが、住宅供給に活かしていくことはもとより、地域の防災教育の要になることを願っています。



目黒メソッドにおける総合的防災力の向上
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ストック化の潮流と住宅供給側の役割

わが国が少子高齢化等に直面する社会状況の変化のなか、社会ストックとしての住宅を維持・管理するために何が重要かといえば、1.よい場所を選んで、2.よいものを作り、3.よくメンテナンスして、4.長く使うこと、にほかなりません。よい場所とは、地震・洪水・土砂災害などからより安全な場所という意味で、この選択には情報開示が必須です。洪水リスクなどについては誰でもが触れられる環境は用意されつつあり、地震についても同様にしていくべきです。かつての日本の住宅施策では、都市部への人口集中を背景に、「産めよ増やせよ」的に埋め立てや山林の開発で住宅地を広げてきました。結果として、地盤の悪い住宅地が増大したのです。

少子高齢化社会に向けて私たちがやるべきことは、悪いところをいかに切り捨てるかの戦略をもつことです。住宅を供給する側もこの点を認識し、売買時には土地と建物に対する地震のリスクを重要事項説明のなかに入れていくべきだと思います。こうすることで質の悪い物件が自然と淘汰されるだけでなく、開示された情報によって、自分自身で災害への対策をとれる人が出てくるのです。

よい住宅の選択肢にツーバイフォー

2.のよいものとは、メンテナンスによって長く住める住宅。日本人は収入の割に生活の豊かさを感じないといわれますが、これは、約26〜27年という現在の日本の住宅寿命と大きく関係しています。同じ木造(ツーバイフォー)が中心の米国の住宅寿命は44年といわれ、100年超の住宅も少なくありません。日本では、一度家を建てると一生そこに住み続けることが多いですが、米国では転職や収入の違いで家を住み替えていきます。このようなスタイルにすると、家具などは住宅側の設備になります。一軒の家を長く使うので、一人ひとりの住宅費は低く抑えることができます。

また日常から住まいの手入れに気をつかい、買った家が、次に売るときに高く評価されるよう、よい状態を保つ努力をするのです。結果として、よい住宅が長く使われ、スムーズに流通する仕組みになっています。もちろん、よい住宅地によい家という場合の選択肢の一つに、北米で100年超という実績のある、ツーバイフォー工法もあげられると思います。

ツーバイフォーで日本型リサイクル住宅モデルをつくる

ちなみに現在、田園都市線の多摩プラーザや小田急線の新百合ヶ丘周辺など20〜25年前の首都圏のニュータウンで、日本でも珍しいリサイクル住宅モデルが登場しつつあります。富裕層を対象とした住宅地で、区画も大きく、建物も頑丈。40代くらいで住宅を購入した人たちが、老後を迎え、利便性などから都心のマンションへ移り住む人も出てきました。その頃のモダンなライフスタイルと現在とはそんなに変わっていないので、数百万でリフォームして、高級住宅として中古市場に流通しています。

ツーバイフォー工法は、ビルダー自身が性能のよい住宅を提供しているという自負があると思います。そうであるとすればなおさら、住宅ストックとまちづくりの一翼を担っている誇りと責任感をもって仕事に取り組んでいただきたい。地域づくりための思想的なリーダーになれば、ツーバイフォー工法とそのビルダーは尊敬を集め、さらに輝いていけるのではないでしょうか。
家具のレイアウトの違いによる挙動比較
*「この法律は(中略)国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」とある。


(2004年11月)


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