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ホーム住まいのコラム>インタビュー:『ツーバイフォーに暮らして』

ツーバイフォー住宅に暮らして

石川哲氏
石川 哲 (いしかわ さとし)氏
北里大学名誉教授。北里研究所顧問。本年3月まで厚生労働省のシックハウス研究班班長を務められる。


石川哲・北里大学名誉教授は、長年、日・米で化学物質の低用量曝露による過敏性反応の研究を続けてこられた化学物質過敏症研究の世界的権威。日本で初めて、米国アカデミー環境医学のノーベル賞ともいわれる「ジョナサンフォアマン賞」を受賞されています。近年は、厚生労働省の「微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究」の主任研究員を2期6年にわたり務められ、住まいがそこに暮らす人の健康に大きな影響を与えることを熟知しておられる石川教授。その環境医学の専門家がご自身の終の棲家として選ばれたのはツーバイフォー住宅でした。新しいお住まいに暮らして6年。改めて家づくりの経緯や住み心地についてお話を伺いました。

20年前に知ったツーバイフォーのすばらしさ

私が「ツーバイフォー」という言葉を耳にしたのは、約20年前。米国留学中に知り合った米国人の家を訪問したときのことです。そこで、彼を通して初めてツーバイフォー建築なるものの存在を知りました。ニュージャージーの閑静な住宅地に建つ彼のツーバイフォー住宅は、実に快適で落ち着いた雰囲気に満ちていました。
彼は建築にはまったく素人でしたが、定年を迎えて暇ができ、家族とのコンタクトも増え、家づくりに興味をもつようになり、本を調べていくうちにツーバイフォーの魅力に出合ったと言います。ツーバイフォーに惚れ込んだ彼は、建物の堅牢さ、工法の合理性、気密性の高さなど、その長所を私に熱っぽく語ってくれました。
思い返せば、あのときに感じた住まいの心地よさや彼が語った言葉が心と体に残っていて、自分の家をつくる際にツーバイフォーを選ばせたのかもしれません。

 

要望に応えてくれた住宅メーカー

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この家を建てたのは2000年の5月のことです。勤務の関係で、東京都町田市から以前住んでいた東京・世田谷に戻ることになり、新たに家を建てることにしました。
私は仕事柄、健康保持の最重要因子が家であることを熟知しています。健康というと体や心の問題だと考えられがちですが、実は長い時間を過ごす家の影響を大きく受けているのです。
そのうえ私も家内も室内の空気質には極めて敏感で、とにかく有害な化学物質は可能なかぎり排除したいと考えました。その時点では、どのメーカーの製品でも完全にケミカルフリーの建材はありませんでしたが、こちらの要望に沿ってできるだけ注意を払い、対応してくれるところに家づくりを任せたいと思いました。
そして出合ったのがツーバイフォー住宅メーカーのT社です。この住宅メーカーは、私たちの考えに真剣に耳を傾け、要望に応えてくれました。

徹底して有害科学部室を除去

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たとえば、木材に対するシロアリ対策は、木材に塗料を塗る代わりに床下全体にカーボン(炭)を敷き詰めています。床材などの材質や塗料にも神経を遣い、壁のほとんどに吸着機能の強い建材「エコカラット」を使用しています。
また、全館空調システムの導入によって、フィルターでアレルギーの抗原となるハウスダストや有害な化学物質をある程度排除できますし、ツーバイフォーの高気密・高断熱な構造との相乗効果で室温が一定に保たれています。良い建材、良い空気、しかも住まい全体の温度差が少ない環境で暮らすと自然に心や体が安定するものですが、この家もその通り。ここにいると非常に心が落ち着きます。
健康面では、家内の持病のぜん息が軽快し、ひどく咳き込むことがなくなりました。私もあまり風邪をひかなくなりました。とにかく快適ですから、夏の暑い時期や冬の寒さが厳しい時期は、外に出かけると早くこの家に帰ってきたくなります(笑)
しかし、失敗もあったんですよ。実は、物置に使用していた部屋に入るとかなり刺激的な臭いがして、長くいると頭痛やのどの粘膜刺激症状を起こし、鼻血を出したこともありました。専門家の友人に調べてもらったら、そこに置かれていた外国製の家具から大量のホルムアルデヒドがでていることがわかったのです。早速、この家具を処分したところ症状が出なくなり、やがてホルムアルデヒドも指針値以下になりました。
家具までは、気がまわりませんでしたね。

 

音響効果の良さがわが家の自慢

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もうひとつ、私が気に入っているのは、音響効果の良さです。私はチェロ、家内がピアノを弾くので、これは何よりうれしく思っています。吹き抜けを大きくしたり、窓を3重サッシにして気密性を高めたり、床材も吟味したせいか、ピアニシモからフォルテシモまでダイナミックレンジが極めて大きいのがわが家の自慢です。家内のピアノの先生などプロの演奏家もその音響のすばらしさを絶賛してくれました。外への音の漏れも少なく、夜中に来客がホルンを吹き鳴らしたこともありましたが、外に出てみたらほとんど聞こえませんでした。ご近所に気兼ねなく演奏ができるのは、本当にうれしいですね。
気密性がよいから暖房費や冷房費を安く抑えられるのもメリットですし、地震に対する強さも、昔、住んでいた日本家屋に比べると揺れが少ないように感じます。
外観や間取りも、かつて暮らした米国の家のようで、家内ともども、建物の性能もデザインもすべて、気に入っています。
そんな思いが伝わったのでしょうか、勧めたわけではないのですが、息子も私の弟も同じ住宅メーカーのツーバイフォー住宅を建て、彼らも大いに満足している様子です。

 

家は健康第一に考えたい

これから家を建てる方には、まず第一に、健康のことを考えてほしいと思います。人間は1日に約13キロリットルの空気を吸って生活をしています。しかも人体が化学物質を取り込むのは約8割が肺からで、食物からは1割に満たないのです。家にいる時間は長いのですから、間取りやデザインを考える前に、室内の空気質や換気について、もっと真剣に考える必要があると思います。

 


石川教授のお住まいを訪ねたのは、初夏の一日。外は強い日差しにもかかわらず、お住まいの中は適度な涼しさに保たれ、清々しい空気に満ちていました。ご夫妻は、音響効果の良さも実感してほしいと、お嬢さまと3人でベートーベンの「三重協奏曲ハ長調」を演奏してくださいました。ピアノ、チェロ、ヴァイオリンによる音のハーモニー……誌上でそのすばらしさをお伝えできないのが残念でなりません。

(2006年9月1日掲載)

 

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