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ホーム住まいのコラムインタビュー>2007年3月の記事


ツーバイフォー住宅に暮らして


藤田隆史東京大学教授は、東京大学生産技術研究所の藤田研究室において、1979年より免震構造に関する研究・開発を実施、日本における免震構造技術のパイオニアとしてその啓蒙、実用化、体系化に寄与されてきた、免震技術分野の権威。これまで民間企業と共同で研究・開発された免震技術は、電子計算機室用を皮切りに、重量機器、一般ビル、公共施設などさまざまな用途・建物に導入されている。
当協会の会員会社・M社が世界で初めて商品化した免震住宅も、藤田教授との共同研究により実現したもの。その際にツーバイフォー工法の堅牢な構造を改めて実感された藤田教授は、ご自宅の新築にあたり、一も二もなくツーバイフォーを選ばれたという。


耐震性の高いツーバイフォー 免震装置なしでも安心

――瀟洒な住宅が立ち並ぶ、成熟した住宅地の中に佇む藤田様邸。イエロー系の外壁にレンガタイルをあしらって表情豊かにデザインされた建物は、実は免震住宅ではない。それはなぜ? まずはその辺りの経緯から、お話を伺った。

藤田邸・写真

当初はもちろん、免震装置の導入を考えました。ところが、そのためには建物の周りにかなりの余裕が必要です。また、装置を導入するには床下に一定の高さが必要となり、それに伴って建物の高さが上がり、北側斜線制限の影響で2階の面積が削られ、希望する間取りが実現できないことが判明したのです。現在ではかなり緩和されていますが、計画当時は住宅の免震化に対する規制が厳しく、ビル並みのものでしたから。それはともかく、家族は夫婦に子供2人、母親も同居する予定でLDKのほか4部屋が必要でしたが、3部屋しかできないという。これは、いかに専門家とはいえ受け入れがたいことで、装置の導入を断念しました。
けれども、まったく心配はしていませんでした。ツーバイフォー工法であれば、免震装置なしでも十分に強い地震に耐えられると確信していました。
なぜなら、同じ木造でも軸組工法とツーバイフォー工法とでは基本的に構造が異なり、耐震性においてはツーバイフォーが数段、優れています。両者には地震の際の揺れ方自体に違いがあり、軸組工法は柔らかい構造なので揺れを感じやすい。一方、ツーバイフォー工法は構造的に強固で変形しにくく、揺れを感じにくいのが特性です。また、免震住宅の共同研究を通じて、M社の家づくりの確かさを知っていましたから、安心して任すことができました。
困ったのは、私が家を建てるということで、誰からも当然のごとく「先生のところは免震住宅ですね」と聞かれたこと。いちいち説明するのが大変でした(笑)


地盤調査は入念に 設計はプロに任せるのが一番

――こうしてスタートを切ったツーバイフォー工法によるご自宅の新築。念には念を入れ、まずは地盤調査が行われたという。

幸い、地盤に大きな問題はなかったものの、地盤改良をして万全を期しました。ここは造成地で盛り土をしてあったので、ボーリング調査をしたら少し緩いという結果が出たので、普通なら改良の必要はない程度のものでしたが、念のためやってもらいました。
地盤の調査は重要ですね。きちんと調査して問題がなければ安心ですし、あっても適切な対応をすれば解決することですから。
設計やインテリアについては、専門外のことですし、私も家内も疎いので、ほとんどお任せしました。やはり経験を積んだプロは違いますね。必要な部屋数など基本的な条件を示しただけでしたが、よい提案をしてくれ、暮らしやすい家が実現しました。


快適な住まいをベースに 将来の暮らしに夢が広がる

――ご入居は2000年の7月。約6年半の歳月を共にされるなか、家族構成は変わってもツーバイフォー住宅ならではの快適性は少しも変わらず、ご夫妻はこれからの充実した暮らしに思いを馳せておられる。

庭・写真

最初にこの家に移り住んだとき、実感したのは断熱性・気密性の高さです。とくに冬のあたたかさは格別で、以前の家との違いに驚きました。遮音性も高く、窓を閉めていると外の音がほとんど聞こえず、静かに過ごすことができます。この快適な住み心地は、いまでもまったく変わりません。これもツーバイフォー工法の高性能な一面だと思います。
定期的にアフターサービスの人が来てくれますが、網戸の調整くらいのもので、手直しは一切せずに済んでいます。
家族構成には少し変化があり、今春、下の娘が結婚するのでその後は家内と2人暮らしになります。
家内は、以前から続けていたガーデニングに夢中。趣味が高じて、ご近所の方々を相手にハンギングバスケットの教室を始めています。
私は、免震の研究も続けていますが、国立大学の法人化に伴ってつくられた組織の仕事が主になり、それに忙殺されています。まだしばらくはこうした生活が続きますが、いずれは私も趣味の釣り三昧の暮らしをしたいですね。
娘2人が巣立って空いた部屋は、家内と私がひと部屋ずつ好きに使おうと話しています。すでに家内がひと部屋を確保。私も書斎というか、釣り道具を心おきなく広げておける部屋ができるのを楽しみにしているところです。


公共施設には免震構造を 住宅は耐震性の強化が重要

――快適な住まいをベースに、充実したシニアライフの夢を語られる藤田教授だが、免震装置への熱い想いはいまも変わらない。最後に、現在の研究や今後の展望などを語っていただいた。

写真・庭住宅用として当初私が手掛けたのは、ビル用の装置を基に積層ゴムを用いた装置で、現在、主流になっているのはボールベアリング支承とオイルダンパーを組み合わせた免震システム。これは荷重の軽い住宅には最適のシステムといえます。
いま私が手掛けているのは原子力発電所の免震構造化です。そもそも日本の免震研究は、原子力発電所への応用を視野に始められたものなのですが、耐震設計指針の規制により免震構造化が基本的には阻まれていました。指針の改正によりその規制が撤廃され、できる可能性が生まれ、中断されていた研究が再開されると予測されています。
免震化には一長一短があるので、すべての原子力発電所に採用されるとは言い難いのですが、少なくとも災害時には拠点となる公共施設は免震化が望まれます。実際に静岡県ではすでに市庁舎、公民館、消防署などに採用され、日本で新たに建てられる病院の多くが免震構造になっています。また、ツーバイフォー工法による診療所でも免震化が検討されるケースが出てきていると聞いています。地震国日本では、こうした施設の免震化はさらに加速すると思われます。
しかし、もともと住宅の免震装置は、建物の揺れを軽減することで地震時の大きな揺れから受ける恐怖心を少なくし、家具などの転倒による二次災害を防ぐことを目的にしているものです。したがって、耐震性そのものについては、むしろ建物自体の性能が大きな問題だといえます。その点、ツーバイフォー工法は生まれながらにして優れた性能を有していますし、改良によってさらに高性能になってきています。また、研究開発によってその性能をより高度なものにする可能性も秘めていますから、私は大いに期待しています。



東京大学教授。工学博士。1979年頃よりビルの免震装置・制震装置等の免震・制震技術全般の研究を開始。同分野の日本における第一人者として、民間企業と共同で数々の免震・制震装置を開発。現在は、東京大学の産学連携本部長を務める傍ら、ナショナルプロジェクトともいえる原子力発電所の免震構造化などに貢献されている。

 

(社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」のVol.166 2007年3月号からの転載記事です。

(2007年3月1日掲載)


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