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新春インタビュー 小西雅子さん

キッチンから笑顔をつくりましょう

小西雅子さん

小西 雅子(Masako KONISHI)さん

東京ガス「食」情報センター 所長。
服部栄養専門学校 非常勤講師・学術博士。
加熱調理のコツや新しい調理法、プロの料理人の技術を解析し、家庭で活用する方法を研究。

新設住宅着工が年間80万戸で推移するなかでも、右肩上がりのツーバイフォー住宅。近年とくに20・30代の若い世代の支持を集めています。
そこで、2013年の新年号特別企画として、子育て世代が家づくりをするうえで大きな関心事である食と暮らし、そして住まいのあり方について、子どもの食育活動に力を注ぐ東京ガス「食」情報センター所長の小西雅子さんにお話をうかがいました。

「食」は、家づくりにどのような影響をもたらすものなのでしょうか。

料理へのこだわりから始まる家づくりもあります

食育基本法が2005年に制定され、各方面で食育を目的とした活動が行われていますが、最近活況なのが、男性向けの料理教室です。奥様まかせでキッチンに入ったことがない、という人も、自分の手で美味しいものができる喜びを知ると、夢中になってしまうようです。
キッチンは料理を通して、家族を幸せな気分にしたり、健康を増進させる重要な空間。食に関心をもつことで、「こんなキッチンをつくりたい」と思われる方は多くいらっしゃいます。そのこだわりを、食事をするダイニング、食後にくつろぐリビング……と家全体に広げていくと、素敵な住まいができるのではないでしょうか。

食育の意義とはどのようなものなのでしょうか?

子どもの自立を育み、家庭に団らんを取り戻します

発達心理学の専門家によると、キレる、引きこもるといった児童の実態を調べると、食事環境が一因。家族で囲む食卓は、単に栄養の摂取にとどまらず、人間関係の形成という重要な役割があるのです。
さらに一歩進んで、子どもを調理に参加させることは「食の自立」という、重要な成果をもたらします。つくった料理を美味しいと感じる経験は五感を育て、生きる力へとつながるものです。
「子どもが料理をするようになって、食卓の会話が増えました」という声をよく聞きます。お子さんの調理から、話題が盛り上がるのです。いつものメニューでも「子どもがつくった」と聞けば、お父さんがたくさん食べるというデータもあります。子どもに調理をさせることは、家族の団らんにもつながるのです。

家庭で食育を実践するにはどうしたらいいですか?

気負わず、食を大切にする姿を見せることです

食育が教育の一環になっているフランスで、子どもの初めての料理として専門家が推奨するのが、パンづくり。こねる、丸める、引きちぎるといった動作が子どもの五感を大いに刺激するのです。日本の家庭料理でいえば、おにぎりやお団子も同じ効果があるでしょう。
ただ、「食育のために」と気負う必要もないのです。私の子ども時代、毎朝、母が家族のために味噌汁をつくっていた姿は、今、思えば食の魅力に気づく原点。ネギを切る音や味噌の匂い、立ち上がる湯気など、大人になっても脳裏に刻まれているんですね。つまり、食育の機会は日々の暮らしのなかにあるのです。「今日のご飯、何を手伝ってもらおうかな」から始めてみてください。自分でやったほうが早いと思っても、見守ることが大切です。
また、食育に有効な年齢があります。弊社の調査によると子どもが料理に関心をもつのは、5歳がピーク。成長すると興味をもつ対象が増えるせいか、関心が薄れてしまうようです。お子さんが食への好奇心を見せたとき、そのサインを上手に受け止めたいものです。

食育に適した調理方法はありますか?

イタリア式スピード調理とエコ・クッキングがおすすめです

冒頭に、男性向けの料理教室のことをお話ししたように、食育は子どもだけのものではありません。つくる技術・食べる楽しみを学ぶことで、QOL(Quality of Life)は大きく向上するからです。
スローフードの国、イタリアでは「ラ・クチーナ・エスプレッサ」という調理術が、共働き世帯の主婦に支持されています。10〜20分要する料理を約4品、同時進行でつくるというもの。パスタを茹でながらお肉を焼き、その隣でつけあわせとスープを、とコンロをフル稼働させるイメージです。調理時間の短縮により栄養価が損われず、また家族でゆっくり食事をする時間がとれるのが利点です。
エネルギーや食材を大切にする「エコ・クッキング」も、ぜひご家族で取り組んでいただきたい調理方法です。火加減を調整するなど調理時の工夫はもちろん、買い物から後片付けまでつねに環境への影響を意識することで、節水、ゴミの減量、エネルギーロス・CO2排出量の削減などに大きく貢献できます。講習を行うと、皆さんその効果に驚かれます。

「食育に効果的なキッチン」をつくるにはどうしたらよいでしょうか。

調理の楽しさを、家族と共有できる仕掛けが有効です

調理をする人を、ダイニングから見えるようにするのがポイントだと思います。ジューッという音とともに中華鍋をダイナミックに振るご主人を、家族がダイニングから応援する――そんな状況なら食育に理想的です。それに、ご主人も喜んで毎週腕をふるってくれるのではないでしょうか(笑)。
欧米の住宅ではキッチン内にもテーブルを置いて軽食をとれるようにしています。日本の住宅事情なら、キッチンカウンターにハイチェアを合わせてもいいですよね。朝食やお弁当の準備に忙しい朝も食育タイムになります。
1日3度、いただく食事。何を食べるかだけではなく、「どうつくるか」にこだわったキッチンは、笑顔が絶えない、家族にかけがえのない場となるはずです。

KITCHEN World Heritage

今、日本人の伝統的な食文化を世界遺産化するという、国をあげたプロジェクトが進んでいますが、そのメニューはどんなものか、ご存じですか?
実は、白いご飯を中心にした、ごく普通の和食なんです。数ある日本食のなかでも無形の文化財として次世代に継承させたいのが、特別な料理ではなく、家庭のキッチンで生み出されるものというのが、食のスペシャリストたちの一致した思いなのです。

(社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」のVol.196 2013年新年号からの転載記事です。

(2013年1月1日掲載)


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