一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会

増築・減築のポイント 三井のリフォーム 住生活研究所

増築のポイント

増築のメリットは、何と言ってもスペースアップが図れることにあります。

敷地に余裕がない中で広いスペースを確保するには、「お神楽(おかぐら)」と言って平屋の上に2階を乗せるリフォームもあり、基本的にツーバイフォー工法でも大規模なリフォームも可能です。しかし、リフォームの場合、要望の多くは、部屋の用途の変更に伴い「もう少し、広がりがほしい」というような小規模な工事です。そこで今回は、そうした要望に応えた事例をもとに解説したいと思います。


ケース1は、奥行き455mmの出床を増築しただけで空間にゆとりが生まれた例です。工事は難しいものではありませんが、こうした単純なリフォームの際でも、手順を踏んで法的な規制をチェックするとともに、壁をいじることになるので以前の構造強度を保つことができるか否か、といったこともきちんと確認したうえで進めることが大切です。


Case Study 1〈増築例〉

出床を設けて広がりをプラス

ご主人のリタイア後のことを考えて、多くの時間を過ごすことになるダイニングとキッチンを日当たりも眺めもよい2階に移した例です。
普段のくつろぎの場としてファミリールームをキッチンと一体に計画。壁の一部を出床に変更し、その形に合わせてベンチを造り付け、コンパクトながらゆとりの感じられる空間が実現しました。

2階増築部分
▲出床(右)の増築でゆとりが生まれ、楽しい語らいのコーナーが誕生
2階間取り:リフォーム前後
 

ケース2は、1階のコーナー部分を2方向に増築した例です。このケースでは、広さを確保するという意図に反して、増築したウェルカムサロンに既存の耐力壁の一部を残しています。角に位置する部屋の構造体は、コーナー部分で屋根と2階床の荷重を受け、基礎に伝えて地面に流しているので、その部分の壁をすべて撤去するわけにはいかなかったのです。これは、「リフォーム時においては、基本的に建物の隅角部(出隅、入隅)には90cm以上の壁をつくる」というツーバイフォー工法の基本ルールによるものです。

そこで私は、その壁に優雅なデザインの飾り棚を設け、部屋のシンボルとしました。マイナス要因と思われる部分を隠す代わりに、積極的に利用することでプラス要因にしたわけです。リフォームを提案する際はぜひ、こうした工夫も加えてみてください。お施主様にも評価され、信頼度を高める一助にもなるはずです。


Case Study 2〈増築例〉

1階のコーナー部をニ方向へ拡大

納戸を2方向へ増築し、ウェルカムサロンをつくると同時に和室に広縁を増築した例です。
玄関での立ち話は落ち着かないし、靴を脱いであがってもらうほどではない…ご近所の方々と気軽に交流する場として、そんなちょっとしたお客様をもてなすコーナーを望んでいらしたご夫妻。外から直接入れるウェルカムサロンは、靴のまま出入りできる気軽さと、おもてなし感のあるインテリアがうまくマッチして、楽しい交流の場に。和室は、広縁ができて一層広々とした空間になっています。


1階増築部分
▲巧みな演出で、残した耐力壁(中央)やまぐさも空間のポイントに
1階間取り:リフォーム前後
 

減築のポイント

少子高齢化社会に入り、1世帯当たりの家族数が減少するなかで、近年は建物の建築面積や床面積を減らして住環境の改善を図る「減築」への関心が高まってきています。

減築をすると家が狭くなり、暮らしにくくなると思いがちですが、使わなくなった部屋をそのままにしておくより、不要な部屋は取り払い、同時に間取りや生活動線の整理などを行えば、かえって暮らしやすい家にすることができます。建物の面積や部屋数が減れば、掃除にかける時間や手間が軽減され、冷暖房費の削減にもなるなど、さまざまなメリットが考えられます。


ケース3は、比較的小規模な減築の事例です。

施主は、子供が独立して夫婦2人になったのを機に車を大型のものに換えたいと希望されていました。しかし、敷地面積に限りがあったため、1・2階の一部を撤去して駐車スペースを拡大しました。

減築により外壁面の壁線区画が変更になるため、1・2階に新たな耐力壁を設け、その直下に新たな基礎も設置しています。これは、「耐力壁線の直下には基礎があること」というツーバイフォー工法の基本ルールによるものです。


Case Study 3〈減築例〉

1・2階の一部を撤去して、駐車スペースを拡大

大型車の購入が長年の夢だったご主人。既存の駐車スペースには収まらないため、1階の和室の一部を撤去することになりました。それに伴って2階洋室の一部も減築し、建物の形状変更により屋根を架け替えています。
また、和室自体の広さは変えないように、和室とリビングの間にあった壁を移動。開口を設けて狭くなったリビングに視覚的な広がりが生まれるように工夫しています。

T様邸 パースリフォーム前後
T様邸間取り

ケース1~3 設計・施工:三井のリフォーム(三井ホームリモデリング(株))
 


終わりに

早いもので、この連載も今回が最後となりました。

最終回にあたり、改めて申し上げたいのは「ツーバイフォー工法はリフォームしやすい工法である」ということです。構造上のルールを守ってプランニングをしていけば、ツーバイフォー工法の特性である耐震性の高さなどを損なわずに、お客様のさまざまな要望に的確に応えることができます。

第一回にご紹介した7つの基本ルールを再度、確認してみてください。そして、工事の規模の大小に関わらず、それが法的な規制をクリアしているか、また、構造強度を損なわないものであるかをチェックすることも忘れずに。

歳月とともに変化していく家族の暮らしを「家」に合わせるのではなく、その時々の「暮らし」に合わせて住みやすい家にするのがリフォームです。会員会社の方々による適切なリフォームによって、ツーバイフォー住宅がより永く受け継がれていくことを願っています。




写真:三井のリフォーム 住生活研究所 所長 西田恭子氏

西田 恭子(にしだ きょうこ)氏

三井のリフォーム 住生活研究所 所長。
住宅のリフォームを始めて25年。その経験を生かし、リフォームによる「暮らしの創造」に貢献するため、住生活研究所所長に就任。新聞・雑誌・書籍の執筆、各種セミナーでの講演等でも活躍。約200名の女性建築士集団であるデザインスタッフ会会長も務める。
一級建築士。(社)日本建築家協会正会員。日本女子大学・文化学園大学講師。
著書
『リフォームで永く住み継ぐツーバイフォー』(ニューハウス出版)『中古マンション購入×リフォーム』(アーク出版)『リフォームでつくる幸せ家族』(主婦と生活社)など多数。

 

(一社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」転載記事