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旧古田土雅堂邸(こだと がどう)

内田 青蔵(神奈川大学教授)

旧古田土雅堂邸は、茂木町が2001年3月に発行した『旧古田土雅堂邸について−大正末期に米国から輸入した組立住宅−』によれば、日本画家で1906(明治39)年に渡米し、活躍の場であったニューヨークから子供の教育のために帰国した古田土 雅堂(1880-1954)が、帰国の際に日本での住まいと考えてアメリカのシアーズ・ローバック社から購入し、輸入したアメリカ製のメール・オーダー・ハウスの遺構である。竣工時期は、古田土の帰国と同じ年である1924(大正13)年12月、建設地は栃木県宇都宮市下戸祭で、現在は古田土の故郷である栃木県 茂木町の「道の駅もてぎ」河川公園内に茂木町指定文化財として移築・復原されている。

この古田土が住宅を購入したシアーズ・ローバック社は、アメリカを代表する通信販売システムを採用した会社で、1886年シアーズ社として創設され、1893年シアーズ・ローバック社と改称し、1895年には500ページを超えるカタログをもとに衣服や家具など多種多様な品物を扱っていた。そして、1908年からは住宅カタログを用意し、メール・オーダー・ハウスと称して住宅の通信販売も行っていたのである。ちなみに、この旧古田土邸は、その平面形式と外観はシアーズ・ローバック社が1923年に発行した住宅カタログ『HONOR BILT MODERN HOMES』に収録されている「THE HATHAWAY‐SIX ROOMS BATH AND PORCH」と一致することから、シアーズ・ローバック社のメール・オーダー・ハウスであることは間違いない。

さて、このシアーズ・ローバック社のメール・オーダー・ハウスは、その構造がツーバイフォー工法と総称される枠組み壁工法を採用していたことが知られており、現地調査では復原された壁の構法や小屋の詳細を確認することは出来なかったものの地下室に露出している1階床部分の造りは、床板を支える根太が板材による板根太(joist)で、その間には振れ止め材が見られるなどまさしくよく知られるツーバイフォー工法といえるものであった。また、構法に関しては文献史料でも確認できた。すなわち、古田土は、購入して日本に送る住宅資材についてイラストを添えて詳細に関係者に伝えていた。その記録によれば、「組立家屋二階立 一軒□」で「木材、角形 厚サ二寸幅二寸ヨリ八寸位迄、長サ 一尺ヨリ十七尺迄」とあり、主要建築材料の木材が厚さ2寸で、幅が2寸から8寸までの板材であることが記されているのである。また、この創建当時の施工図面が残されており、その図面から明らかに枠組み壁構法であり、かつ、2階床の接合部を示す断面図から構法的には枠組み壁構法の原型として知られる1・2階を長尺の枠材(stud)を用いて一体的に造り上げるバルン―ンフレーム構法であることが分かる。

このことから、旧古田土邸はわが国の住宅近代化の過程を知る上でも貴重な遺構といえる。

 

旧古田土邸正面エントランス 旧古田土邸勝手口のある側面
▲旧古田土邸正面エントランス ▲旧古田土邸勝手口のある側面
大正13年建設当時の上棟写真 二階の階段手すり
▲大正13年建設当時の上棟写真 ▲二階の階段手すり
一階床組(転び止め 交差ブリッジ) ダシアーズ・ローバック社の「THE HATHAWAY‐SIX ROOMS BATH AND PORCH」の建築図面
▲一階床組(転び止め 交差ブリッジ) ▲シアーズ・ローバック社の「THE HATHAWAY‐SIX ROOMS BATH AND PORCH」の建築図面

 

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