一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会

ツーバイフォーとは

親世帯・子世帯の住まいが庭を介して心地よい距離感でつながる

▲2棟の外観デザインが調和するように屋根形状や配色が考えられた。

▲子世帯のアプローチが親世帯のテラス越しに見える。

▲親世帯の和室。設計者からの提案で天井が木製ルーバーに。

◀︎子世帯のキッチンはアイランド型のため、調理しながらテーブルや南庭の様子がわかる。

庭を中心に親世帯・子世帯のツーバイフォー住宅を配置

向かい合う2つの住宅は、左側がNさん夫妻の住まい、右側がその娘夫婦であるTさん夫妻の住まいです。70代に入り、水まわりが2階にある自宅に住みにくさを感じていたNさん夫妻は建て替えを決めた際に、別に居を構えていたTさん夫妻に相談。2世帯で一緒に暮らす安心感や楽しさをかなえながら、お互いの生活リズムを尊重できるようにと、隣り合う敷地に親世帯・子世帯の住まいをそれぞれ別棟で建てる計画となりました。
両夫妻ともツーバイフォー工法の耐震性や気密・断熱性についてご存じだったため、ツーバイフォーの注文住宅ブランドを展開する地元の住宅会社にそれぞれの新居の設計を依頼。敷地の広さを活かしてどちらも平屋とし、親世帯のNさん夫妻と子世帯のTさん家族が共用で使える庭を中心に設けて、心地よい距離感を確保。T邸の玄関へのアプローチがN邸から植栽越しに見えるゾーニングにしました。庭には家庭菜園やテーブル・ベンチが設けられ、3世代が自然に集い、ふれあうスペースとなっています。
「玄関へと続く道におじいちゃん、おばあちゃんが歩いてくると、窓越しに気配を感じた子どもが窓に走り寄って話しかけたり、手を振ったりするんですよ」と子世帯のTさん。親世帯のNさんも「共用庭の家庭菜園で一緒に野菜を育てるのが楽しくて」と顔をほころばせます。

個性の異なる平屋2棟が一体に見えるように外観をデザイン

親世帯・子世帯のどちらも、年月を重ねても飽きのこないシンプルモダンなデザインがお好みでした。なかでもNさん夫妻が求めたのは、異なる素材同士が調和し、静かな空気をまとうような佇まい。外観は大屋根風のシルエットが採用され、壁はグレーを基調とし、妻面の木格子や軒天の板張りなど木がアクセントとして使われています。アプローチには硬質感のある淡いグレーのタイルがコーディネートされました。
Tさん夫妻は天井の高い内部空間を希望しながら、同時に親世帯側から見える外観に圧迫感がないことを希望しました。そこで、建物の東西で片流れ屋根の向きを変え、高さをとるLDK側は南庭サイドに勾配を落として圧迫感を回避し、リビングの天井高さを確保。外壁の基調色は親世帯と同じグレーを採用し、軒天や玄関ドア、アプローチに木質系の素材を使用したことにより、2棟に一体感が生まれ、さらに見る角度によって異なる印象も生まれました。

N邸(親世帯)

▲和室、LDKがひとつながりにレイアウトされている。壁仕上げに漆喰を使用し、手仕事による温もりある風合いを出すとともに、空気環境を調整。和室の天井仕上げの木製ルーバーの下端とリビングの天井レベルが揃うことで視線が延びる効果が生まれている。

▲玄関ホールの正面壁には調湿機能のあるタイルを全面に張っている。

▲子世帯側から庭越しに見た外観。のびやかな屋根のラインを庭へ落とすことで、庭の開放感と落ち着いた佇まいを両立させた。

▲リビングの壁は、和室と同じシックな黒を配し、日本の伝統色「勝色」のステンレスバーが組み合わせられている。

◀︎奥の洗面室・WICへアクセスしやすい寝室。木の格子で仕切り、畳ベッドが設置されている。

▲丸みをつけた壁のラインや軒裏の木がやわらかい印象を与える。

▲キッチン背面はグレイッシュなタイルを配置した。カウンター天板などキッチンのパーツは黒をラインとして強調。

天井・床のレベルや仕上げを切り替えて表情豊かな内部空間を創出

本計画ではツーバイフォー工法の特性が生かされ、天井や床のレベルに変化をつけ、仕上げを切り替えるなどの工夫により、大きな空間でも単調に見えず、変化に富んだ表情豊かな住空間が実現しました。
親世帯のN邸は、玄関を入ってホールを進んだ右手側にLDKと和室がオープンに配置された縦に長い空間が広がります。一体的でありながら、奥の和室は床を上げて天井高を抑えた落ち着いた佇まいです。和室は木製ルーバー、リビングルームは白クロス、キッチンの天井は板張りを組み合わせ、和室正面の壁、リビングルームのテレビ背面の壁は黒系の珪藻土で空間を引き締めています。
子世帯のT邸は、テラスのある南庭へ視線が向くようにホールやキッチン、ダイニングが配置されました。LDK全体は天井の高いオープン空間で、南面のハイサイドライトによるたっぷりの光が全体を明るく包み込んでいます。自然素材のナチュラルな風合いを好むTさん夫妻の希望で、インテリアは白を基調に節入りのフローリングや木の化粧梁を配置するなど、温かみのある空間に仕上げました。
また、LDKのうち、リビングのみ床高を二段下げて、腰をかけてくつろぐ空間とし、幼いお子さんが安全に遊べる場所を確保しました。リビングは二面採光となっていますが、落ち着く空間とするために家族の目線と外部からの視線をずらし、北・南面ともに腰高窓が採用されています。

T邸(子世帯)

▲LDKはダイニングルームとリビングルームで天井仕上げや床高に変化をつけて空間の性格を分けている。窓面積を少し抑えたリビングルームはくつろぎ感のある空間に。

▲玄関への長いアプローチは軒の出と併せ、共用庭の開放感を取り込みつつ、奥行きを演出。

▲親世帯側から庭越しに見た外観。屋根の向きと配色を切り替えて圧迫感をやわらげている。

▲LDK内の中央にアイランドキッチンを配置し、ダイニングテーブルをつなげて設置。キッチン脇の作業スペースも使い勝手よくデザインした。

▲ハイサイドライトで採光し、外を気にせずくつろげるように床高を下げたリビングルーム。

▲絵が描かれた壁が過ごす時間を楽しくさせる洋室。

▲正面の大きな窓を通して南庭へと視線が抜ける玄関ホール。

▲シューズクロークは2方向からから利用できるようにして、収納力と使い勝手を高めた。

構造計算ソフトでシミュレーションし高耐震性を確保

N邸・T邸ではオリジナル構造計算ソフトにより熊本地震の地震波を使って住宅を揺らして十分な強度があるかをシミュレーションして、高耐震性を実現しました。さらに、最大で仕様規定の耐力壁の約3.6倍以上の強度をもつオリジナル耐力壁などの採用により、本来は壁が2枚以上必要な大空間も耐力壁1枚で済み、間取りの自由度を高めました。この住宅会社では、ZEH基準をはるかに超える平均UA値0.46以下が実績の平均値となっており、樹脂サッシも採用して断熱性能を高めました。「冬でも薄着で過ごせます」(Nさん)、「家のどこにいても快適です」(Tさん)と、両世帯とも断熱性の高さを実感しています。

依頼主が大工を指名し話し合いながら施工

同社では、品質や納期などに関する厳しい認定評価制度のもと、基準をクリアした職人を「スマート・カーペントリー」として認定し、依頼主が大工を指名できる制度を取り入れています。依頼主が大工の個性を知ることができ、さらに施工段階でお互いに話し合いながら微調整やチェックができることが特徴で、今回も効果的に活用されました。「設計の方から提案してもらった和室の木製ルーバーの天井は、大工さんが納まりを細かく検討してくれ、満足いく仕上がりとなりました」とNさんは微笑みます。

スタッフからのメッセージ

健康に配慮した性能と機能を備えたサステナブルな住宅づくりを目指す


グローバルホーム(株)
HaScasa 一級建築士
小杉 正信さん

当社のブランドネームである「HaScasa(ハスカーサ)」はHealth&Sustainabilityをコンセプトとしています。いつまでも飽きのこないデザインを追求するとともに、お客様の健康に配慮した性能と機能をブラッシュアップし続けることで、サステナブルな家づくりを目指しています。
健康的な住環境を長期間維持するために欠かせない断熱性能は、UA値で実邸平均0.46とHEAT20のG2クラスをベースにしています。1棟ごとに断熱性能通知書を発行し、お客様へ断熱性能を明示することを標準としています。
生活のしやすさ=動線の提案だけでなく、場や窓による景色の広がり、光による時間の感じ方、家具等の配置によるコミュニケーションの量を意識し、何十年先でも新しい発見のある住まいづくりに努めています。

DATA
延床面積 123.27m2・99.11m2
設計・施工/グローバルホーム(株)
Vol.242 2024年夏号

(一社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」転載記事